「とりあえずエクストラベッド頼んどく?」
とエアリスが言うので、そうだな、とセフィロスは答えた。
侍従達がベッドの支度を整えて帰って行くと、エアリスがセフィロスはエクストラ、私はキングダブルね、と勝手に決めた。
「お前さあ絶対男に第一印象悪いタイプだろ。」
思わずセフィロスが別にベッドぐらいいいけどさ、と言いながらとりあえず言っておく。
セフィロス様は相変わらず女を見る目が無いのね、と言ってエアリスはさっさとキングダブルに横になってしまった。


ー・・・結局俺は簡易ベッドかよ。
別に不満な訳では無いが、エアリスが隣のキングダブルだと思うと何となく文句も言いたくなってくる。
ごろりと横になって、眠く無いなと思っていたら
「ねえ、セフィロス。お母さん元気だった?」
エアリスが話し掛けてきた。
「特に変わり無いようだったぞ。食事も御馳走になったし。」
そう、良かった・・・とエアリスが呟く。
でも、良く考えてみたら狙われているのは私だから、お母さんは大丈夫よね、と独り言で納得している。
「そんなことはないぞ。」
セフィロスが答えた。
「本当にお前が狙われているなら、イファルナさんは危険だと思うぞ。」
「!不安にさせないでよ!お母さんまでいなくなったら私・・・」
エアリスの声がちょっと震えているのを感じて、悪かったな、とセフィロスが言った。
「でも、あんな市場の近くで人通りが多い所じゃなかなか変なことはできないんじゃ無いか?」
セフィロスの言葉に、そうよね、とエアリスがちょっと安心した感じで答えた。
二人はそれぞれベッドに横になっていたが、お互い顔を見ずに背中を向けて話していた。
部屋の中はオレンジ色のテーブルランプが申し訳程度についているだけで他は真っ暗だ。曇っていて月明かりも無い。
エアリスは自分の正面にある壁をじっと見ていた。
「もしね、お母さんが変なことに巻き込まれちゃって、私もヴィンセントも助けられない状態だったら・・・・・・セフィロスにお母さんをお願いしてもいいかな。」
いいぞ、イファルナさんはいい人だしな、とセフィロスは即答した。
「ありがと、無敵のセフィロス様!」
エアリスが安心したように言って、おやすみ!とテーブルランプを消した。
ーやっぱ身体がなまってるのかな・・・
今日も午前3時頃に目をさましてしまったセフィロスはベッドで軽く伸びをして思った。
ーツォンといた時からずっと戦闘もして無いし。
ごろっと寝返りを打つと、エアリスのいるベッドにヴィンセントが横になって眠っているのが見えた。
ー!ちょっと!
思わず自分のベッドから起き上がって、彼の側に行った。
ベッドを見ると二人とも背中を向けてエアリスは壁の方、ヴィンセントは端の方に眠っている。
安らかに眠っているヴィンセントをセフィロスは仰向けにする。
彼の寝顔を見ていたら、我慢できなくなってゆっくりと唇を重ねた。
何も抵抗がないので、思わず無防備な口の中に舌を入れる。
腕を彼の顔の両側において、さらに深くキスをした。
「んっ・・・・」
寝言か分からないようなヴィンセントの声を聞いて、セフィロスは彼の身体へ手を伸ばして優しく撫で始めた。
「あっ・・・」
息を飲むような喘ぎ声をきいて、セフィロスは彼の首筋に舌を這わせる。
ヴィンセントの喘ぎ声を気持ちよく聞いていると、いきなり肩を掴まれて涙目のヴィンセントに目が合った。
「セフィ、なにやってんだ。エアリスがいるんだぞ。」
ささやき声で抗議するヴィンセントが可愛くて、思わず股間を撫で上げてしまった。
「はんっ」
目をつぶって首をちょっと振ったヴィンセントをやっぱり抱きたくなって、セフィロスは本格的にヴィンセントの上に身体をのしかからせる。
その瞬間に、ヴィンセントはベッドからするりと落ちてセフィロスの腕から抜け、床で体勢を整えて立ち上がった。
「セフィロス、さっさと寝なさい。」
子供に言い聞かせるように腕を組んでヴィンセントが話し掛ける。
セフィロスはキングダブルのベッドに腰掛けてため息をついた。
「ヴィンはさあ、全然俺の気持ちを分かって無い。」
セフィロスはヴィンセントの目を見て話し掛けた。
「俺はお前のことが好きなんだぞ。」
「知ってる。」
ヴィンセントが即答する。
「いっとくけど、すっごい好きなんだぞ。」
「分かってる。」
ヴィンセントは壁に寄り掛かって上の方を見る。
「そんな俺が、エアリスと一緒のベッドに寝てるお前を見て何とも思わないと思う?」
う〜ん、という感じで頭をうなだれて考え込んでいたヴィンセントだったが、
「セフィ、ちょっとおいで。」
とパティオに面している窓を開けるとするりと中庭へ降りて行った。
セフィロスが急いでヴィンセントを追って中庭へ降りて行くと、いつもの通り噴水の脇にヴィンセントが座っていた。
吸い寄せられるように側に行って隣に座る。
ヴィンセントは大分考え込んでいるようだったが、心を決めたようにセフィロスの顔を見ると、
「キスだけだからな。」
と言って両腕を彼の肩にかけ、セフィロスを少し前のめリにさせて自分の顔を近付けた。
柔らかい唇が自分のに重なり、歯の間を割って舌が入ってくるのをセフィロスは思わずまぶたを閉じずに見ていた。
ヴィンセントは目を閉じて、セフィロスの頭を抱いてキスに集中している。
ー甘い・・・かも。
ヴィンセントのキスを味わっていたセフィロスは、目を閉じて彼の後頭部に腕を回しそおっと噴水の縁に彼を倒した。
頭が縁のコンクリートに触れないように、腕を回す。
唇を離して首筋にキスしようとした時、ヴィンセントの手がセフィロスの頬を包んだ。
「こうやってみると、やっぱりセフィはルクレツィアにそっくりだな。」
と言った。
その言葉を聞いて、
「やっぱりルクレツィアとも同じことをしていたのか。」
とセフィロスが尋ねる。
ほんのりと灯る街灯以外真っ暗なパティオは目がなれないと一寸先も見えない。
ヴィンセントは何も答えずにセフィロスを起こすと、額に軽くキスをして、もう気は済んだだろう、と言った。
夜中でも密やかに流れる噴水の水音がさわさわと聞こえてくる。
どう答えていいか迷っていると、ヴィンセントは立ち上がって、おやすみ、と声をかけて部屋に戻って行った。

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