何とかウータイから戻って来て、休む間もないまま、セフィロスは再攻撃の作戦会議を始めた。
用意した会議室は暗い照明の中、目の前のテーブルにはウータイの地形図が詳細に描かれている画面がリアルに浮き出ていて、それと同じものが脇のスクリーンにも写っていた。
メンバーは実行部隊の中部隊を率いる中尉クラスと、船を操る飛行部隊、兵糧を運ぶロジスティクスの代表メンバーが主な人間だ。
もちろん、今後の組織の大勢に影響のある大きな作戦なので、総裁以下の組織の管理メンバーも会議を聴講している。
「今回は調査部は参加しないのかね。」
総裁がセフィロスに聞いてくる。
「あっちの作戦を知らない方が、動きやすいと判断してお互い独自に動くことに結論しました。」
用意された質問に答えるように、セフィロスが淀みなく答える。
「しかし・・・ウータイ側の人間からしたら、同じ組織の者なのに矛盾した動きをしていたら、後々の話し合いがあった時に都合が悪くならないかね。」
「大丈夫です。何しろルールを無視しているのはウータイ側ですから。」
自信満々に返答したセフィロスは、ついさっきまで負け戦で脱出して来たとは思えないくらい堂々としていた。
疑問点が解消したらしく、管理メンバーからの質問は無くなった。
作戦を実行するメンバーが真剣にウータイの地形図を見つめる。
「とにかく、一戦交えてみて分かったのは相手に圧倒的に地の利があること。しかも、ウータイは山岳部、森林部が多く見通しが悪い地形が島の大部分を覆っている。」
セフィロスが言及した地形をポインターで囲んで、指し示す。
「この山岳部を抜けた所に、ウータイの首都がある。ここから、例の戦争の首謀者が指示を出していると言う訳だ。」
赤く点滅している場所が首都だ。
「山が多いなら、飛行部隊が上から爆弾を落とせば済むんじゃないのか?」
飛行部隊のシドが疑問を投げかける。
「UNもそう思って、武装解除勧告を出す時に俺達とは別に空母を用意して、待機していたんだが、全部首都の手前で撃墜された。」
未確認なんだが・・・と前置きをして、セフィロスが、予想される撃墜地点をポイントした。
「首都が落とせれば、ウータイは落としたも同前なんですか。」
ロジスティクスメンバーから、質問が来る。
「そうだ。ウータイは首都以外は村みたいな集落が多い。ゲリラ的な抵抗はあるかもしれないが、首都の大将の指示がなければ恐らく最新鋭の武器があっても使えないと見た。」
「それよりも、戦闘機がどんな兵器で撃墜されたか教えてくれ。」
シドがもっともな質問をする。
「確認はしていないが・・・もしかしたら強力な魔法かレーザー砲かもしれない。」
まだ、相手の武器の全容は未確認だ、という言葉にメンバー全体が少しどよめいた。
飛行部隊は正体不明の撃墜兵器に対抗しなければならないし、兵糧部隊は長期戦になったらウータイのような地形のなか食料や武器等の資材を送り届けるのは困難になってくる。
意見がすぐにまとまらず、ざわざわしてきた。
実行部隊のメンバーはどんな作戦になるのかと、話し合いながらも結論は出ない様子だ。
暫くまわりのざわめきを聞いていたセフィロスだったが、どう自分の考えた作戦を言い出そうかと目を閉じて考えはじめると、ふっと周りの音が聞こえなくなった。
ちょっと前に確かに唇に触れていた、やわらかい優しいキスの感触が蘇ってくる。
もっと味わっていたかったのだが、確か残った時間がなくて唇を離した気がする。
ー今日は・・・キスぐらいさせてくれるよな・・・
自分の口元に手を当てて、そのざらざらした感触で現実に戻っても、未だ結論は出ていないようだった。
「ハンニバルとスピキオの組み合わせのニ正面作戦を考えているんだが。」
セフィロスが口を開く。
彼の言葉が浸透してきて、周りのざわめきが徐々に止まって来た。
静かになった会議室の中央で、総裁の方をちらりと見てから、ウータイの地図をしっかり確認して、セフィロスが作戦概要を話し始めた。
【7.16.2007】
025. ためらわない、迷わない