社長と一緒に食事をするからには凄い高級レストランかと思いきや、・・・着いたさきはラーメン屋だった。
「いいのか。お前白スーツなのに。」
思わずセフィロスが言った。
「・・・確かに。まあ、餃子でも食べるさ。」
ラーメン屋を変える気はないらしい。
そのまま暖簾をくぐると、いらっしゃい、と威勢の良いかけ声が迎えてくれた。
「社長又来たんですか。ありがとうございます。」
厨房から店主らしき人が会釈をする。
「餃子とライスをくれ。」
「俺はトンコツラーメンで。」
いい男二人がせまッ苦しいラーメン屋で食事とはなかなか見られない光景ではある。
ー社長御用達とは汚いけど美味いってやつか?
水を飲みながらきょろきょろと店を見回すセフィロス。
「私がこんなところに来るのはおかしいか?」
面白そうにセフィロスの行動を見ながらルーファウスが言った。
「まあ。あんまりイメージじゃないな。」
ルーファウスは新羅カンパニーの社長だが、セフィロスはそこに所属しているわけではない。
もともとは新羅カンパニー内にあった警備、軍組織を新羅カンパニーから分離し、いろいろな所からの依頼を受けられる別組織とした。
立場的には新羅に対しては対等で親子会社のような関係にはない。
政府には所属していないが警察機構のような役割も一部あるので、特定の会社等を優遇しないような仕組みになっている。
特殊法人とNGOと国連下部組織を混ぜ合わせたようなものだろうか。
「話というのはだ、」
ルーファウスが本題を切り出した。
「今日某国の内情調査がお前の所にいっただろ。」
「ああ。もう大体人の手配は済んだからあとは細かい作戦を考えるだけだ。」
「もうそんなところまで済んだのか!」
ルーファウスは驚いていた。
「一応俺は一番あの中で優秀だからな。」
ーまあ、ちょっと不純な動機があったから行動がさらに素早くなったが・・・
「さすがだな。午前中だけでそんなに進めているとは。」
社長は言葉は誉めているが、何となく言いにくい感じの表情をした。
「何かまずいことがあるのか?」
とりあえずきいてみる。
「あれはお前に誤送信されたんだ。本当はツォンに頼んで新羅カンパニー内でやるはずのものが、なぜか誤発注されて・・・」
ーええっ!せっかくの俺の計画がそんなあっさり。
「あの任務事体ぬるいからきっとお前は担当しないだろ。申し訳ないんだが取り消してくれないか。」
「担当は俺だ。」
「・・・(なぜ?)」
ルーファウスがセフィロスの深淵(笑!?)な計画を知る由もなかった。
「どうしても取り消したいというのなら違約金を払え。」
「・・・見なかったことにしてくれないか。(払いたくないからこうして頼んでいるんだ。)」
「だったら俺の午前中を返せ。(あともろもろの希望と計画も)」
ルーファウスとしては取りあえず今日誤発注の旨をセフィロスの組織の担当者に伝えたが、既に実行部隊に指事済みとのことで実行部隊担当者と話が着けばいいですよ、との回答をもらっていたのだった。
「お前が引いてくれれば受注担当者サイドではなんとかするといってもらっているんだ。」
「俺がヤダ。」
ーセフィロスめ・・・
こんな時同じ会社の方が良かったと心底思う。命令すれば済むからな。
「お前の組織違約金高いだろ。払うくらいなら任せてしまった方がいい。」
「ほお。」
「その代わり、仕事を追加してもいいか。」
「受注担当者に言え。」
ーなんてやつだ。
「そんなこというと、受注担当者にお前がわがままをいっていると伝えるぞ。」
「わがままかどうかは今日の俺の午前中の仕事をみたら言えなくなるかもしれないぞ。」
ふふんっとセフィロスが鼻で笑った。
おまちっ、とセフィロスとルーファウスの前にラーメンと餃子がどんどん!と置かれた。
「まあ、食え。」
ルーファウスが割り箸をとって勧めた。
もくもくと食事をする二人。入って来た時はあまり混んでいなかったのに、周りに人がどんどん入って来たようだ。ざわざわ声が聞こえてくる。
「追加したいのは、調査が一ヶ月で済まなかった時の延長の条件と生化学兵器製造以外に内乱の原因も探って欲しい。」
「内乱の原因は民族間の意志の齟齬が原因じゃないのか。オフィシャルにはそう報道されてるぞ。」
「それは一つの原因だ。だが、あの両国は珍しくセトラの人口がかなり多いんだ。彼等が内乱にどう関わったのか、関わらなかったのかを知りたい。」
ーそれは俺も知りたいと思っていたことだ。
セフィロスはラーメンに七味を入れながら考えた。
「少しは興味が出てきたかセフィロス。」
ルーファウスが畳み掛けた。
「少しはな。でも一ヶ月以上の延長は別料金だし、延長した場合メンバーを入れ替えたくないからそれなりの調査の理由を受注担当に話してくれ。今のままだと別の重要任務が来た時に簡単に入れ替えられてしまう。」
任務延長の言葉に内心かなりひかれていたのだが、表面にださない様気をつけて答えた。
「ふうん。かなり期待していいってことだな。」
交渉が上手くいきそうなのでルーファウスは安心して食べ終わった皿を店主の方へ押し戻した。
「ルーファウス、それよりその情報をどう使うつもりなんだ?」
「それこそお前には関係ないな。」
あっさりルーファウスに切り返された。そして、早く食えと言った。
某国には何かあるのかもしれない。セフィロスは全部食べ終わり何気なく周りを見てギョッとした。
こんな汚くてむさいラーメン屋なのにいつのまにか周りは若い女性で一杯になっている。
セフィロスの椅子から外を見ると外で待っている人も皆女性だ。目があうとなにげに手を振られた。
「ほら、そろそろ出るぞ。」
ルーファウスが席を立つ。
「店主、ごちそうさま。いつも済まないな。」
「とんでもない社長。いつも来る度いい男を連れて来てもらえてうちは大助かりだよ。また宜しく。」
店を出た後セフィロスは思わず言った。
「お前・・・飯代ただか?」
ルーファウスはにやりと笑い、答えた。
「そうだ。まあ、あそこには客よせになる男しか連れて行かないけどな。お前ならまたいけるぞ。」
ー・・・セコイ。社長なのにセコ過ぎる・・・
調査取り消しは免れたが、何か大負けした気分になり脱力したセフィロスだった。

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