次の日は地図を見ると砂漠を一直線に横切るコースだった。
こんな道路もない所では、方角を指し示すコンパスだけ道があっていると告げてくれる。
シャルアは手慣れた感じで車を運転して行き、金持ちを演じる三人は何となく話題がない感じで黙っていた。
「あのさ、エアリス。」
ヴィンセントが突然沈黙を破る。
「なに。」
「今これと言って特定の付き合っている人とかいないんだったら、結婚候補に私も入れておいて欲しいんだが。」
脈絡なくさらりと言う彼に、はあ?いきなり何よ、とエアリスが聞き返し、ちょっとヴィンいきなり何言い出すんだよ、とセフィロスが立ち上がる。
「だめだったらいいんだが。」
お断りします、とエアリスが訳も聞かずに言うのをほっとしてセフィロスが聞いて座った。
「でも、いきなりどうしちゃったの?ヴィンセントらしくない。」
エアリスがヴィンセントに話し掛ける。
「いや、結婚する予定があると言えば男から言い寄られることがなくなるかと。」
一番身近なエアリスに頼んでみた、と答えると、ヴィンセントさいてー!!結婚は乙女の夢なのよ!とエアリスが怒鳴り付け、運転席でシャルアとユフィがこらえきれずに爆笑していた。
「ヴィンセント、男からなんだ!女じゃなくって!」
ユフィが笑いながら返す。
「より迷惑なのは男の方だからな。」
エアリスから断わられても気にしない様子で、ヴィンセントが答える。
シャルアは大受けしたらしく、いきなりジープのスピードがあがった。
「あなたたち、本当に変な外国人ね。今までこんな人たちに会ったことなかったよ。」
サービスで今日中にはつくようにがんばって運転します!と彼女はさらにスピードをあげた。
ジープは結構なスピードを出しているらしく後ろを見るともくもくと砂煙りをあげていた。
っと、上空の方で轟音が聞こえてくる。
「ちょっと車止めて!」
シャルアがびっくりして急停止すると、ヴィンセントはジープが止まったとたんに降りて、上を見上げた。
ー飛行船?ヘリじゃないな。かなり船隊を組んでいるかもしれない。
ヴィンセントが目と耳を澄ませて方向を見極める。
「どこに向かっているんだ?」
ヴィンセントの視線の先を見て、続いて車を降りたセフィロスが言った。
「あんた達、別荘の買い付けに来たんじゃなかったのかい?」
シャルアに言われて二人ともはっと今の状況を思い出す。
「彼は飛行船恐怖症なんだ。」
セフィロスがヴィンセントの両肩を抱いて言ったので、ヴィンセントは調子を合わせるように青白い顔で気持ち悪そうな表情をした。
「ふうん」
と彼女が疑わしそうに二人を見たが、目的地はもうすぐだから、と車に乗れと指示した。
飛行船恐怖症と言った手前ヴィンセントは車に乗った後も、セフィロスに寄り掛かって気持ち悪そうな振りをしていた。
ーあの飛行船、どこに行く予定だったんだろう・・・方向から言って首都の方とも思えるが。
でも、あっちの方にはセフィロスが印を付けた妙な立地の別荘も3軒程ある。
ー確かセフィロスはあっちの方向の別荘には丸印を付けていた気が・・・っていうかこの国の飛行船じゃないよな。外国のものだとしたらどうして飛行規制をしているこの国の中をあんな堂々と通っているんだ。
物思いにふけっているヴィンセントに、
「大丈夫か?」
セフィロスが声をかけた。
「ああ、まだちょっと・・・」
と答えるヴィンセントに、すまないがちょっと車を止めて休ませてくれないか、とセフィロスが頼んだ。
ちょうど、近くに竹林のあるオアシスが見えてきたのでシャルアはその一角に車を止める。
「気分が直ったら早めに教えて下さい。」
彼女の言葉にセフィロスはうなずいて、ヴィンセントと一緒に竹林の方へ消えて行った。
エアリスとユフィはオアシスの水場でジープに乗りっぱなしだった身体を休ませていた。
「あの二人はどう言う関係なの?」
とシャルアがエアリスに話し掛ける。
「まあ・・・見たまんまなんですけどね。」
エアリスが答えに、興味深そうに竹林の方をシャルアは見ていた。


竹林の大分奥に入って、多分ここなら誰にも見られないという場所でヴィンセントが話し始めた。
「あの飛行船、怪しくないか。」
「某国内をあまりにも堂々と飛行してるな。」
セフィロスが答える。
「この国、確か国内線とかなかっただろ。一般の航空機の飛行は制限されているはずだし・・・軍関連か?」
ちょっと状況が読めないな、とヴィンセントが言った、
