「ヴィンセント、おはよう。」
ソファベッドで眠りこけるヴィンセントにエアリスが声をかける。
「あっ、おはよう・・・」
と起き上がろうとするが、頭がガンガンして突っ伏した。
「どうしたの?」
「ひどい二日酔いだ・・・」
エアリスはソファの前にある3〜4本あるブランデーのボトルを見て、なるほどと思った。
「セフィロスは?」
ヴィンセントが聞いてくるのを、あの人は元気に朝食を食べて又屋敷の中をうろつき回ってるわよ、とエアリスが答えた。
「相変わらず体力だるまだな。」
ベッドにうつ伏せて、ヴィンセントが眉をしかめる。
水いる?と言うエアリスに、わずかにうなずくヴィンセントだった。
水筒いっぱいの水に口をつけるヴィンセントの横でエアリスが、机の上のブランデーボトルを検分していた。
「こんなに、どうやって持ってきたの?」
ヴィンセントがキャビネットを指差す。
エアリスは、やだ・・・、とキャビネットを開けてボトルを一つ一つ見ていた。
「これ結構すごいコレクションね。」
「エアリスが酒が分かるなんて意外だ。」
もう私学生じゃありませんから!とふくれるエアリスだったが、氷枕欲しいな・・・と思っているヴィンセントの元にキャビネットからボトルを一本持ってきた。
「なんだ、エアリスも飲みたいのか?」
お願いだから少し離れて飲んでくれよ、と言うヴィンセントに
「昼間っから何言ってるの。このボトルのデザインここ1〜2年の物の気がするんだけど。」
ヴィンセントはエアリスからボトルを渡されて、確かにミッドガルで2年前ボトルデザイン一新で宣伝してたな、と言う顔はちょっと真剣になっていた。
「商品の入手可能性からいっても、2〜3年以内だな。結構新しい証拠が見つかるかもしれないぞ。」
ソファベッドからガバッと起き上がったヴィンセントを見て、エアリス一瞬赤くなって
くるりと後ろを向いた。
「ヴァレンタインさん、身体にキスマークがついてるんですけど。」
真っ赤になって急いでシャツを着たヴィンセントに、昨日何があったんですか?と面白そうに聞くエアリス。
ーセフィ、なにやってんだ!
とまたちょっと怒りぎみのヴァレンタインさんでした。



「お前俺についてくる気か。」
セフィロスが不愛想にユフィに話しかけた。
「うん。だって昨日適当に部屋を回って思ったんだけど、適当に調べても絶対にうまくいかない!」
だから、二人で同じ部屋を回って徹底的に調べてみた方がいいよ、というユフィに、へえ・・・と同意するセフィロス。
「お前賢いな。胸に栄養がいかなかった分か。」
不用意なことを口走り、ユフィに手裏剣を投げられたがあっさり避けた。
「ちっ、次は絶対当ててやる。」
ユフィの一言はおそらくさっきのセフィロスの言葉がかなりきているせいに違いない。(ああ・・・昨日ヴィンに注意されたばっかりなのに。)
俺は絶対無駄な調査はしないからな、と言って廊下をずんずん進んで角の大きい客間部屋へ入って行った。
昨日セフィロスが寝ていた客間とちょうど左右対象にある位置で、対になっている感じがした。
迷わずキャビネットを開けて酒が大量に入っているのを確認する。
「ユフィ、多分ここには隠し扉みたいな物があるはずだ。一生懸命さがしてくれ。」
頼むセフィロスも、怪しそうな壁をとりあえず正宗でたたき始めた。
ーまじで?この人バカか、ほんとに隠し扉を見つけたんだったらすごくない?
と思った跳ねっ返りのユフィだが、気を取り直してとりあえず素直に指示に従った。
一方、ヴィンセントとエアリスの方はソファをひっくり返したりキャビネットの中をごっそり取り出して調べたりとしらみつぶしに部屋の中を漁っていた。
「天井かなぁ・・・」
ヴィンセントがテーブルに乗っても届かないので、エアリスをおんぶして調べてみる。
「何かありそうか?」
「う〜ん。普通の天井に見える・・・」
あとは、暖炉か。とエアリスに暖炉の周りを調べて、と言ってからヴィンセントは中に入って奥の壁を叩いてみた。
コンコン、と響く音がする。
ー響くってことはこの裏に空洞があるってことだな。
ヴィンセントは暖炉を床が見えるように積もっているほこりと灰を手でざっと寄せた。
「エアリス、そこの暖炉の冊とれるか?」
はい、と言って力一杯エアリスが冊を持ち上げる。
無理そうだったので二人でどけて、暖炉の前が広く使えるようにした。
「ほうきとちり取りが欲しいわね。」
エアリスが灰とほこりまみれのヴィンセントを見て言った。
こういうとき魔法でちょいちょいって掃除ができたらいいよな、と言いながらなんとか暖炉の壁と床のつなぎ目のあたりをきれいにした。
「なんかありそう?」
エアリスが覗き込む。
「もうちょっと明かりが欲しいかな・・・」
とヴィンセントが呟くと、はい、とエアリスがペンライトを手渡した。
「お、優秀だな。」
「ヴァレンタイン先生にきっちり教わりましたから。」
優秀な生徒を持って先生は幸せだ、と言いながら暖炉の壁面のつなぎ目を注意深く観察した。壁をちょっと押してみたがびくともしない。
「多分開くな・・・スイッチを探すか壊すか・・・」
ちょっとエアリスさがってて、と声をかけて暖炉を後ずさって中の灰を大部分外に出した。
床を見ると石の蓋らしきものがあり持ち上げると中には何かの起動ボタンと見られる物があった。
ちょっと奥に行って、暖炉の煙突を見上げる。
ーここ2〜3年に放棄したにしては、煤がないな。
何の起動ボタンだろうね〜と話し掛けるエアリスに、
「押してみるか?」
と笑って答えるヴィンセント。
「いいの?」
「怖くなかったらな。」
・・・やめておきます、とエアリスがソファに座った。
とりあえず、ボタンを押してみたが何の反応もない。
ースカかなあ。
エアリスの方を見ると、彼女もいい考えはないようで首を横に振った。
ちょっと疲れたので、ソファの後ろに寄り掛かって床に座る。
早朝に振っていた雨はすっかりあがって、窓からは雲にも遮られないきれいな陽の光が差し込んでした。
「ヴィンセント髪も服もほこりだらけ〜」
エアリスが膝立ちをしてソファの背もたれの方を向き、すぐ下にいるヴィンセントの髪からほこりをとっていた。
「油断するとすぐ頭が痛くなってくるな。」
薬持ってくれば良かった・・・と反省するヴィンセントに
「どうしてそんなに飲んじゃったの?珍しいじゃない。」
とエアリスが聞く。
「そんなに飲んだ気はしなかったのだが・・・グラスをあける側からセフィロスが注ぐんだよ。」
あいつ、確信犯だったのか・・・と思って腹が立つけど騙された私が悪いのか?とまた反省をするヴィンセントだった。
エアリスが熱心に彼の髪のほこりを取っていると、遠くの方で振動音がした。
「ヴィンセント、着信あるよ。」
例の通信機からセフィロスの連絡が入っている。
ーー隠し扉は見つかったかーー
ヴィンセントは一瞬にして頭痛が消えて、今調査した内容をセフィロスに送った。

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