むかしむかし、ある国にルクレツィアと言う名前の王妃がおりました。
王は長い間不在でしたが、大変賢い王妃のおかげで国は豊かに繁栄しておりました。
王妃には一人姫がいて、その美しさから「暮れ方に浮かぶ三日月のシェルク姫」と呼ばれておりました。
姫は王妃と彼女達の警護を任されているヴィンセント、という騎士に見守られてすくすくと育っていきました。
そんな王女も見目麗しい年頃となり、縁談が王妃の元に次々と舞い込み始めました。
「こんなにいっぱいあると、選ぶのも大変ね。ヴィンセント。」
王妃は騎士に話しかけました。
「王女様の噂が遠くまで広まっているのでしょう。喜ばしいことです。」
ヴィンセントが答えると、まあ、選ぶ母集団が多いに越したことはないわね、と計量的な分析に基づいて、ルクレツィア王妃は一つ一つお見合い写真を検分していきました。
「やだ、ミッドガル公国の王子まで送ってきてるわ。」
大国ミッドガルは彼女の領地からは遠い国でしたが、大きな勢力範囲と豊富な人材を擁する強国で味方に付けておくのも悪くない国でした。
「よろしければ今月末にでも訪問したい、ですって。さすが大国。いかなる分野にも積極的ね。」
ルクレツィアがヴィンセントに渡した写真には、銀髪の見るも美麗な青年が写っていました。
「こんな美しい青年に、婚約候補なんて星の数程ありそうですが。」
ヴィンセントがルクレツィアに写真を返します。
「そうよね。でも、もう来て下さいって返事をしてしまったのよ。」
「シェルク様に何も言わずにですか?それはあまりにも・・・・。」
ヴィンセントの言葉に、ものは試しと思ってね、とルクレツィア王妃は答えました。
大国の王子が何を考えているかは分かりませんが、万が一の時は二人を自分が守らねば、と気が引き締まる騎士でした。
ミッドガル公国の王子がやってきたのは、それから直ぐでした。
「訪問ありがとうございます。」
こじんまりとした王宮の門で大国の王子を三日月のシェルク姫自ら出迎えるのに、ヴィンセントも付き添います。
「きれいな国だな。それに劣らず王女も臣民も。」
セフィロスはちらりと姫を見た後、ヴィンセントに視線を移して微笑みました。
彼はいつもの挨拶のようなものだと思って、丁重にセフィロスの視線と笑みを受け取りました。
「まあ、面白みは今一つだが。」
ヴィンセントの反応を確認した後、セフィロスは彼から目を逸らせて導かれるまま王宮に入っていくのでした。
【11.19.2007】
【Revised 17th Jan. 2010】
039.童話の王子とお姫様
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