「情報をプロテクトして、電源を切る?」
ヴィンセントとエアリスは通信内容を見て二人で考え込んでしまった。
「ええと、エアリスできるか?」
エアリスの手には王女から貸してもらったPCがある。
「・・・ヴィンセントは?」
私にできるはずがないだろう、機械に弱いのに、と言ってさっさとヴィンセントはセフィロスに返信した。
ーー二人とも無理!!ーー(笑)
「きっとセフィちゃんに散々に言われるね。」
エアリスが取りあえずは手持ちのPCを起動してみた。
「まあ、しょうがない。こっちでできることをやろう。」
セフィのことだから多分こっちに来るよ、と言ってヴィンセントはだだもれに流れている通信内容を熟読していた。
ーしっかし、何も送ってないのに何でこんなに情報が流れてくるんだ。
ヴィンセントは情報を読みながら、きっとこの件は某国だけでなくて背後に何かあるんじゃないかと思い始めてきた。
ー一国の問題にしてはちょっとこの内容は大きすぎるよな。情報の引き出し制限もしてないなんてここにある情報は大したことじゃないってことか?
まあ、今考えることじゃないな、と思ってエアリスに指示を出した。
「リーブに連絡して、戦闘部隊を送ってくれと言ってくれ。この別荘に直接降ろしてここの情報を守るために。」
「何か来るの?」
エアリスが通信文を送りながら聞く。
「多分。この別荘に不審者がいるのがばれている節がある。1〜2日後にはきっとこの施設を破壊する目的で人が派遣されそうだ。」
ーあとは、この件に関わっていた人間を消そうとしていそうだが・・・
ヴィンセントはそのリストらしき連絡文に族長の名前が載っているのを見つけた。
ーさすがに、あの人が殺されたらこの国はまずいだろう。
っていうか思ったよりもあの人はたぬきだな、と思ってエアリスに言う。
「あと、族長が暗殺されそうだから一時的に護衛に行くとリーブに送っといてくれ。」
エアリスが、えっ、という顔をした。
「あの族長は正義面をしているけど、多分この施設を建設した当初は、かなり関わっていたっぽいぞ。」
ここの土地もカンディフ族の管轄だしな、とヴィンセントが言って、一通り通信文を読み終わったようだった。
リーブにメールを送り終わって、エアリスが端末の人名リストを見ていると、セフィロスが息を切らせて到着した。
「セフィ。」
ヴィンセントが声をかける。
セフィロスが端末の方に行く途中でヴィンセントの肩に手をかけた。
「ヴィン、今度コンピュータのこと手取り足取りじっくり教えてやる。」
息を切らせなが言うセフィロスに、
「あ、ありがとう・・・?」
とヴィンセントが微妙な表情でお礼を言った。
えーセフィちゃん私はー、と突っ込むエアリスには
「お前は当然有料だ。」
と言い切って、端末でストレージ内の様子を簡単に調べるとさっき作ったプログラムを流してあっさり電源を切った。


