まだ眠かったのだが、水音が耳についてぼんやりと目がおきた。
朝霧がぼおっと周りを囲んでいて、水音がどこから来るのかセフィロスは眠い目を閉じかけながら見回した。
ー泉ってすぐそこだったよな。
ちょっとおっくうだったが、体をごろりと泉の方へゆっくり向けるとヴィンセントが水浴びをしていた。
といってもオアシスの貴重な水に体を全部浸すのは、砂漠のルール違反なので服を脱いで泉から水を身体にかけている程度だったが。
セフィロスは思わず目をつぶった。
ー多分全裸を見たら、俺我慢できない気がする。
でもよく考えてみたら、何の為に我慢するんだ?と寝ぼけた頭で自問自答してやっぱり見ることにしたセフィロスであった。
ヴィンセントは上半身だけ服を脱いで髪を濡らしていた。暖炉の捜索でほこりと灰だらけになった髪だ。
気持ちよさそうに髪に水をかけて、顔をあげると水しぶきが少し飛んでちょっと上りかけた朝日にきらっと反射した。
スーツのボトムも脱ぐと身体全体に水をかけている。
セフィロスはもちろん、何も着ていない身体にも興味はあったのだが、水をかける時のヴィンセントの表情に思わず見とれていた。
特に何をするというわけでもないのだが、身体に水をかける時に伏し目がちになって見える長い睫毛とか、泉の水滴でぬれている白い肌、濡れて身体にちょっとまとわりついている黒髪、時々瞑る目もとと口からでる吐息。
水をかける瞬間の気持ちよさそうな表情。
ー何かヴィンの美人っぷりに惚れ直してるって感じ・・・?
こんなシチュで襲わないで見とれてるって、俺相当重症かも・・・、と思いつつ、しかもこんなにチャンスがあってもヴィンを物にできないって、もしや俺はへたれキャラ?と反省までしてしまったセフィロス。
何かしたいのは山々なのだが、眠いのと、どうも今見ている光景が夢じゃないかという気もして、なぜか身体が動かない。
水音はずっと聞こえてくるものの、とうとう眠気にまけて目を閉じてしまった。
ふっと目がさめると、もう静かになっていて既にヴィンセントが服を着て側に座っていた。
「おはようセフィ。おかげですっきりしたよ。」
朝日をしょって眩しく笑うヴィンセントに、
ー俺は変な妄想から抜けられなくなりそうだよ!ヴィンのせいで!
と心の中で叫んだセフィロスであった。
ユフィは自分の武器を点検していた。
エアリスも持っているマテリアを確認している。
「シャルアさんには何て言うの?」
ユフィが聞いて来たので、
「どうしようかと思ったんだけど、どうなるか分からないから流れに任せようかなって。」
エアリスが答えた。
「あたし何にも言わなくっていいかな。」
とユフィが言うと、
「侍女のかっこのままだったら良かったと思うんだけど・・・」
とエアリスが答えて、
「そのかっこだとちょっと言い訳しなきゃいけないかも。」
ちなみにエアリスは白ワンピのままだ。
ユフィは急いでひらひらの侍女の制服に身を包んだ。
二人とも屋敷の入り口に待機する。
「思ったんだけどさ、セフィロスってちょっとすごいね。」
ユフィがいきなり言って来たので、どうしたの?とエアリスが聞いた。
「この屋敷でさあ、どうやって手がかりを見つけるのかと思ったら来た翌日にはあっという間に状況を変えちゃったし。あの地下室に入ってまずいと思ったら直ぐに指示を出して被害を最小限にするし。」
ああいう人がウータイにいたらすごい助かるのに、と呟く。
ーセフィちゃんすっごい信頼されっぷりだわね。もしやユフィちゃんといい感じに・・・?
まあありえないだろうけど、と思いながらにこにこユフィを見るエアリス。
「エアリス、暖炉を通って来て地下室に来たんだよね。」
「そうだけど?」
ユフィがエアリスのかっこをしげしげと見る。
「白ワンピなのに全然汚れてない・・・」
ーあたしは真っ黒なのに・・・
「あっ、これはヴィンセントが暖炉の中を全部きれいにしてくれてそれから入ったからなのよ。」
全部正直に言ったのだが、それを聞いてユフィがちょっとため息をついた。
「ヴィンセントって女の子にすごい親切だよね。ことばづかいも紳士的だし。ウータイって男尊女卑の傾向が強いから、ヴィンセントに話し掛けられる度に、すごい嬉しいんだけどどう反応していいか困る時も・・・」
ーやっぱりユフィちゃんはヴィンセントが好きなのかしら・・・?
会った時から警戒心が全然無い感じだったし・・・、と思いながらちょっと上の方を向いた。
ーどっちに転んでもユフィちゃんはともかくセフィロスは嫌かもね。
とくすっと笑った。
「あっ、エアリス笑ったね。」
ユフィがめざとく見つける。
「ユフィのことを笑ったんじゃないわよ。ただ、セフィちゃんがね・・・」
きっと色々あるんじゃないかと思うとおかしくってね、と言うエアリスに
「ミッドガルってきっと都会なんだろうね。なんか男の雰囲気が全然ウータイと違うもん。」
ー私は今この国に住んでるんだけどな・・・
と思ったがきっとユフィはミッドガルに行ったことがないのかな、と思ってどう違うの?と聞いた。
「何かセフィロスもヴィンセントもあり得ないくらいかっこ良くって、すっごくできるからさあ。」
あの二人は特別よ、とエアリスが言って
「ミッドガルにもいろんな人がいるから、きっと行ってみるとウータイと変わらないかもよ。」
あっ、でもショッピングとかは楽しめるかも、と言って、今度平和になったら一緒に行こうねとエアリスが笑った。
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