「ヴィンセント、何か欲しいものとかあったら教えて欲しいのですが。」
仕事をしているヴィンセントの所に、リーブがさり気なくきいてきた。
「なんでだ?」
「ちょっとしたアンケートですよ。」
にっこり笑ってごまかすつもりだったが、ヴィンセントの不審そうな表情にどう対処しようか、その笑顔の裏でフル回転で考えるリーブさん。(笑)
「調査部の方皆にきいているんです。」
言い訳めいた言葉を付け加えたが、リーブさん調査部の人って何人いると思っているんですか!(by筆者)
「暇人だな。」
あっさりそっぽを向かれて、結局返事はきけなかった。
その瞬間、ちっ!、という表情をリーブはしたのだが、ヴィンセントには幸い見えなかったようだ。
ー・・・また別の作戦を考えないといけないようですね。
プリントアウトした調査日程をつぶさに検分するヴィンセントをちらりと見て、リーブさんは取りあえず引き下がるのでした。
ヴィンセントが珍しく社食に昼休みにいると、ザックスとクラウドが二人でやってきた。
偶然に彼の前に2つ空いていた席に二人とも納まる。
最近の訓練の成果とか、テロリストの捕り物劇とかいろいろときいていたが、ちょっと会話が途切れた時にクラウドが口を開いた。
「そういえば、ヴィンセントなんかして欲しいこととか、欲しいものとかある?」
一瞬見開かれる赤い瞳。
ザックスがまずいかも、と思った瞬間に既にヴィンセントが答えていた。
「今日同じようなことをリーブにもきかれたんだが・・・実行部隊内でもアンケートをしているのか?」
思わず素直に真相を話しそうになるクラウドを押さえて、ザックスが言った。
「うん、そうなんだよ。でもよく考えてみたらヴィンセントは調査部だったよな!」
すっかり空になっていた食器を急いで片付けて退散する二人。
もちろん、ヴィンセントが社内アンケートという言葉を信用するはずもない。
ー・・・敬老の日はまだ大分先だしな・・・
自分の誕生日も全然だし・・・と思ったヴィンセントさん。
(っていうか敬老の日になんかされたんですか!?by筆者)
人が少なくなった社食の中で、静かに自分の食器を片付けるヴィンセントだった。
「お前余計なこと言いそうになっただろ。」
社食を出て、トレーニングルームに向かうザックスがクラウドにくぎをさした。
「ごめん!思わず。」
クラウドは以外と隠し事が苦手なのだ。
「もしばれたって分かったら、旦那からトレーニングメニュー追加されるぞ。」
うげっ、と慌てるクラウド。
「っていうかさぁ・・・こんなことメールででも直接入れればいいんじゃないか?」
俺だったらそうするよ、とクラウドがちょっと腹立ちまぎれに言う。
「まあそうなんだけどさぁ・・・」
何でセフィロスがこんなまどろっこしいことをしているのか、不明な二人だったが、結局の所ヴィンセントの答は得られなかったようだ。
ーあんっの役立たず達め・・・
リーブとザックラ達の返信を見ながら、頭の中で毒づいていると
「セフィロスさん、出てきますよ。」
と声をかけられた。
打ち合わせ通りのポイントに麻酔銃を構えて、狙いをつけるセフィロス。
ここ2、3日動物園から逃げ出した、中形の肉食恐竜を捕獲する為にミッドガル郊外に待機していたのだ。
いくら動物園の飼育員が恐竜に慣れているからといって、気が立っている彼等の相手をするのは危険なため、組織の実行部隊が応援に呼ばれたのだった。
緑と丘の多い郊外は動物が隠れられる場所が多く、捕獲が必要な危険な生き物は早急に探さないと見失ってしまう。
GPSでおおまかな場所を把握した後、その情報を元に恐竜の移動エリアを網羅するように非常線を張ってタイミングを窺っていた。
木立の影に隠れていると、崖の影から目的の恐竜がのっそりと姿を現した。
瞬間に、セフィロスが麻酔銃を2、3発発砲する。
ーちっ!まずいな。
全部あたったはずなのだが、まだ麻酔が効いていないようで、しかもセフィロス達と反対側に待機していた人間を嗅ぎ付けたようだ。
「セフィロスさん、危ないですよ。」
飼育員が声をかける前に、セフィロスは正宗を構えて隠れ場所から飛び出していた。
目の端に動く物を捕らえて、恐竜がゆっくりと向きを変える。
「この無神経野郎。麻酔が効かないともっと痛い目にあうぞ。」
銀色にたなびく髪が視界に入ると、恐竜が一気に速度を上げてセフィロスの方へ走ってきた。
一歩もひかないセフィロスに、背後にいる飼育員が息を飲んだ瞬間、呪文の詠唱が終わり、寸前で獲物を捕らえられなかった恐竜はブリザラの氷と、効いてきた麻酔でばったりとセフィロスの目の前に倒れていた。
「今回も大活躍だったみたいじゃないか。」
セフィロスが持ってきた恐竜の牙のお土産を手にとって、ヴィンセントが話しかける。
実行部隊の廊下には、新しくセフィロスが捕らえた恐竜の新聞記事が写真付きで飾られていた。
「そういえば、セフィが留守の時にリーブとかにしつこく欲しい物とか聞かれたけど・・・」
「そ、そういうしつこいやつらは無視してろよ・・・。」
ぎこちない感じで答えるセフィロスを、なんとなく怪しく感じるヴィンセント。
恐竜捕獲作戦の初日、一緒に野宿をしていた動物園の飼育員達と話していると、恒例の星祭りがもう一ヶ月足らずで始るという話になったのだ。
そして、星祭りの前日に当人に知らせずに大切な人の願いを叶えると、星祭りでその人と結ばれるらしいですよ・・・という伝説めいた話をきいて・・・。
ちょうど暇だったセフィロスがリーブ達を使って色々探り出そうとしていたのだが。
作戦が終わった時に、その話をした飼育員に聞いてみると、
「そういうゲームが最近娘の学校で流行っているんですよ。」(笑)
と笑顔で返された。
ー冷静に考えればあんな根拠のない、ばかげた話ある訳なかったんだよなぁ・・・
満天の星空の中で聞く星祭りの話は、何となく信ぴょう性を帯びてしまったようだ。
優しいヴィンセントさんはそれ以上セフィロスに突っ込みは入れませんでしたが・・・、でもリーブさんからはかなりそのあと絡まれたようですよ!(笑)
まあ、二人とも良い星祭りを過ごせるといいですね。
【6.17.2007】
016. 願いごと