部屋に帰って二人で族長警護の作戦を立て始めようとヴィンセントは思った。
でも帰ったとたんにセフィロスが彼をベッドの上に押し倒して、頬に唇に首筋にキスをし始めた。
「ちょっと!!セフィ」
顔をひきはがして、キスを止めると
「いいじゃないか、取りあえず仕事は終わったんだから。」
少しは甘えさせてくれ、と両腕をヴィンセントの顔の横において彼の唇に深くキスをした。
ーセフィ・・・
リラックスしている表情の彼を見て、少しは許してやるかと思ったヴィンセントだった。
と、その時ふっと部屋の電気が消えた。
ヴィンセントはちょっとびっくりしたが、窓の外を見ると街灯に明かりがついている。
「セフィ、変だ。」
ヴィンセントはセフィロスの肩をつかんで、口元に囁いた。
二人とも武器をすぐに確かめて、立ち上がる。
「私は取りあえず執務室に行く。」
「俺はやつの寝室に行ってみるから。」
二手に分かれて部屋を出た。


セフィロスは階段を上がって執務室のちょうど真上の部屋に急いでやってきた。
ドアノブを回すと鍵がかかっている。
「おい、エロ親父。大丈夫か?」
ドアを叩きながら大きい声を出すとドアが開いた。
「君、そんな大きい声でエロエロ言うんじゃありませんよ。」
寝ていたわけではないらしく動きは機敏だった。
と、その時キラリと彼の後ろに光るものを見てセフィロスはドアを大きく開け、族長を背にかばうと正宗を大きく抜いた。
「銀時計ですよ。」
族長が言ってセフィロスはちょっと安心した。
「宮殿でもよく停電するのか。」
セフィロスが聞く。
「いえ、停電しても自家発電があるので暫くは大丈夫なはずです。だからこの停電は」
意図的なものですな、と族長自ら認めた。
「お前、自分を狙っていると思うか。」
セフィロスが聞くと、この場所ではそれ以外は考えられません、と返ってきた。
セフィロスは族長に、俺から離れるなよ、と声をかけてツォンから預かっている(?)PCを渡した。
「それ、絶対に落とすなよ。」
抜き身の正宗を微妙に構えながら部屋を観察して、敵がどこから来るか考える。
「ここの宮殿はあの王女のところみたいに隠し扉とかないのか?」
「ないわけではありませんが、あんなに複雑ではないです。」
その言葉を聞いて、ドアを閉めてカチャリと鍵をかけた。
窓に人影が写らないように居場所を部屋の中央へ移動する。
窓をちょっと見ると月が昇っていた。
ー暗殺日和ではないよな。
と言うことは、敵はかなり焦っているってことだ。
「お前運がいいぞ。ちょうど俺とヴィンがいる時に狙われるなんて。」
セフィロスが声をかける。
「命を狙われること事体運がいいとは思えないんですが。」
族長が言い返すと
「自分の今までの行動を思い返して、そういう言葉は言うんだな。」
とセフィロスが言った。
あなたたち二人は見かけよりもきつい性格してますね、と族長が感想を言う。
「きついついでに、お前もうニ度とヴィンに近付くなよ。あいつのこと何にも知らないくせに。」
とセフィロスが言った瞬間に、下の階から窓ガラスの割れる音がした。
「何ですか?」
族長が尋ねる。
セフィロスは黙ってろ、と合図するとそろそろと彼と一緒に窓際へ移動して行った。
族長の執務室へ入ったヴィンセントは微妙に火薬くさい異臭に気付き神経が張り詰めた。
ー爆発物を仕掛けられていたらやばい。
執務室は全体的に見晴しがいいが待人用の天蓋付きのソファと、カーテンの影なら身を隠せると思われた。
取りあえずソファには不審者はいなかったので、その影を利用しながら部屋全体を観察する。
ー銃を使うのはやばいかもしれない。
銃の発火で引火する可能性もあるからだ。
窓を見ると月が出ていた。
ーこっちに有利だな。
ソファから離れて、窓際に移ると人間の体温がカーテンからした。
瞬間、カーテンを引き剥がして中にいる人間を掴むと激しく抵抗された。
うまい具合に壁に押し付けて
「目的はなんだ。」
