3−3. ユ・ウ・ワ・ク


泉の口づけは思ったよりも優しく、長く続いた。
特に激しく刺激を求めるわけでもなく、少し唇を重ねたら舌を触れ合わせ、首筋にキスをした後にまた唇を求める、という風にいつまでも続いて行くような感じがした。
ーケンと全然違う・・・
藤丸が欲しくて噛み付いて来る彼のとは違って、泉のキスは愛しい人を迎え、そしてその愛情に答えるように舌を絡ませて来る。
自然と藤丸も赤銅隊長の口づけに答えていった。
椅子の上で口づけをかわしているのに、全然もっと別の場所に行こうという気が起きない。
膝立ちのままの藤丸に泉は下から口づけをほどこし、藤丸が満足するまで待っていた。
「あっ、、、はぁっ・・・」
何度めかの口づけが終わって、思わず赤くなった顔を見られないように、膝を折り初めて顔を背ける。
「その、角度が一番似ている。」
横顔を見せられて、泉は藤丸のシャツの際に少し唇を滑らせた。
ぞくっとその感触に反応して藤丸は身体を震わせた。
少しずつ剥がされるシャツに泉の手が藤丸の上半身を滑る。
「俺胸ないからな。」
口惜しさに、憎まれ口を呟く。
「安心しろ。貧乳も範囲内だ。」
するりと滑り込んできた手に、感じてしまい思わず小さく声を上げてしまった。
泉の藤丸の身体への愛撫は、女性にするようにそっと柔らかなものだった。
ー当たり前だ。今俺は赤銅隊長の元カノの替わりなんだから。
華奢だが骨太い男の身体の藤丸は、時に泉の愛撫がくすぐったく、もっと強い刺激を欲しがってしまう。
身体を返され、首筋から少しずつ胸の方へ降りて来る泉の口づけに、また膝立ちにされた藤丸は吐息を漏らし、支えを求めるように泉の背に腕を掛ける。
「あっ・・・」
胸の突起を口に含まれた後にまた口づけされ、藤丸は今度は自分から泉の身体に同じように口づけを始めた。
白シャツは上半身脱がされ、腰の所で止まっている。
「ああっ・・・」
泉の手がシャツの奥の藤丸の一番感じる所を掴み、藤丸は力が抜けて泉に抱きついた。
彼の反応におかまいなく泉はそれを促そうと手を早め、その甘い刺激に藤丸は眉を寄せて泉にしがみつく。
「ああっ・・・んんっ・・・・ああっ・・・」
その刺激にイキそうになった時、藤丸は自分から泉の顔を抱いて口づけをした。
ーこんなところまで似てるのか?
彼が舌を入れてくるのに、泉も自分のを本気で絡める。
「んんっ!」
イッタ瞬間に藤丸は口をゆっくり離し、荒い甘い息を漏らして赤銅隊長を見つめた。
髪は艶っぽく乱れ、頬は上気して、目が快感に潤んで目尻から涙がこぼれている。
泉は彼を強引に抱き寄せ、自分の上で彼の足を開かせる。
「藤丸、覚悟はいいか?」
膝立ちにさせて、彼の顎を取りまた下から見上げて泉が見つめてくるのに、藤丸は微かに頷いた。
ー悪い、ケン。
「泉だ。」
赤銅隊長がまた藤丸に言った。
「い、ずみ?」
藤丸に顔を近づけて赤銅隊長が言葉を続ける。
「抱かれている時に、他の奴の事を考えるな。」
隊長の鋭さに藤丸は息をのむ。
「だ、大丈夫だ。泉。」
少し震えがちな藤丸の声にかぶせるように、泉が唇を重ねて来る。
そして、その後藤丸は泉の導くままに彼に身体を任せたのだった。

どのくらい時間がたったのか、藤丸が目を覚ますと既に窓の外は暗く闇が舞い降りていた。
「いって・・・」
ソファから飛び起きようとして知らない痛みに、声が出た。
「少し休んでいろ。」
赤銅隊長はもう制服をかっちり着込み、すぐにでも戦闘に出られるようだった。
ー俺は足止め出来たのか?
すぐに座る事も無理で、藤丸はさっきの体勢のままソファに寝転がった。
「服は中ノ下が持ってきてくれる。動けるようになるまで休んでいろ。」
「泉は?どうすんだ?」
闇の合間からどぉん、と火の手が上がっているのが分かる。
「出る。尊がきっと来るからな。」
赤銅隊長の様子からは、自分の行動が効果があったか分からなかった。
「中ノ下は味方だ。何かあったら頼め。」
少し痛みが薄らいできて、身体を起こすとシャツが着替えさせられているのが分かった。
「しかし、お前はケネス元区長と何かあると思っていたが・・・」
「ねぇよ。」
藤丸がきっぱり否定した。
「ケンは親友だ。それだけだ。」
またどぉん、と音がしてそれはさっきよりも距離が近くなっているようだった。
「そこにあるのは鏡の間へのキーだ。あと、そのデータアクセスパスワードは俺が調べた鏡の間の情報。君には必要ないかもしれないが。」
「そんなことない。」
自分がアクセスした事のない鏡の間の情報は貴重だ。
右手を使わないで入手出来るなら負担が減る。
「思い出に付き合ってくれたお礼だ。」
泉の笑顔につられて、藤丸も顔が緩む。
「Good luck.」
泉が拳を向ける。
「Good luck. また生きて会おうぜ。」
それに藤丸は自分の右手をカチンと合わせ、泉はさわやかな笑顔で執務室を出た。
ー死ぬんじゃねぇぞ、みんな。
また、窓から 明るい爆撃の灯りが入って来る。
藤丸は身体を起こし、まず赤銅隊長の情報を確認しようと、さっき整理したPCのデータにアクセスを始めた。



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