「思ったよりも大分早く帰って来たんですね。」
「思わぬ邪魔が入ったからな。」
オフィスで珍しく銃の手入れをしながら、リーブの質問にヴィンセントが答えた。
「セフィロスに無理矢理連れてこられたんでしょう。」
聞いてますよ、と訳知り顔にリーブが言う。
「知ってるんだったら、特に聞くこともないだろう。」
きれいにオイルが塗られた黒光りのする銃を満足そうに眺めて、デスクに置く。
「二人で帰ってきたんだから、なんかあったんじゃないかと思っているんです。」
相変わらず、鼻のきくリーブがにっこり笑いながら楽し気に問いつめて来た。
「そんな余計なことに頭を働かせるぐらいだったら、別の仕事をしたらどうだ。」
鼻先にさっき手入れをした銃をすっと突き付けられて、リーブは手を上げた。
「でも・・・、ウータイには戻ってくれるんですよね。」
好奇心に負けそうになりながら、当たり障りのない言葉を何とか選ぶ。
「当たり前だ。まだ半分も仕事が終わってないからな。」
これ以上いるとリーブの質問の餌食になると思ったのか、ヴィンセントが席を立った。
「私はここから見ていることしかできませんけど、何かあったら必ず知らせて下さいよ。」
わかった、と頷いてオフィスを出ようとしたらいきなり扉が開いた。
「セフィ!?」
びっくりして立ち止まるヴィンセントと、セフィロスを凝視するリーブ。
「明後日出陣で、明日は準備で忙しいから来た。」
リーブの視線に気にもせず、ヴィンセントの頭を抱き寄せて待ち兼ねたように唇を重ねた。
ーあーもう、ドアも開いてますよ・・・もうオフィシャルなんでしょうかねぇ・・・
あまりに堂々と目の前で繰り広げられている光景に、突っ込む気力も失せるリ−ブさん。(笑)
「お前もうウータイに来るなよ。」
唇を離して言う。
「わ・・・・・・、分かった。」
ヴィンセントの瞳は赤くセフィロスを写していて、何の感情も読み取れない。
「もしきたって、邪魔するからな。」
ヴィンセントがピクッとして、瞳が揺れた。
「お前に何かあったら、その原因になったやつを絶対に許さないから。」
彼の髪に手を差し込んで、こめかみから下の方にキスを落としていったが、リーブが見てるから・・・とヴィンセントが顔を優しく離す。
ためらうセフィロスの耳もとにそっと囁くと、彼は大人しくオフィスを出て行った。
「あのセフィロスを大人しくさせる言葉はなんですか?」
彼を追って出て行こうとするヴィンセントに、話しかける。
「前にリーブに習った言葉だと思うけど。」
にっこり笑って、お休み、と帰るヴィンセントだった。
突然一人きりになって、いきなり静かになるオフィス。
静寂の中、ヴィンセントの作戦概要を再度見直すリーブだった。
書類には、現在戦闘をしかけようとをしようとしているウータイの指揮官の人物像詳細が、事細かに書かれている。
極端なモンゴロイド優位主義者、実力主義で役に立つ人物はすぐに登用するが、役に立たなくなるとあっという間に左遷される、男尊女卑の傾向が強く男色家の傾向もあり・・・
ー絶対ヴィンセントに、この指揮官攻略は適役の任務だと思ったのですが・・・
あらゆる手段がダメだった時は、色気で迫るのもありかと頭の隅で少し思いつつ・・・、
ーでも、ヴィンセントにそんなことを勧めたとセフィロスが知ったら、私はきっと殺されます!
たとえヴィンセント自身が無事でも!と、かなり不安と動揺に包まれたリーブさんでした。
(もちろん無事に帰ってくることは当然願ってますよ!!)
【7.16.2007】
026. 花盗人