一方、ヴィンセントの方は既に天井裏から下へ降りて、二人は片付け、最後のリーダー格と思われる一人に手こずっていた。
大きな柱の影に隠れているのだが、狙いを定めようと少し影から身を乗り出すとすごい勢いの弾幕で機銃を撃ってくるのでなかなか近付くことができなかった。
ー弾切れを待つか・・・でも向こうがこっちの場所を分かっているから不利だな。
段取りを考えていると、
「どんなスナイパーかと思ったら、随分きれいな顔だな。」
弾幕が少し晴れて来て気付くと頭に銃を突き付けられていた。
ー油断した。
直ぐに身をかがめてばく転しつつ、彼の手元を蹴り上げて銃を手から蹴り落とした。
素早く隣の大きな柱に身を隠す。
相手は銃をまだ持っていたらしく、何発かヴィンセントに向かって発砲していた。
ーリロードする隙を狙うか?
銃弾の発砲場所の方を狙って銃を構えると、いきなり足を取られて床に寝かされた。
「なっ!!」
銃を持っている手と開いている方をがっちり床に押さえ付けられて、両足の上に体重を乗せかけられた。
「ふうん、あんたスナイパーって言うよりは男妾の方が儲かりそうな感じだな。」
俺も結構そういうの好きなわけよ、と続けられヴィンセントはどうやってここから抜け出そうか頭をフル回転させていた。
ーっていうか今回私の役割ってこんなのばっかかよ!!
のしかかって来る男の口でシャツのボタンを少しずつ外され、だんだん腹が立って来たヴィンセントは、絶対ガリアン辺りに変身してやる!と身構えた瞬間、
「おい、そいつに触れていいのは俺だけだぞ。」
セフィロスが男の背後に立ち、首筋に正宗の刃を当てていた。
一瞬男が怯んだ隙にヴィンセントは両手を拘束から外し、男の体重が浮いている隙に彼の両手を掴んでうつ伏せに床に押し付けた。
銃を首筋に突き付けて、引き金を指にかける。
「お前、私を男妾呼ばわりしたことを後悔させてやる。」
ーうわっ、ヴィンが切れてるよ・・・
銃のグリップで男を殴って気絶させた後に、仕上げにブリザガを落とそうとしていたヴィンセントを見て、セフィロスはヴィン、ここは俺に任せてくれ・・・(この男の話も聞かなきゃいけないし(汗))となんとかブリザガの発動をやめさせた。


セフィロスはさっきの男も含め、周りに散らばっている不審者をひとまとめにしてスリープをかけると、その辺の柱に括り付けた。
セフィロスに止められて理性(笑)を取り戻したヴィンセントは、すぐに時限爆弾のところへ行き、詳細を調べていた。
時限装置の表示を見るとあと15分程で爆発するように仕掛けてあった。
ー凍らせるにしても、起爆装置は止めないと危ないな。
他の爆弾へ連結しているコードをみると起爆源の爆弾からきれいに柱に括りつけられてある爆弾へ向かって発火するように繋いであり、この爆弾が要と思われた。
ー周りの爆弾を事前に凍結させてからにするか。
セフィロスにどっちを頼もうかと思った時、頬を指が撫でた。
「血が出てる。」
俺がキスした方だ・・・と言って、血をセフィロスがなめ取ろうとした。
「時間がないんだから、じゃれるんじゃない。」
ヴィンセントがセフィロスのキスを避けて、お前爆弾解体したことあるか、と聞いて来た。
「全然ない。やり方も知らん。実行部隊では爆弾が出て来たら全部解体班に任せるからな。」
何だよケチ・・・、と思いながらセフィロスが憮然と答えるのを聞いて、
「じゃあ、お前は周りの爆弾を凍結してくれ。私はこの起爆源のやつを解体するから。」
と指示をだした。
15分しかないから急げよ、と言われセフィロスは柱の辺りに散在する爆弾に一つ一つフリーズをかけていった。
ヴィンセントは注意深く爆弾の蓋を開け、その中から姿を現した配線を観察した。
ー思ったより複雑でなくて良かった・・・
もちろん、複雑だったらヴィンンセントの手に負えなくなるからである。(笑)
最終的には雷管を抜けばいいのだが、その間に待機時間が減ったり間違って爆発するようなことがあったら大変だ。
取りあえず雷管のある所はすぐ分かったので、そこから出ている配線を切断することにした・・・と言っても何か複雑に絡み合ってどれがどれだか良く分からなくなっているが。
ーまたは、スイッチを稼動不能にすればいいんだよな。
タイマーから出ている配線を見ると3本あり、爆破用の発火スイッチと思われるものにどれかが(もしくは全部が)繋がっているはずだ。
ーめんどくさいから全部切っちゃおうかな・・・
ケーブル類を見てくらくらしてきて、投げやりになって来たヴィンセントであった。
まあ、そんないい加減なことも言っていられない。
爆弾はできれば元の姿が分かる程度に解体出来るのが望ましい。
専門家がみれば、解体された爆弾からどの国で作ったものか、特徴があれば誰が作ったものかまで推測出来るかもしれないので、大事な証拠になるからだ。
取りあえず配線を確認しながら必要と思われる場所を切っていった。
セフィロスが全部凍結し終わったらしく、ヴィンセントの側にやって来た。
ヴィンセントが真剣に配線とにらめっこをしているので話し掛けないで近くに座る。
時間を見るとあと5分だった。
ー思ったよりも時間かかってるな。
まあ、機械に弱いくせに一生懸命やっているんだからしょうがないかと思いつつ、邪魔にならないように横顔を盗み見る。
微妙に困ったような一生懸命な顔を見て、
ーこりゃかわいいな・・・俺がコンピュータ教える時もこんな顔してくれないかな。
とのんきに考えているセフィロスであった。
残り時間の表示が3分を切って、大丈夫か?とセフィロスが思い始めた時、
「フリーズがでるマテリアを貸してくれ。」
とヴィンセントが声をかけて来た。
セフィロスが直ぐに渡して、ヴィンセントがマテリアを発動しようとしたが・・・全然変化しなかった。
もう一度試してみても全然発動しない。
ヴィンセントがマテリアをじっと見る。
「どうしたんだ?」
セフィロスが心配そうに話し掛ける。
ヴィンセントがセフィロスの方を見て
「お前もう一回フリーズ出るか?」
と聞いて来るので
「もう無理。使い過ぎ。」
と正直に答えた。
そうか・・・と答えてヴィンセントがもう一度マテリアの発動をさせようと目をつぶった。
セフィロスが見ていると、ヴィンセントの周りに薄く青い光が取り巻き背後に悪魔のような影が一瞬見えて、フリーズが発動した。
セフィロスが自分の目を疑っている間に、ヴィンセントはばったりと床に仰向けに倒れ込んだ。
ちらっと彼の方を見て
「セフィ、執務室に爆弾がないか調べて来てくれないか。」
と言う。
「もしあったら凍結しておいてくれ。」
頼みながらエーテルを手渡した。
ー持ってるんだったら、自分の時に何で使わなかったんだ?
聞いてみたかったが、かなり疲れているようだったので黙ってセフィロスは執務室の方へ行った。
セフィロスを見送りながらヴィンセントは床に寝転んでため息をついた。
ーまさか魔力不足になると思わなかったな。
っていうか体力不足と思われる。
ーやっぱり食事は大事だ・・・
と自分の空腹を紛らわせながら眠りについたヴィンセントだった。

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