さて、本題に入ろうかと族長が屋根に腰を降ろした。
セフィロスが昼間に二人に話した国境ぞいの別荘の話をして心当たりが無いかを聞く。
「心当たりが無いことも無いが・・・ちなみに場所はどのへんなのかな。」
族長が尋ねるのに、あの写真を見せてもいいのか、とセフィロスがエアリスにいうと大丈夫、と彼女が答えた。
セフィロスがきれいに並べた航空写真をみて、族長は驚いていた。
「これは全部きみが集めたのかい。」
はい、とエアリスがうなずく。
「きみは相当優秀な調査員だね。今日セトラを一人指名手配にしたいと警察が言っていたが、罪状をなかなか言わないのでやめさせてきた所ですよ。が、きっとこれが原因に違い無い。」
エアリスははっとした表情をしたが、次に話を進めようと口をつぐんだ。
写真を見ながら族長が
「なかなか面白いところに気がついたね。たしかに変な建て方です。」
セフィロスが丸をつけた所とバツをつけた所をチェックしつつ何かを考えていた。
「多分私の考えが当たっていれば、というか十中八九当たっていると思うのだが、この中のどれを調査しても、ちゃんと目的の場所に行き当たれば、それなりに怪しい証拠が見つかると思われますね。」
「恐らく武器の生産若しくは研究所、輸出入の拠点のどれかになるはずですが。」
国境沿いの砂漠に民間住宅とは盲点でしたね・・・と呟く。
「武器の生産拠点だったら、ビンゴになるな。」
ヴィンセントが言う。
族長は、どこが一番怪しそうか見極めるように写真に見入っていた。
「恐らく、俺が丸をつけた今も使われていそうな場所は調査するのは結構危険だと思われる。」
でも、ばっちり証拠が見つかる可能性が高いがな、と続けた。
「不動産買い付けの振りでもしてみるか?」
ヴィンセントが提案した。
使って無い所だったら、大っぴらに調べられるぞ、と付け加える。
「手始めにはいいかもしれませんね。外国人のあなた方に不用意に危険な場所を頼むのも申し訳ないですし。」
族長が首都から遠い砂漠の一拠点を指し示した。
「ここは放棄されていて、人目もつかなそうです。私の知り合いの不動産ブローカーに案内させましょう。信用できる者です。」
「そうしたら、三人で行く?」
エアリスが聞く。
「そうだな。調査するにしても人数が多い方が効率がいいし。」
セフィロスが答えた。
「ユフィも連れて行って下さい。彼女も関係者ですから。」
族長が付け加えて、そうすると四人になるな、とヴィンセントが言った。
三人は私の知り合いの外国人と紹介することにします、と族長が言うと、
「それはかなり目立つんじゃ無いでしょうか。」
とエアリスが心配そうに言った。
「あなた方三人はこの屋敷でもう十分目立ってますよ。」
えっ、と三人とも意外そうな顔をする。
「屋敷の者は表に出さないだけで、侍女部屋とかの中では噂で持ち切りですから。大体あなた方みたいな美男美女が目立たないはずは無いですよ。」
なんだ、外国人慣れしてる訳じゃ無かったのかよ、とセフィロスが言って、どうせ目立ってるなら髪の色もどそうかな・・・と言い出した。
「セフィちゃん、それはさすがに目立ち過ぎ。」
エアリスが止めに入って、もともと彼は何色の髪なんですか?と聞く族長に、銀髪なんですよ、とヴィンセントが答えると、ほお・・・と呟いた。
では、と不動産探しの日程調整はちょっと時間がかかると思うので決まったら連絡しますよ、と族長は話を切り上げた。
満月がちょうど真上の方に登ってきてお月見日和のようなきれいな空だった。
「こういう日は何故か泥棒とかしたい気になってくるんだよなぁ。」
というセフィロスに
「明るい月の日は忍び込むには不向きじゃ無い?キャッツアイなら別だけど。」
とエアリスが冗談半分に答える。
「キャッツアイってレオタードで忍び込む三人組のことか?」
と返すセフィロスにそう言えば私達も三人組ね、とエアリスがにっこり笑って答える。
「言っとくけど私は仲間にならないからな。」
