ー今日も平和で、暇ですねぇ・・・
組織のドル箱、調査部を引っ張るリーブさんは次々とあがってくる100点満点の報告書に承認印を押しながら、またしても時間を持て余していた。
ーまたセフィロスがあばれて、私にもやる事が回ってこないですかねぇ・・・
そんな事を思っていても、常識的な管理職のリーブさんはさすがに自分で引っ掻き回すような事は露ほども起こさないのであります。
まあ、部下の仕事が優秀でやる事がないっていうのは、世の管理職の方々から見たら夢のような話かもしれませんが・・・。(←ある意味クビ一歩手前ともいうぞbyセフィ)
そんないつもののどかな昼下がり、もう一人の問題のおやじ、シドがリーブを訪ねて来た。
「リーブ、お前暇だろ。」
ぶしつけに入って来て話し掛ける様子に、思わずむっとするリ−ブさん。
「みての通り、書類に埋もれております。大変です。」
彼の不満げな様子を無視して、シドが妙な小型の機械を取り出した。
「あんまり暇だから、うちの整備課にある部品をちょいちょいっと拝借してたら、面白いもんができちまってよ。」
なんですか〜それは、と先ほどの不機嫌は吹っ飛んで興味津々にシドの手の中の機械を眺めた。
「少しの間電気を遮断出来る装置なんだよ。」
楽しそうにシドが言う割には、これといって用途が思いつかなくて黙っているリーブ。
「例えばな、」
シドの話を要約すると、この装置を電気を遮断したい回線につけ起動すると単純に電気がその回路を通らなくなる。
「それだけだと、ものによっては警報装置とか鳴って大変な事になるんじゃないですか?」
リーブが返すと、
「そのために電気管理のシステムに侵入して、対象機器にだけこのダミープログラムを走らせるわけよ。」
最近のビルってみんなソフトウェアで管理されてたりするだろ?、とソフトが入ったメディアをひらひらさせながら得意そうにいうシド。
「さて、早速テストをしにいくぞ!」
お前もついて来い、というシドに私は仕事があるんですけどね〜、と言いつつも楽しそうに席を立つリーブさんでした。
「ヴィンこの後なんか仕事あるのか?」
エレベーターで偶然でくわして、セフィロスが話しかけた。
「特にない。もう家に帰って寝るだけだ。」
ヴィンセントが答えた瞬間、がたん、と振動がしてエレベーターが止まった。
「?・・・故障かな?」
2〜3分たっても動かないので、エレベーター内の非常電話をかけてみたがつながっている気配がなかった。
「そのうち動くんじゃないか?」
ちょっと落ち着かなさげに言うセフィロス。
「そうかな・・・」
携帯持ってるか?とヴィンセントが聞いてきたが、運の悪い事に二人とも持っていなかった。
「待つしかないか・・・」
取りあえず満員のエレベーターでなくて良かったな、と話しかけるヴィンセントに軽く頷くセフィロスだった。
1時間後・・・
立ってるのも疲れたので床に座り込んでいる二人。
そしてぴくりとも動かないエレベーター。
「何か、絶対変だよ。」
ヴィンセントが呟いた。
時計を見ると22時をもう回っている。
「セフィ、大人しいな。」
セフィロスを見ると、どこか緊張した面持ちで床にあぐらをかいていた。
「もしかして、エレベーターが苦手とか。」
くすりと笑って、立てた膝に腕と頭を載せてセフィロスを覗き込むように見る。
「エレベーターにはちょっと嫌な思い出があるんだよ。」
ヴィンセントの視線を受けて、セフィロスがやっと口を開いた。
「特に壊れてるやつにはな。」
へえ、どんな?と聞くヴィンセントの問いにセフィロスは答えなかった。
「トイレ行きたくなったらどうしよう。」
「別にここでしてもいいぞ。」
やだよ、とヴィンセントが言う。
「じゃあ、そこの扉をこじ開けてするか?」
セフィロスの言葉にヴィンセントがあっ、と声をあげた。
「無理矢理開けたら、フロアがあるかも。」
思わず二人とも立ち上がって、扉の隙間に手をかけ、力一杯引っぱり始めた。
少し隙間があく。
「何か分かるか?」
とセフィロス。
「真っ暗なだけだ。」
「フロアじゃなくて、あがってる途中かもしれないしな。」
それはちょっと怖いな、とヴィンセントが言って扉から手を離す。
「正宗があれば天井こじ開けて出るんだけどなぁ・・・」
残念ながらオフィスではよっぽどのことがない限り、二人とも丸腰だ。
時計を確認すると、23時近くになっていた。
「あきらめて寝るか。」
ヴィンセントが床に寝転がる。
何も言わずにセフィロスはさっきのあぐら体勢に戻った。
おやすみ、とヴィンセントが言ってしばらくすると安らかな寝息が聞こえてくる。
ー・・・こんな絶好のシチュでヴィンを襲えない俺って・・・
試しにちょっと動こうとしたが、エレベーターがぐらっと揺れた気がしてビクッとなるセフィロス様でした。
次の日、午前8時からの会議にセフィロスはかなり疲れた顔をして出席していた。
「何かお疲れのようですね。」
昨日もしかしてヴィンセントといいことがあったのでは・・・とほくそ笑みつつ話しかけるリーブ。
「昨日、乗ってたエレベーターが何故か止まってさぁ。」
しかもやっと出られたのは朝の6時だったのに、エレベーターの整備員も誰も来なかった、と不満げにセフィロスが言った。
「一人だったんですか?」
「いや、っていうかヴィンに弱点を知られた。」
その表情はかなりの不機嫌ぶりだ。
ー壊れたエレベーターの中だったらいつでも付き合ってやるって、何なんだよ!
「あいつ以外といじわるだからな・・・、絶対このネタ使われる。」
ちょっとため息をつきつつ、会議の資料をめくるセフィロス。
ー・・・それはお気の毒様でした。
心の中で微妙にあやまるリーブだったが、きっとこのいたずらの首謀者がセフィロスにばれたら・・・半殺しではすまないかも。(笑)
【3.24.2007】
003. いじわる