調べた部屋が全部でいくつあったかは忘れる程数を調べたが、廊下の突き当たりの角部屋にやっと辿り着いてヴィンセントはドアを開けた。
「ヴィン、遅かったな。」
中に入るとセフィロスが既に暖炉前のソファに陣取っていた。
片手にブランデーグラスを持っていたが、ボトルを見ると空に近くて大分飲んでいるのが伺えた。
「セフィ、この部屋は調べたのか。」
ヴィンセントがとりあえず聞く。
「ざっくりとはな。もし、信用できないんだったらダブルチェックしてくれ。」
グラスに入っているお酒をちょっと揺らせてセフィロスが答えた。
セフィロスは酒に強い。ヴィンセントも知っているのだが、蒸留酒を一本開けてもけろりとしているのが普通だ。
ーでも今日はなんだか飲み過ぎてる感じがするな。
ヴィンセントは部屋の調査をしようかと思ったが、もう午前3時だし明日でも変わらないだろうと思って、セフィロスに話しかけた。
「そのボトルどこから持ってきたんだ。」
セフィロスが部屋に置いてあるキャビネットを指差した。
「そこに置いてあった。」
何年前のか分からないのに大丈夫なのか?と呆れるヴィンセントに、結構うまいぞ、と返事がかえってくる。
「どれ?」
ヴィンセントがセフィロスのグラスをとって香りをかぐ。
ちょっとなめてみて
「いけるかもな。」
と隣に座った。
まだいっぱいあったぞ、とセフィロスが席を立ってキャビネットを開けると高級ブランデーのオンパレードのラインナップが飾ってあった。
「これを集めた人は味わえなくて、気の毒だったな。」
セフィロスはにやっと笑って新しいボトルとグラスを取り出すと、自分の分をついで、ヴィンセントが飲み終わったのを見て彼のも同じようにブランデーを注いだ。
二人ともソファに寄り掛かりながらブランデーを飲んでいる。
「セフィ、眠くないのか。」
ヴィンセントが話し掛ける。
「・・・少しは寝た。」
私はちょっと疲れてるかな・・・とヴィンセントが言って、ソファのひじ掛けの方へ身体を寄せると楽な姿勢をとった。
いつもだったら、こういう場面では仕事の話をしそうな二人なのだが、疲れているせいかどちらからも口を開かなかった。
ちょっと沈黙が続いて、ヴィンセントがうとうとしてきた時、はっと目を開けると目の前にセフィロスの顔があった。
「!!」
びっくりして後ずさると、
「ヴィン、雨が降ってる。」
と言う。
窓を見ると水滴が窓ガラスについて結構な雨足に見えた。
「ほんとだ・・・砂漠に珍しいな。」
眠りかけていた目を起こすためにちょっと頭を振った。
「・・・あのさ」
セフィロスが言いにくそうな感じで話し掛ける。
「なんだ。」
窓の水滴をずっと見ているとまた眠りそうになって、ちょっと目をこする。
「ヴィンセントはエアリスが好きなのか?」
「は?」
思わず目が起きてしまった。
「いや、何で今さらそんなこと聞くんだ?」
だって、昨日結婚したいって言ってたじゃないかとセフィロスが強い語調で言う。
「あれか?っていうか私は即答で断られたじゃないか。」
セフィがそんなに気にするとは思わなかった、あれは冗談だよ、とヴィンセントが笑う。
「っていうか、ヴィンはああいう気の強い女が好みなのか。俺はちょっと苦手だけど。」
とセフィロスが続けた。
「今はちょっと気が強いけど、会ったばっかりの頃はエアリスは結構可愛かったんだぞ。」
学生の頃、アルバイトとインターンで来てた時から私と組んでたからな、とヴィンセントが言った。
へえ、とセフィロスがあいづちを打ち、インターンなんて実行部隊にはない、と返す。
「実行部隊にあったら、危ないだろ。」
とヴィンセントが笑って答えた。
ヴィンは苦手なタイプとかないのか、とセフィロスに聞かれて、
「私が苦手なのは、う〜んあの王女様はちょっと・・・」
ああ、ヴィンセントが親子揃って嫌がってる、とセフィロスがふふん、と笑った。
「ああいう奴らは実力行使で言うことを聞かせればいいんだよ。」
それができれば・・・とヴィンセントが言い返す。
ああいう思い込みが激しくて、権力ふりかざす人間って苦手なんだよなぁ・・・と呟いた。
「セフィロスは以外とユフィなんかと気があうんじゃないか?」
とヴィンセントが言うと、
「あんな、子供の相手しても面白くないぞ。」
と即答した。
でも、確かユフィと王女は同い年じゃ・・・とヴィンセントが言いかけ、まじで?あいつ胸が全然無いから幼く見えるのか、とセフィロスが思わず呟いた。
「セフィロス、それユフィの前で絶対言うなよ。」
と言いつつもヴィンセントの目も笑っている。(ひどい男達だ・・・by筆者)
胸があるって言ってもティファは大きすぎるよなぁ・・・としゃべるのを聞いて、ヴィンセントがそう言えばお前の所の実行部隊の人間はどうなんだ?と話を変える。
女は皆筋肉だるま見たいのが多いからなあ・・・ザックスとクラウドなんかはいい男に入るんじゃないのか、とコメントする。
「ザックスは見たことあるな。セフィロスの次にできるんじゃないか。」
ヴィンセントが顔を思い出しながらちょっと眠そうにあくびをした。
「あいつは結構しっかりしてるな。後ろを任せられる。クラウドはからかうと面白いぞ。」
すぐムキになるからな、というセフィロスの言葉を聞きながらヴィンセントは目を閉じて、ソファの背に寄り掛かった。
イファルナさんなんか性格的には理想だよなぁ・・・とセフィロスが言うのがふわりと聞こえてきたのが分かり、
「じゃあ、セフィの好みはやっぱりエアリスなんじゃないか?」
と親子だぞ、と眠りかけながらヴィンセントが言う。
「好みの理想はここにいるからいい。」
目を閉じているヴィンセントは分からなかったが、セフィロスがすぐ脇まで来て頭を抱き寄せた。
「でも、男って言うのがネックなんだよなぁ。」
それは悪かったな・・・とぼんやりと答える。
もう明け方近くになる時間と思われるが、雨雲が晴れず外は薄暗いままだ。
窓に新しい水滴がついていないので、雨はあがったのかもしれない。
「俺は別に関係ないけど、お前がな・・・」
絶対それが原因で吹っ切れない気が・・・と呟くのを聞いてか聞かずか、
「私が女だったらどうしてたんだ?」
と頭を持たせかけて聞いてくる。
やることは変わらないな、と独り言のように言って、ちらりと彼の顔を見て、セフィロスはヴィンセントのシャツのボタンを静かにはずし始めた。
ヴィンセントは眠りかけで気付かないようだ。
セフィロスの手が上半身を優しく愛撫し、胸の先に生暖かい舌の感触を感じてヴィンセントは一瞬ビクッとしたが、
「セフィ・・・もうだめ・・・眠い・・・」
と呟くように言って、彼の頭がするりとセフィロスの膝の上に落ちていった。
ー・・・こいつ時々無邪気だか何だかわかんないよなぁ。
なんとなくやる気を(?)そがれた感じで、俺も一眠りするか、とセフィロスはソファの背に体重をのしかけると、背がカクッと動いたので、
ーこれソファベッドだったのか。
と背を倒した。
自分の膝にある彼の頭をそおっと腕に移動させる。
脱がせたシャツをヴィンセントにかけて軽くキスすると、セフィロスは彼の横に寄り添って目を閉じた。
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