「何か最近お疲れのようですね。」
ちょっとため息をついて、席を立って帰ろうとするヴィンセントにリーブが声をかけた。
「新しい仕事が増えたからな。」
ちらりとリーブを非難がましく見る。
「彼のせいじゃないでしょう?」
そんな手のかからない人ですよ、とリーブが答える。
「っていうか、わざとらしく手をかけさせるんだ。あいつは。」
おやおや大分好かれているようですねぇ・・・と思って、にこにこしてしまうリーブ。
「なににやにやしてるんだ。」
「いや〜。私の人選が適格だったのが確認できて、かなり嬉しいんです。」
こいつ・・・と思わず背後に回って銃を突き付けたくなったが、
「お前だって、きっと同じ状況になったら相当疲れると思うぞ。」
と、ヴァレンタインさんは最近あったことを話してくれたのでした。
Case1
1週間前ぐらい、15時頃。
明日から警備に入るXXX国外務大臣の身辺警備の最終確認をしていると・・・
「ちょっと相談したいことがあるんだ・・・。」
電話がなって、かなり元気の無い様子でセフィロスが会いたいと言って来た。
何かあったら困るので、取りあえず書類を置いてセフィロスのオフィスに向かう。
部屋に入ると、セフィロスが嬉しそうな顔でデスクの秘書席にヴィンセントを座らせて、「ちょっと秘書が出かけてしまって、代わりを少しの間やってくれないか。」
と頼んで来た。
しょうがないので、暫く口述筆記やスケジュールの打ち合わせに付き合う。
16時近くになっても、秘書が帰ってこない・・・と思ったら、セフィロスが近付いて来た。
「秘書はいつ帰ってくるんだ?」
耳たぶにキスしようとしたセフィロスを避けて、不愛想に聞く。
「さあ・・・俺がいいって言うまで、帰ってこないんじゃないか?」
抱き寄せようとした彼に手近にあった書類の束を叩き付けた。
「私は明日のXXX国の外務大臣警備の確認で忙しいんだ!」
瞬間、返す言葉の無かったセフィロスを置いて、さっさと部屋を出た。
「・・・大分暴力的ですね・・・。」
「誰がだ?」
「もちろんあなたですよ。」
「あいつ相手だと、容赦もしていられないんだ。」
楽しそうにちょっと考え込むリ−ブさん。
ヴィンセントは深くため息をついて、昨日あった話を続けて話し始めた。
Case2
昨日、13時頃。
ここのところ毎日あったセフィロスの妨害が、最近なくてスッキリと仕事をしていたヴィンセント。
と、珍しく彼のオフィスにセフィロスがやって来た。
「何の用だ?」
いきなり表情が不愛想になる。
「ここ一週間くらい、ヴィンセントが機嫌が悪かった理由を考えてみたんだが。」
セフィロス的には、ちょっと目に入っただけでも声をかけていたつもりだったのだが、ヴィンセントがマル無視(若しくは目に入っていない(笑))だったため、今までの自分の行動を反省したらしい。(と、ヴィンセントは一瞬思った。)
「お前、生理だろう。」
「は?」
眉間に深くしわが寄る。
「一週間ぐらい情緒が不安定になる理由なんて、そんなぐらいしか・・・」
女顔だし、と付け加えて滔々としゃべるセフィロス。
ー私は男だぞ・・・
取りあえず席を立って、目の前に座っているセフィロスの襟首を掴んだ。
「!?」
何も言わせずに、扉の方に引っぱって行く。
「男が生理になるか・・・。原因はお前だ。」
力一杯扉の外に押し出して、素早く鍵をかけた。
「・・・ははは・・・」
「面白いか?」
思わず笑うリーブにヴィンセントが鋭く釘をさす。
「いや・・・・まるでトムとジェリーです。」
すごい親密な・・・と呟いた後に、ヴィンセントが困ったように言葉を続けた。
「いっくら邪険にしても寄ってくるから、どうしようかと思っているんだ。」
深〜くため息をつくヴィンセントにリーブがアドバイスした。
「いっその事、愛してるって言っちゃったらどうですか?」
ヴィンセントが目を上げる。
「愛してるから、言うこと聞いてくれって。」
なる程・・・と帰り支度を始めたリーブの話を聞こうと、一緒にオフィスを出たヴァレンタインさんでした。
「セフィ、愛してる。」
昨日リーブにもらったアドバイスを早速試してみるヴィンセント。
「俺もだよ。」
思わず甘い言葉を聞いて、抱き寄せようとして避けられた。
今度はなんなんだ?、と思ってヴィンセントを見る。
「好きで好きでしょうがなくて、近くいられると落ち着かないから、1ヶ月ぐらい側に寄らないでくれないかな。」
場所はトイレの入り口。
セフィロスの肩を押して自分から引き離して、さっさとトイレに入るヴィンセントだった。
ちょっとあっけに取られて佇むセフィロスの所に、リーブがやって来た。
「おや、ぼーっとしてどうしたんですか?」
トイレに入る前に、声をかける。
「ヴィンに、愛してるから寄らないでくれって言われた。」
ー半分使い方間違ってますね。
苦笑いしながら、リーブがセフィロスに言った。
「で、どうするんですか?」
「俺が言うこときくと思うか?」
あいつ、反応が面白いからかまっちゃうんだよなぁ・・・と言いながらトイレの前を立ち去るセフィロス。
ー逆効果だったかもしれません・・・
でも、私にとっては楽しいですし、仲がいいっていいですねぇ・・・と思いながら用を足すリ−ブさんでした。
【7.15.2007】
023. 最後の言い訳