と念のため口を挟むヴィンセント。
「それは残念ですね。」
と族長がチャチャを入れた。
あなたまでやめて下さい、と呆れるヴィンセントに
「もし、別荘調査までに特にすることが無ければあなたにお願いしたいことがあるのですが、」
と族長がついでのように話し始めた。


族長の頼みごとは、何もする事の無い期間通訳として雇うので王宮内を出入りする不審人物を探って欲しいという内容だった。
「それはかまいませんが、エアリス、言いたいことがあるんじゃ」
とヴィンセントがエアリスに声をかける。
帰ろうとする族長が歩みを止めて彼女を見た。
「あの、すごく個人的なことで恐縮なんですけど。」
とエアリスが緊張して話し始める。
「私、どこの組織かわからないけど狙われてて、母がこの国に住んでいるので母に危険が及ばないように気をつけてもらえればと思って。」
最後の方は消え入りそうな声になったエアリスに、ヴィンセントが私もイファルナのことは気にしているからとエアリスの両肩にそっと手を置いた。
「きみみたいな優秀な調査員の身内なら言われなくても気をつけるから。」
と族長が答えて、お母さんはどこに住んでいるのか、等質問する。
ちょっと落ち着いてきて、ありがとうございます、と族長に答えてからエアリスは泣きそうな顔になりながら、ごめん、ありがとう、とヴィンセントに言う。
二人の様子を横目で見ながら、
「君も大変だな。」
と族長がセフィロスに話し掛けた。
何も言わないセフィロスにちょっと気を良くした族長が、彼の隣に座って表情を見る。
セフィロスはエアリスとヴィンセントの様子を見てとても微妙な顔をしていた。
「彼はまだ君に・・・」
といい出して、言葉が適切では無かったと思ったらしく引っ込めた。
「君はまだ彼に本当の意味で気持ちを伝えていないんだろう。」
はっ、と族長の顔を見るセフィロスににっこり笑って答える。
「私が思う限り彼は君を、絶対まんざらでなく思っている気がするんだが・・・」
っていうか、彼にとって君は無くてはならない存在な感じが・・・
と言いかける族長に思わずセフィロスは、それ以上はいいから、と言葉を遮った。
「ヴィンをお前の護衛に雇ったろ。もれなく俺も着いてくるかもしれないから。」
族長が去って行く別れ際に素早く声をかけるセフィロスだった。
「エアリスはどうする?」
族長との話が終わった次の日、ヴィンセントが一番気にしたのはエアリスのことだった。
「私はカンディフ族の族長の所に入り浸りになると思うが、その間に危なく無い所に。」
「私、お母さんの所に一度帰ろうかと思うの。」
えっ、とヴィンセントが戸惑った感じの表情を見せ、お前は安心するかもしれないけど、イファルナさんにとっては良く無いんじゃ・・・とセフィロスが言いかける。
「でも、なんかあの人が私が警察に指名手配されることをちょっと言っていたじゃない。不安になってきちゃって。ただでさえお父さんがどうなっているかわからないのに・・・」
「でも、エアリスがずっと街中にいるのは危険だ。自分で誰かに狙われてるって言ってたじゃないか。」
それなら私がイファルナの所に行くよ、とヴィンセントが言うのをセフィロスが遮った。
「ヴィンは族長から名指しで呼ばれているんだからやめておけ。エアリスもこの王宮内だから安全に見えるだけで、外に出たら前と一緒の生活になるぞ。」
そんなに心配なら俺が行ってやる、とセフィロスが答えた。
「えっ・・・セフィちゃんいいの?」
エアリスがびっくりしてセフィロスを見る。
「どうせ族長の警備じゃ不安だから様子を見たいとか言うんだろう。俺がついていれば絶対に危険はないしな。」
その代わりこの貸しは高くつくぞ、と言うセフィロスに、ありがとう!とエアリスがとても嬉しそうににっこり笑って言った。

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