「新羅印のチャーター機で来るなんて、喧嘩売ってるのか?」
ちょうど着陸したばかりの、プレジデント新羅が搭乗している飛行機の尾翼に新羅の文字がはっきりと表示されているのを見て、ヴィンセントがため息まじりに言った。
「新羅に所属している俺から言わせてもらえば、社長はこんな新興国何かあったら経済力でねじ伏せられると思ってるんだと思う。」
アンジールが答えた。
「でも、命は一つだぞ。」
「だから、ほらあいつを。」
といいかけた時に、セフィロスは二人が待っているゲートに到着した。
後ろにジェネシスも悠々と歩いて来る。
「セフィロス、遅かったな。ぎりぎりだ。」
サングラスをかけているヴィンセントが、声をかける。
「アンジール、お前も来てたのか。」
ヴィンセントの赤い瞳が見られないのを残念に思いながらセフィロスが言った。
「統括からの伝言。お前は急遽社長のボディーガードになった。この国に入国してから出国までだ。」
「普通はタークスがやるだろう。」
「シスネには荷が重いからな。」
ヴィンセントの後ろに控えていた彼女がひょこりと姿を現して、セフィロスに礼をした。
「ごめんなさい、社長の御指名なの。がんばってね。」
何で俺が好き好んであんな成長し過ぎたオランウータンを・・・とぶつぶつ文句を言い出す。
「もう降りる準備ができたようだな。セフィロス、急いで出迎えに行け。」
ヴィンセントが命令する。
「ほら、セフィロス。ミッション・スタートだ。」
ジェネシスも面白そうに彼を送りだす。
「変態詩人は黙ってろよ。」
盛大なため息をついて、セフィロスがヴィンセントを見る。
「しょうがないから行ってくる。」
ゲートから出ようとして近くにいる彼を引き寄せた。
「言っとくけど、お前のついで、だからな。」
頬にキスしたついでにサングラスを外して、彼の瞳を確認した。
セフィロスの行動にびっくりしながらも、少し心配そうな色が見える。
「ハニー、やっぱ行くのやめ・・・」
「さっさと仕事しろ!」
ヴィンセントが彼をゲートの方へ突き飛ばすとキャップが外れ、チャーター機のドアがちょうど開いたのが遠くで確認できた。
セフィロスが銀髪をなびかせて、プレジデント新羅の降機に間に合うように走っている。
「セフィロスがホモなんて、初めて知りました。」
誰もコメントできない間にシスネが感心して言った。
「・・・」
被害を受けた当人のヴィンセントは無言だ。
「い・・・いや、バイだと・・・。」
フォローのつもりでアンジールが口を挟む。
「っていうか、ヴィンスすまん。あんなんだとは知らなかったんだ!」
アンジールがヴィンセントの目の前に土下座する勢いで謝りに来た。
「英雄は普段はもっとクールだよ。お嬢さん。」
ジェネシスがシスネに言う。
「じゃあ、運命の人に出会っちゃったんですね!」
シスネが目をキラキラさせてジェネシスに言った。
「そうだ!俺たちも英雄の恋の道を応援しよう!たとえそれが茨だったとしても!」
まんまとシスネをセフィロスのからかいネタに引き入れ、ジェネシスは上機嫌だ。
「シスネ、違うから。」
ヴィンセントが彼女をギリギリで止める。
ジェネシスとシスネ、アンジールも彼を見た。
「多分、彼は私じゃ無い誰かを私の中に見ているんだ。」
プレジデント新羅に付き添った彼を確認して、ヴィンセントは空港から去ろうと出口に向かう。
ーこの人はもしかして・・・
ジェネシスは彼に対する疑問が解けそうな感触を頭の隅で感じた。
「明日が会議の当日だから。セフィロスがいないのを適当に埋める構成の打ち合わせをする。」
「了解。指揮官。」
アンジールがすぐに彼の後に続く。
ーさすがみなさんソルジャー1st!切り替えが早い。
張り切ってついて行こうとしたその時、
ぐ〜
とシスネのお腹がなった。
「すっ!すみません!」
真っ赤になって謝る。
「そう言えばそろそろ昼時だな。」
ヴィンセントが時計を確認した。
「シスネ、俺も腹が鳴るのを我慢していたんだ。レディに先をこさせて申し訳なかった。」
アンジールが彼女ににっこり笑いかける。
「この機会にセフィロスの恋を応援する打ち合わせもやろうね。」
ジェネシスがシスネの肩に手を置いて言う。
どこで食事をしよう、と迷うヴィンセントに、
「指揮官!俺いい所知ってます!」
とジェネシスが手をあげた。
「じゃあ、そこに。」
ヴィンセントが見せたその時見せた笑顔は、アンジールも、ジェネシスもシスネも思わず居住まいを正して、セフィロスの言った事がちょっと分かった気持ちになったのだった。

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