黄色いリボンの女性が新羅製作所A級研究員ルクレツィア・クレシェントだと分かった数日後、ヴィンセント・ヴァレンタインはようやく彼女を初デート?の夕食に誘うのに成功した。
当日はタークスの制服で行くのも嫌だったので、着替えまで用意した慎重ぶりだ。
彼女の為に用意したと気付かれないように、さり気なく黒スーツに身を包んでカジュアルでおしゃれな居酒屋風な店に案内した。
(多分憧れの彼女をさり気なく夕食に誘うのに最適な店!みたいな雑誌で探したのね(笑)by筆者)
「タークスって、いつもあの服着ているわけじゃないのね。」
一通り、飲み物と食べ物を注文し終わって、ルクレツィアが聞いてきた。
「まあ・・・正体がばれるかもしれないので・・・」
適当な事を言ってみたが、彼女は納得したようだった。
「ところで、クレシェントさんは今会社で主にどんな研究をしているんですか?
将来してみたたいこととかでもいいですけど。」
「ルクレツィアでいいわよ。」
即行訂正されて、ちょっと幸せになるヴィンセントだった。
「そうね・・・カオスの研究はライフワークにしたいわね。」
それ以外にもこの前見つけたサンプルもちょっと時間がかかりそうだし・・・と研究のことになるとルクレツィアの言葉は止(とど)まる所がなく、次から次へと言葉を発していた。
ー本当に研究が好きなんだな・・・
話の内容はいまいち分からないが、熱心な様子に感じ入るヴィンセント。
「ごめんなさい。ちょっと私ばっかりしゃべり過ぎたわね。」
目の前には既に注文した料理があらかた並んでいたが、話を聞いているヴィンセントもまだ手をつけていずにきれいに残っていた。
食べて、と言いながら
「そういえば、研究している時のお父様の話を聞きたかったのよね。」
とヴィンセントが話せる話題を振ってくる。
ーそれはただのその場の話題作りだったんだけど。
でも、せっかくの機会なので頑張ってみるヴィンセントだった。
「俺と親父ってそんな似てます?」
いきなり気になる事を聞いてみた。
「顔は一瞬みるとだけど・・・、でも雰囲気はそっくりね。」
ー雰囲気・・・
あんまり自分の父親と一緒にいた事がなかったのでいまいちよく分からない。
「親父みたいな雰囲気が好きなんですか?」
「安心するのよ。」
ルクレツィアがにっこり笑って、鯛のカルパッチョに箸をつけた。
家庭での父親を思い出せるような記憶がヴィンセントはあまりない。
ー俺だったら、家に帰るといつも奥さんが待っていて、ただいまって言うと子どもが2人くらい転げ出してきて・・・
あ〜・・・、でもルクレツィアは研究が忙しいから家事は分担だな、と想像を修正する。
「ヴィンセント、食べないの?」
自分未来の理想を思い描いていたら、ルクレツィアが不思議そうに話しかけてきた。
「た・・・食べます。お腹すいてるし。」
急いで、サラダとから揚げを皿に取る。
食べ始めたヴィンセントを見て安心したように、ルクレツィアは今の研究テーマや将来やりたい分野の話を始めた。
彼の理想の奥さん像から彼女の話はかけ離れている気がしなくもないですが・・・、それを聞いてるヴィンセントさんが大変幸せそうな顔をしていたのは間違いないでしょう。
【4.14.2007】
013. 未来予想図