最近セフィロスが食事に来ないなぁ〜と思っていたルクレツィアは、居間で静かに読書をしていたヴィンセントに話しかけた。
「セフィロス忙しいの?」
1ヶ月くらい前に、テニスを教えてくれるって約束したのよ、と言って隣に座る。
「さあ、知らない。」
いつもだったら彼が今やっていることとか軽く教えてくれるのに、ルクレツィアの方を見ずに答えた。
「パパも最近会ってないの?」
「会ってない。」
本の次のページをめくる音がした。
「けんかしたの?」
この会話の流れからしたら当然の質問だったのだが、ぴくっとしてヴィンセントがやっとルクレツィアの目を見た。
ーあ、やっと目を見た。
にこー、と笑ってヴィンセントと話す体勢になる。
「何でけんかしたの?」
「・・・」
黙って本を読み続けるヴィンセント。
「私もセフィロスに会いたいんだけど。」
「連絡とったら?」
いつになく理由を話してくれないヴィンセントに、あきらめてセフィロスに電話をしようと思うルクレツィアだった。

「俺のせいじゃないぞ。」
電話をしたその次の日、友達と夕食食べてくるから、と誰に会うかヴィンセントには言わずにルクレツィアが出かけた先に、 既にセフィロスがテーブルで待っていた。
「忙しいんじゃないの?」
「全然。」
何食いたい?とメニューを渡す。
食べ盛りのルクレツィアは4〜5品を選んで頼んでいた。
「なんかやったの?」
「なんにもしてないよ。」
電話しても出ないしさぁ、と既に出ていたパスタを食べる。
「困ってるの?」
「別に。」
でもちょっと焦り過ぎたかなぁ・・・とは思ってるんだ、と呟くようにルクレツィア言った。
「セフィロスの方が素直よね。」
パパは手がかかるのよ・・・と、悩みを打ち明けるように呟いてルクレツィアはウーロン茶に口をつけた。
「大人の事情なんだから、無視してればいいんじゃないか?」
気乗りしない感じで、セフィロスが出て来たつまみを彼女に勧めた。
「そうもいかないのよ。だって、・・・テニス教えてもらえないじゃない?」
とルクレツィアが言い出す。
「そんなの、誰でも教えられる。その辺の学生に習ったらどうだ?」
彼の返事に、セフィロスも意地っ張りね、とルクレツィアが年の割には物が分かったように返して、店員から注文した皿を受け取った。
「私が困るのよ。二人が仲悪いと。」
もう、とルクレツィアは素早く携帯を取り出し、2プッシュで電話して、二言三言囁いてから素早く切り、 セフィロスに何も言わずに手近なジャーマンポテトをつつき始めた。
あまりの素早い行動に何のコメントもできないセフィロス。
ルクレツィアは旺盛な食欲で次にビスマルクピッツァを一人で片付け始める。
ー相変わらず意味不明のガキだよ。
自分の母親と同じ血が流れていることは知っているが、果たしてこんな小生意気な性格はそのせいなのか。
ヴィンに同じように思われてたらやだな、でここまでこじれた原因なんだっけ?と考え始めていたら、目の前に人影が現れた。
「セフィ・・・」
愛しい人の声に顔をあげて、ヴィンセントと目が合う。
「あっ・・・」
思わず席を立つセフィロス。
「パパ、座って。」
ぱくぱく夕食を平らげていたルクレツィアがやっとヴィンセントに気がつき、腕を取って、強引に自分の隣の席に座らせた。
すぐに、パパなに食べる?と聞きつつ勝手にヴィンセントの皿に食べ物を取り分けはじめるルクレツィア。
ヴィンセントもセフィロスもぎこちない様子で顔を見合わせたのだが、食事の間に原因がわからないしこりも、 いつの間にか少しずつ解けて来たようだった。

この何日か後にルクレツィアがセフィロスとヴィンセントと連れ立って、テニスコートに行った様子は、 端から見ると幸せな家族に見えたか、素敵な男性二人を連れたうらやましい女子学生に見えたかは、御想像にお任せします。



【First uploaded on July15,2007】
【Re-edited on April 9, 2014】

024. 雨のち晴れ

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