地下の怪しい施設から出て、別荘のホールへ4人は集まった。
「多分、ぐずぐずしているとこの別荘を破壊する為に戦闘部隊が来ると思う。」
ヴィンセントが通信内容をかいつまんで話して、状況を説明した。
「あと、カンディフ族の族長以下この兵器製造等関連業務に関わった主要な人物を、消そうともしている。」
恐らく、この国を兵器の輸出、製造、研究拠点として放棄するんじゃないか、とヴィンセントが予想を話した。
「チームを二つにわけるぞ。」
セフィロスが言った。
「族長警護組と別荘に待機組だ。」
シャルアさんは?と聞くエアリスに、彼女は残ってもらった方がいいだろう、とセフィロスが答えた。
「族長組は俺とヴィン、待機組はエアリスとユフィな。」
ユフィ、コンピュータがおかしくなったらお前頼むぞ、とセフィロスは声をかけた。
「エアリス、気を付けて。」
ヴィンセントが彼女の頬に軽くキスして、離れる。
何となくセフィロスの鋭い視線を感じたエアリスだったが、二人とも飛行船から着陸した時の例のボードですぐに砂漠を一直線に去って行った。
「は〜エアリス大変じゃない?」
ユフィが話し掛ける。
「何が?」
「セフィロスの鋭い視線!」
私の見立てでは絶対にヴィンセントはエアリスが好きと見た!、とユフィが断言した。
「それはないよ〜。だってヴィンセントはルクレツィアさんが好きなんだもん。」
誰それ?とユフィが聞いてくるのを、私からは教えられないな〜とエアリスが笑った。
エアリスからのメールを受けてリーブは忙しく準備を始めた。
一番早く実行部隊を送れるのは飛行船だ。
飛行部隊に連絡をとって某国行きを打診すると、お誂え向きにシドが空いていた。
「任せておけって。」
威勢よくシドが飛行準備を始め、リーブは実行部隊の中で体の空いている人の選定を始めた。
ーこんな時ザックスが空いているとすごく頼れるのですが。
残念ながら彼は今ウータイへ出張中だ。
実行部隊のNo.3が空いていたので連絡をとって、彼に小規模な部隊編成を用意させた。
ー別荘の規模から言って30人以下でいけるはずです。
エアリスもいることですし、とちょっと不安になって来た所にシドが来た。
「お前、ケットシーを船にのせるだろ。もう用意できたからな。」
そうだ、そうですね、とすっかり忘れていたように独り言を言って、リーブはデブモーグリも乗せられますか?と聞いて来た。
「冗談きついよ、リーブ。猫の分しか場所はないぜ。」
残念です、とにっこり笑ってリーブが答えた。
「あのさ、セフィ。」
ボードに乗りながらヴィンセントが話し掛けた。
「もしかして、休み無しで進み続ける気か?」
出発したのは19時。今の時刻はもうすぐ0時になる。
「何だ、休みたいのか。」
「お前みたいに体力だるまじゃないんだよ。」
「だっこしてやろうか。」
「・・・」
「別にこんな砂漠誰も見てないぞ。」
「・・・がんばるから・・・いい。」
ヴィンセントにとってかなり嫌な提案だったらしく、ぷいっと顔をセフィロスからそらせてしまった。
ー以外と大人気ないとこもあるんだな。
例のコントローラを地図モードにして見ると、行きに休んだ竹林のオアシスが近かったので、5分くらいしたら休むぞ、と声をかけた。
「どうも。」
やっぱり機嫌が直っていない感じのヴィンセントだった。
オアシスについたヴィンセントは
「ちょっと足を冷やしてくる。」
と言って泉の方へ行った。
セフィロスも喉が乾いたので同じ方向へ行く。
昨日の雨はどこへやら、満天の星空のなかで泉の水と隣には竹林がこんもりと茂って時節さわさわと葉ずれの音を聞かせていた。
「昨日のブランデーがやっと抜けて来た感じなんだ。」
ヴィンセントがセフィロスに話し掛けた。
目を閉じてちょっと眉を寄せて仰向けになるヴィンセント。
ちょっと息をつくと、ぽん、と冷たいタオルを目と額の辺りにのせられた。
ひやりとした温度が気持ちよくて、思わずうとうとする。
「気持ちいいか。」
とセフィロスが聞いてくると、かすかにうなずいた。
ー今日はここで休むか。
ぐったりとして眠っているヴィンセントの横で、セフィロスは今までの情報を整理し始めた。

1.某国で化学兵器を製造した形跡の証拠を俺達はまだ見つけていない。
2.宝条が遺伝子操作をしたモンスターを作っていた証拠は見つけた。
3.某国の最大部族の族長が訳の分からない組織に命を狙われている。また、某国の政治的に重要と思われる人物もかなりの数が命を狙われている。
4.不審者が侵入したという情報のおかげで俺達が調査した別荘が訳の分からない組織の人間によって破壊されそうだ。

ーはっきりした情報はこれだけか・・・
と思って、今日急いでコピーした『chemical weapon』のファイルを思い出した。
試しに開いてみると、
ーこれはちょっと・・・・
意味不明の記号が並んでいて多分、なんとか暗号化を解くか、さっきの別荘のコンピュータで開くかしないとうまく読めない気がした。
ーヴィンには聞けないしな。
セフィロスは取りあえずリーブにメールして状況を伝えた。

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