砂漠の真ん中にぽつんとある別荘に船影がかかっていきなり薄暗くなったので、エアリスは別荘を出てみた。
ーあっ、もしかして増援の船?
「ユフィ!来て。」
屋敷を出ると戦闘部隊が次々と船から降りてきていた。
「エアリス、久しぶりだな。」
シドが船から降りてきてでっかい声で挨拶した。
「シドも元気そー!!シエラと結婚したんだって!」
エアリスも負けずに大声を出した。
お前まで知ってんのかよ・・・、と照れながらシドが言うと、
「これがミッドガルの普通レベルの人か・・・」
とユフィが隣で呟いた。
かっこいいじゃン、オヤジにしては、とユフィがエアリスに言うのを聞いて、こいつ誰?とシドが指差す。
「えーと、ウータイのお姫さまです。」
ユフィの発言に気を使いながら、シドに紹介した。
「宜しく頼むぜ。お姫さまってよりは近所の悪ガキっぽいなお前。」
ニカッと笑って、シドはユフィの背中を軽く小突いた。
「あんたこそ、パイロットって言うよりは近所の八百屋のおっさんみたいだよ!」
言い返すユフィに、言うなあお前!、とがしがしユフィの頭を撫でるシドであった。
ー取りあえず気が合いそうで良かった・・・
エアリスがほっとしていると、シャルアが走って来た。
「この騒ぎはどうしたんだい?」
エアリスとユフィの顏をかわるがわる見て訳が分からない、という感じの彼女。
「私から事情はお話します。」
とエアリスがシャルアの質問を引き取って、ユフィ戦闘部隊の人と飛行船の乗務員達に屋敷の説明をお願い、と指示を出した。



ところ替わってセフィロスサイド。
市街地で会った兵士達を尾行して宮殿らしきところにはついたのだが、
ーここは合っているのか?
とちょっと不安になっていた。
1階の兵士の詰め所からまんまと上の方へ登って、どこまでも続く廊下のある場所に出たのだが。
ーっていうか、宮殿事体が合っていてもこんなに広いと族長の部屋を探すのが大変だ。
だから、ヴィンが自分が行くって言ってたのか・・・。
ギブアップかなぁ・・・と思った瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「だからあなたはだめなのよ。お父様にはっきり言ってやんないと。」
「そうは言っても王女様。族長様も色々御考えがあるのですから、お仕事の邪魔をされては・・・」
ーヴィンに惚れてる変な王女だ。
普通だったら無視して通り過ぎるところだったが、渡りに船だ。
廊下をずんずんこっちの方へ来るのをタイミングよく目を合わせた。
「あら、あんたセフィロス。」
相変わらず生意気な物言いだ。
「最近見ないと思ったらどこほっつき歩いてたの。」
セフィロスと王女は30cm以上の身長差がある。
長身の彼に向かって威張っている態度は普通だったらギャグになると思うのだが、さすが王族、なかなか様になっていた。
「お前の親父の部屋を教えろ。」
「それが人にものを頼む態度かしら。」
お付きの侍女は事情が分からずにおろおろしている。
「もしかしてあんた迷ってるの?」
彼女が面白そうな感じで調子に乗りそうだったので、
「お前が黙ってると、ヴィンがここに入れないんだよ。戒厳令敷いてるだろ。」
と本題をストレートに言った。
王女の顔が、ぱっと明るくなる。
「そんなことなら私が迎えに行ってあげるわよ。」
仮にも最大部族の王女だし、私が一緒ならフリーパスよ!と言ってどこの門のあたりにいるの?と聞いてくる。
「北門。」
「お父様は突き当たりの部屋よ。じゃ、私ヴィンセントをすぐ迎えに行くわ。」
お父様からおいしいヴィンセント情報もゲットしたのよ、と侍女にキャッキャと話し掛けつつ去って行く王女の様子を思わず無言で見送ってしまったセフィロスだった。
ーエロ親父からおいしいヴィン情報って一体・・・?っていうか、ヴィンごめん。
確かあの女が苦手だと言ってたよなと思いつつ、連絡だけはしておこうとコントローラで内容を送った。
族長の執務室でセフィロスが待っていると15時頃ヴィンセントが入って来た。
思わず立ち上がってヴィンセントの方へ寄って行く。
彼はセフィロスの顔を見て
「セフィなら何とかすると思ってたよ。」
とちょっと微笑んだ。
ーいや、かなり危なかったんだよな。
何か言い返そうと思ってヴィンセントの手許が目に入った。
ー・・・猫だ。
思わず何でこいつがいるんだ、と言いそうになったセフィロスに
「取りあえずぬいぐるみとして通すことにするから。」
とヴィンセントが耳打ちした。
ー大の男がぬいぐるみ・・・
ちょっと脱力したセフィロスだったが、
「言い訳は考えてあるんだろうな。」
とちらっとヴィンセントを見る。
「もちろん。」
と答えて、近くのソファに座った。ケットも隣にぽん、と置く。
ーはぁ〜、せっかくヴィンと二人っきりのチームになったと思ったら、即行おじゃま虫かよ。
ちらっと、ケットに鋭い視線を投げてセフィロスはヴィンセントの隣に座った。
「お前、わざとそれ持ってきたんじゃないだろうな。」
セフィロスがヴィンセントに小声で言う。
「今日の朝、飛んで来たんだ。」
「??」
訳が分からないヴィンセントの受け答えに黙るセフィロスの表情を見て、ヴィンセントは思わずくすくす笑い出した。
「何でそんな笑うんだよ。」
ちょっとふて腐れた感じのセフィロスを見て、
「ごめんセフィ、後でゆっくり話すよ。ところで族長はいつ頃来るんだ?」
と優しく言った。
16時頃になるかな、とセフィロスが答えてじゃあしばらく休めるな、と会話が続く。
執務室は近代的な造りになっていた。真ん中に大きなマホガニー製と思われる大きなデスクが置かれ、その正面に皮張りのソファが置いてある。デスクの主の椅子はやはり皮張りでリクライニングチェアになっており、その後ろには本棚に書物がぎっしりつまっていた。
デスクからちょっと離れた所にもソファとテーブルが別途置いてあり、こちらはデスクで向かい合うよりもいくぶんリラックスできるベージュの風合いになっている。
その応接セットの向いに大きな窓があり、そこからは門へ続く庭の様子が見えた。
そして、入り口からすぐの場所にもベルベット地のソファが置いてあった。こちらは面会待ちの人用と見られ、執務室全体が見られないようにソファの上には天蓋がついている。中に座っている人間も外からは見にくくなるように布が垂れ下がっていた。
ヴィンセントとセフィロスは応接セットのソファに座って話をしていた。
ケットシーは今はぬいぐるみ役なので黙ってじっと周りを観察している。
ーヴィンセントはんとセフィロスはん仲いいんやな。わて賭けに負けるかもしれん・・・(涙)
ってケットさんそれ以外にも観察することあるでしょうが!
ちょっと夕方近く日が傾いて来た頃、族長が奥の扉から入って来て2人は席を立って挨拶した。

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