会議が終わると既に20時過ぎ。
すっかり暗くなった外の様子を横目に見ながら、セフィロスは自分のオフィスに戻ろうとしていた。
腕にはPCと山ほどの紙の資料が抱えられている。
今日はミッドガル内を走る鉄道路線の警備体勢の改善を関係会社へ提案する、事前準備の会議だったのだ。
ーんったく、肩書きばっかで物わかりの悪い奴らが多いと、会議が長引いて時間の無駄だ。
提案はセフィロスのいる実行部隊からで、他の部署の協力も必要だったので幾らか資料を作ってプレゼンをしたのだが・・・。
「結局、今までの鉄道の警備システムと比べて、どこが改善されたのかいまいち分からないのだが。」
一番協力が必要な技術部のヘッドが、全くセフィロスの話の内容を理解できずそのまま案件は保留になって、会議は時間切れに終わったのだった。
最近のミッドガルは以前よりも治安が悪化して、まだ被害者はいないものの公共の場での不審物発見やテロ騒ぎ未満のような事件がちょくちょく起こっている。
実行部隊の長になってセフィロスの初仕事は、警察からも前から協力の依頼を受けていた案件で、テロ騒動等の際に迅速な行動ができる対策通報システムの叩き台を作ることだった。
ー前任者が作った概要が悪かったのか・・・?
初仕事が失敗に終わったセフィロスは、考え事をしながら抱え込んでいる資料の該当部分をちょっと覗き込もうとした瞬間、
「うわっ!!」
バサッと、一番上にあった資料を床に落としてしまった。
誰か拾ってくれないかと周りを見たが、あいにくこんな遅い時間には働いている人もめったに通らない。
腕に荷物を抱えたまま、無理矢理落ちた資料を取ろうとして、
ーげっ!まじっ!!
雪崩式に上の方に積んであったPCからファイルから全部床にぶちまけてしまった。
ため息をついて、暫くの間床に散乱した資料をぼーぜんと見ているセフィロス。
ーなんて言うか、しょっぱなからついてないよなぁ・・・。
集める気も失せて、壁に寄りかかって窓の外の景色を眺め始めてしまった。
ヴィンセントが今日は実行部隊の棟にある庭でも見ながら帰宅しようと、廊下を歩いていると足下に紙が落ちていた。
「?」
手にとってその先を見ると、点々と資料が散乱しているようで、一枚ずつ集めて行くと・・・
ーPCが落ちてる・・・・・・?
その先には銀髪の男が壁に寄り掛かって、ぼーっと外を見ていた。
「これ、お前が散らかしたのか。」
ヴィンセントの言葉に振り向いたセフィロスは、一瞬彼の顔を見てとても驚いた感じだったが、すぐに口を開いた。
「あ、ありがとう。」
「運ぶくらい手伝ってやるぞ。」
さくさくと、落ちた書類を集めてセフィロスの手に渡すと、ヴィンセントは半分は自分で持って立ち上がった。
「どこに持って行くんだ?」
「そこの角の部屋。」
二人で並んで部屋に入り、テーブルに資料を全部置いてから、にっこり笑ってヴィンセントが話しかけた。
「何があったか知らないが、元気出せ。セフィロス。」
じゃ、と言ってすぐに部屋を出て行った。
ちょっと、名前教えろ・・・とセフィロスは追いかけたが、既にヴィンセントは姿が見えなかった。
ー絶対前にすれ違ったことがあるやつだ。
セフィロスは時節さり気なく彼を探していたのだが、また会えるとは思っていなかった。
ー俺の名前知ってなかったか?
ちょっと嬉しくて、顔が自然ににやけてくる。
さっきの落ち込みはどこへやら、今度会った時は絶対名前を聞いてやる、と決意したセフィロス様はとっても上機嫌で、鼻歌でも歌いかねないくらい、資料をリズミカルに片付け始めていたのでした。
【7.14.2007】
022. お薬