と聞くと、足蹴りを受けて一瞬ヴィンセントは怯み、その隙に不審者は窓ガラスを割って外へ逃走して行った。
セフィロスが窓から外を伺うと既に逃走した人間はは見えなくなっていた。
ーヴィンはどうしたんだろうな。
心配はさすがにしていなかったが、どこにいるのかは知りたかった。
「ヴィンセントは大丈夫ですか。」
族長がセフィロスの心を先読みするように話し掛ける。
「大丈夫だ。俺より実戦経験はずっとあるしな。」
と答えると、意外です、と呟かれた。
「おっさんいくつだ。」
セフィロスが無遠慮に聞いた。
「48です。」
屈託なく族長が答える。
「ヴィンの方が上だな。」
さり気なくセフィロスが言う言葉に族長はびっくりした。
「だって、彼はあの外見ですよ。」
絶対あり得ない、と言う族長に
「だから、手ぇだすなって言ってるんだよ。事情も知らないのに。」
とセフィロスが乱暴に言い返した。
不審者を追い掛けて窓から宮殿の前庭に着地したヴィンセントは、屋敷の中庭に方へ進んで行った。
ーすぐ門があったのに逃げないということは・・・
きっと目的を達成する迄は屋敷の中にいるつもりということだ。
ーこっちも色々聞きたいことがあるから、好都合だな。
侵入者が一人とは絶対思えなかったので、周囲に気をつけながら人影を追っていった。
と・・・中庭に出てきていた。
ざっと見た中庭の造りは王女の宮殿と大して変わらなかった。
中央に噴水、庭の周りには回廊がとりまいてあり周りは樹木と草木がきれいに植わっている。規模としては王女のところよりも2〜3倍大きい。
瞬間、目の端にヴィンセントは追っていた不審者が二階の窓からまた屋敷内に入ろうとしているのを見つけ、足に当たるように発砲した。
と、背後に気配を感じて銃をホルスターに入れ、振り向くと人影が今にも襲いかかろうとしている。
相手の肩を押してバランスを崩し、足を引っ掛けてブリサドを頭に落とした。
先程足を銃で打った人間は二階から落ちて昏倒している。
すぐ側にある木に背中を預けて、まだ消えない気配から何人いるかあたりをつけようとする。
ー王女のパティオよりも面積が広いだけやっかいだな。
全体の大きさがまだ分からないので噴水からの距離で予想をする。
目の端に屋敷に入ろうとしている人影を見つけ、また銃で足を打って落とした。
その後に真横からねらいを付けている男に気付き、そいつにも発砲する。
同時に正面から来た人間に蹴りを食らわせ気絶させた。
ー5人・・・
まだいる気がした。
ーそういや、夕食食べたっけ。
ちょっと息切れして何となく腹が減った気がしたヴィンセントだった。
ー時間的に食べても良かったよな。っていうかセフィが変なことするからタイミング逃したような気が・・・
絶対今度飯おごらせる!と思った瞬間に、3人3方向から発砲してきた。
素早く場所を移動して噴水の方へ逃げる。
ーせめて何人いるかだけは知りたいな。
発砲してきた3人のうち、一番早くヴィンセントに追い付いたと思われる人間に彼はスロウをかけた。
その後残りの二人に発砲する。
まだ人間はいると思われたが、8人を相手に無傷な彼を見て多少慎重になった様だ。
スロウをかけた相手に近付いて、ヴィンセントは襟元を掴んだ。
「何人で侵入したんだ。」
相手を睨み付け、銃を相手の顎の下に当てようとした瞬間に右の方に気配を感じて発砲した。
チャッとリロードする。
「できるだけ話を聞きたいから生かしておこうと思っているんだが、話す気がないんなら一人ぐらい・・・」
表情に凄みが増して今にも相手の顔に発砲しそうな勢いだった。
「さ・・・30人程だ・・・」
答えた相手に、ありがとよ、と膝蹴りをして気絶させた。
ー9人はここで倒したからあと20人程度・・・
ヴィンセントは人数をセフィロスに連絡して、一人まんまと侵入した人間を追って、屋敷内へ入って行った。

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