でも、それとおれたちの調査と何の関係が・・・と一瞬思ったセフィロスだったが、良く考えてみたら、兵器の製造を調査している自分達だ。
国内には科学技術がないのにどうやって最新兵器を作るのかと考えれば、外国から人が来て土地を借りて製造していると考えるのが一番手っ取り早い方法と思われる。
「あれだな、もしかしたらおれたちの調査に関係のある飛行船かもしれないな。」
「目指していたのは反対方向だったが。」
ヴィンセントが言って、その後、私はいつまで気持ち悪い振りをしていればいいんだ?と聞いてくるので、今日はずっと俺に寄り掛かっていろ、とセフィロスが言った。
シャルアが急いでくれたおかげでその日の夜には目的地についた。
「なんで近くに建物があるのにそこに泊まらないんだ。」
テントを張っているシャルアに、セフィロスが聞いてくる。
「古い建物には何がいるか分からないから、用心の為だ。」
彼女が答えて絶対私がいいと言う迄は建物に入るなよ、と念を押した。
「そういえば、この辺はカンディフの市長の管轄になるって聞いたんですけど、どうしてですか?」
シャルアを手伝いながらヴィンセントが聞いてきた。
「地理的に大分遠いからってこと?」
ヴィンセントが頷く。
「もともとカンディフ族の影響下にあった地域を全部市長へ移管しているんだ。」
シャルアが答えた。
「だから、市長といってもやっているのは結構この国全部の地域にまたがっているかもな。」
「ヴィン、市長にでも会ったのか?」
セフィロスが口を挟んできた。
「以外にも、市庁舎へ行ったらすぐに面会できた。」
怪しい外国人なのに、とヴィンセントが答える。
「どんなやつだったんだ?」
「・・・まあ、何というか・・・」
「みかけは10代になったかという感じの少女だよ。」
言葉を選んでいたヴィンセントに、シャルアが先に口を開いた。
「シェルク・ルーイ市長、私の妹だ。あれでももう成人している。」
「見た目がガキと、エロ親父が実験を握る国かよ。」
セフィロスの言葉に、まあ言われてみれば・・・とシャルアが楽しそうに笑った。
賑やかな食事が終わり、テントの中でユフィとエアリス、シャルアが静かに眠ろうとしていた。
というのは嘘で、女三人皆一点の疑問で目が冴えて眠れなかったのである。
ーあの二人、竹林で何してたんだろうね。
エアリスがひそひそ声でユフィに話し掛ける。
ーセフィロスがヴィンセントに気分が悪いのをいいことに迫ってたとか・・・
二人の絡みを実際見ると引くくせに、想像力は豊かなユフィである。
ー答えたくなかったらいいんだけど、貴女達三人ってどんな関係なの?
シャルアが質問してくる。
ーセフィロスと私は従兄弟、ヴィンセントは友達です。
この作戦を実行する前に一番自然な関係を三人で考えたのだ。
ーで、セフィロスはお友達のヴィンセントに迫ってると。
ーそうです。
ーそうしたら、あの向こうのテント二人っきりでヴィンセントは危なくないか?
あっ・・・エアリスとユフィが目を見合わせる。
ーちょっと様子を見てこようか。
エアリスが起きだし、やっぱり一人は怖いから二人ともついてきて〜と声をかけた。
星と月が出ているので明るくてきれいな夜だった。
砂漠の砂がすっかり冷たくなって、ひんやりと気持ちいい。
「どうしよう、最中だったら。」
二人のテントは探すまでもなくすぐ隣にあるのだが、エアリスとしては濡れ場に侵入する勇気はさらさら無かった。
「お互い合意だったら邪魔する必要もないのでは。」
シャルアが言うと、
「それだけは、ありえないから・・・」
とエアリスが落ち込んだ感じで答えた。
「・・・」
ユフィはもちろんコメント不可だ。
テントにちょっと耳をあてて何も聞こえないのを確認してから、エアリスは
「ねえ、あけるわよ。」
と声をかけてテントの中を見た。
「なんだよ、お前ものぞきか。」
「お前もって、何よ。」
ちょっと安心してエアリスはセフィロスに高圧的に話し掛けた。
「セフィちゃんヴィンセント居ないみたいだけど。」
「あいつは俺が寝付くまで帰ってこないそうだ。」
ーやだ、ヴィンセント大変・・・
エアリスは思わず同情した。
「昨日ヴィンセントに変なことしたんでしょう。」
エアリスがあきれぎみに言う。
セフィロスは、クッと笑って
「昨日はかなり怒ってたかもな。」
と答える。
とりあえずヴィンセント探してくる、とエアリスは二人はテントに帰ってていいわと言った。

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