400m程進んだと思われた時に、後ろから人の気配がした。
「おい、お前ちゃんと扉を閉めたんだろうな。」
セフィロスが族長に聞く。
「閉めましたけど・・・もしかしたら気付かれたのかもしれませんね。」
族長はのんきに返事をした。
ーこいつ〜ほんとにこの国の元最高権力者か!!
あまりにも緊張感のない様子にちょっと切れながら
「お前、第三王女の屋敷迄の道分かるよな。俺が後ろにつくから。」
と場所を交代して進み始めた。
下水道は滑り台から降りて見える限りは一本道だったが、大分進むと分かれ道がいくつもありその度に族長にどっちの方が正しい道か(っていうかどれがまっすぐかってことですが)ナビゲートしてもらっていたのだ。
次の分岐点を越えるとはっきり人の声と音が聞こえて来た。
ー第三王女の宮殿まで距離はあと半分以下・・・しかもあいつらも俺達がどこに行くのか分かってるっぽいから、途中でできれば止めたいな。
でも、あのオヤジも一人でちょろちょろさせたくないし・・・
「おい、次の分岐点はどこだ。」
「屋敷の100m前ですかね。」
「そこで全部迎え撃つ。」
わかりました、と族長が答えたがセフィロスの作戦を聞いてどう思ったかは伺えなかった。


ヴィンセントの方は下にいる10人程度の動きを観察しつつ、セフィロスに適宜気付いた情報を送っていた。
ーどうみても爆弾を仕掛けてるっぽいな。しかも、この宮殿全体というよりは一部を大破させて住民にちょっとショックを受けさせようと言う作戦か?
首都の象徴ともいえるカンディフ族の族長の宮殿は、もし破壊されれば、今迄治安の良い某国に住んでいた住民を不安に陥れ、本当に内情不安定な国になる恐れもある。
それはちょっと頂けないな・・・と思ってできれば爆発物ぐらい止めたいと、頭の中で爆弾解体マニュアルを思い出していた。
その時、下の部屋にいるリーダー格の男がふっと上を見た。
ー気付かれたか。
光の指す場所から身体を離す。
目の端で下の様子を見ていたら人の慌ただしく集る様子が見えて、これはちょっと早めに行動した方が・・・と思う感じになっていた。
とりあえず、見える場所から何人いるか人数をカウントする。
落ち着いて銃にサイレンサーを付け、照準を合わせて影にいる人間から順番に撃っていった。
ー場所を気付かれる前に5人、気付かれてから3人、下で2人
頭の中で計算しながら、3人迄は順調にいった。
その後人影が天井の隙間からは見えなくなった。
ー気付かれたな。
足下から狙撃される恐れもあるので、ちょっと配管によじ登り角度を変えると、3人程同じ所にいたのでまとめて狙撃した。
ーあと4人。
と思った瞬間、ヴィンセントのいる配管をめがけて下から激しい銃声と弾丸の嵐が来た。
ーうわっ!
急いで配管を降りて別の配管へ移ろうと動いた時、肩と頬を銃弾がかすめた。
族長のいった最後の分岐点でセフィロスは正宗を構えて追っ手を待ち構えていた。
「おい、俺の後ろから離れるなよ。」
族長に向かって声をかけ、彼はにっこりうなずいた。
ーなんかこいつ緊張感ないんだよな・・・
まあ、怯えて気が動転するよりはましか、と思って周りを見渡した。
ー思ったよりも広いから手こずるかもな。
下水道は水が流れている川の部分と通路の部分があり、両方から攻撃されたらかなり大変かもしれなかった。まあ、族長を後ろの分かれ道に匿えるだけましともいえる。
人影がはっきりとこっちへ向かってくるのが見えた瞬間、セフィロスは呪文を唱え、サンダガを追手の目の前に、どん、と落とした。
一番前にいた人間と、水の中を進んでいた何人かが感電して動けなくなる。
その人間を越えて6〜7人がまた進んで来た。
ーうまい具合に通路を一列にやって来てくれたぜ。
銃弾を正宗で弾き返しながら、セフィロスは相手を充分引き付けて一人一人切り倒していった。
「話を聞くんですから、殺さないで下さいよ。」
セフィロスの戦いぶりを見て、族長が囁く。
「安心しろ、皆峰打ちだ。」
最後の三人はまとめてスリープをかけて眠らせた。
ー全部で11人だな。
宮殿の方に10人ぐらいまだいるのか・・・しかも残っているのはヘッドの方だな、とちょっとヴィンセントが心配になったが、取りあえず族長の保護が最優先だったのでそのまま第三王女の宮殿へ進んで行った。
地下道から上がるとちょうど王女の部屋についた。
「お父様!どうしたの。」
「ちょっと曲者に襲われてね。」
この宮殿だったら抜け道が一杯あるから安全よ、と王女が屈託なく答える。
セフィロスが部屋に入ると中にユフィがいた。
「お前、どうしてここにいる。」
「だって〜王女が心配だったんだもん!!」
別荘の方には増援も来たので、シドがファイルにあった兵器工場に行くついでに首都の方へ乗せてもらったようだった。
「お前、この二人を守れるか。」
セフィロスがユフィの目を見て言う。
うん、とユフィが大きく頷くとセフィロスはじゃあ、頼んだぞと言った。
コントローラの通信を見ると、ヴィンセントからいくつか情報が入って来ていた。
セフィロスはざっと目を走らせると、族長に宮殿が爆破されそうになっているみたいだから、宮殿にいる人の避難と、さっきの不審者を回収したいから手勢をかりるぞ、と言った。
族長はすぐに呼び鈴を鳴らして警備員を集めなさい、と侍従に指示をし、セフィロスには効率的に避難させるにはどこの誰に指示を出せばいいかと言うのを簡単に伝えた後、
「これを持って行きなさい。信用されなくても困るから。」
と彼が首にかけていたペンダントを渡した。
「絶対私がみんなをおいて逃げたなんて言いふらさないで下さいよ。」
族長が念押しのようにセフィロスに囁いた。
「・・・分かった。」
侍従が警備員の用意ができたと連絡をしに来ると同時に、セフィロスは、じゃあな、と元来た下水道の道へさっさと帰って行った。
「・・・ああやって行動しているのを見ると、すっごく頼れる優秀な人に見えるわね。態度でかくて言動が失礼だけど。」
王女がセフィロスがいなくなった空間を見ながら感想を言った。
「見えるんじゃなくて、本当にセフィロスは頼れるよ。」
ユフィが珍しくセフィロスをフォローする。
「あんな風にオフィシャルに聞こえるように言ってますけど、彼が戻りたかったのは宮殿にまだヴィンセントがいるからですよ。絶対。」
族長がかけてもいいですが、と付け加えて言った。
「反対だったら良かったのに。来るのが。」
王女が族長に返す。
「本当です。私だってヴィンセントに守られたかった。」
「・・・」
ーヴィンセントこっちに来なくて正解だよ。
セフィロスに二人を守るように言われたが、あまりに気の抜けた会話に脱力したユフィだった。

Back/Next

一ヶ月の休暇案内版へ