ヴィンセントが窓を開けて部屋に入ろうとしたら、セフィロスがもう起きていて窓枠の側で待っていた。
「おかえり。」
スッキリした顔をしてセフィロスが言う。
「何か収穫はあったのか。」
セフィロスは窓から部屋に入ってくるヴィンセントの手を取りながらきいた。
「族長らしき人に会った。」
セフィロスの眉がピクッと動く。
いつまでも自分の手をとっているセフィロスにいい加減離せよ、と言うとマル無視して
「何かされなかっただろうな。」
と本気に心配そうに聞いてくる。
あのなあ、こう見えても私は還暦のおじいちゃんなんだぞ、簡単にやられてたまるか、と答えるとセフィロスはちょっと安心したようだった。
「セフィロス、何か食べるか。私は腹が減っているんだが。」
なかなか手を離さないのでさり気なく呼び鈴を取ろうと移動した。
その時、ふわりと身体が引き寄せられて優しく後ろから抱きとめられた。
「どうせなら、ヴィンセントが食べたい。」
骨と皮のおじいちゃんが食べたいなんてセフィロスは変わってるな、と冗談めかして言うと彼はヴィンセントの黒髪に顔を埋めて、今日は太陽とラベンダーの香りがすると答える。
「中庭にラベンダーがいっぱい咲いていたからな。そろそろ離せよ。私といるだけじゃ腹は膨れないぞ。」
ヴィンセントがセフィロスの腕を離そうと手をかけると、セフィロスはヴィンセントの両腕を抱き締めるようにぎゅっと抱き直した。
「無事で良かった・・・」
セフィロスの言葉にちょっと驚いてヴィンセントが固まっていると、セフィロスの唇が頭にキスした後、首筋に吸い付いて来た。
「ちょっ・・セフィ、やめっ」
何度も軽く唇を触れ、啄み、少し舌で愛撫され、をくり返されるとヴィンセントはぞくぞくして、力が抜けそうになっていく。
「別に俺はお前が何歳でもいいんだ。身体は27歳だしな。」
キスの合間にセフィロスは耳もとに囁いて、またキスに戻る。
ーこのままベッドに押し倒されるのは勘弁して欲しい・・・
目の端にベッドがあるのを確認しヴィンセントが身動きを取ろうとして、
「あっ・・・んっ・・・」
舌の動きにびくっとして、声をあげたのをセフィロスが見てにやっとした。
さらに首筋にキスをしようとした瞬間、
「たっだいまー!☆!?」
ユフィが勢いよくドアを開けて二人の様子をみて固まった。
「なにやってるの!あんた達!」
ユフィがびっくりして叫んでいる後ろからエアリスもついて来て、おやぁ?と言う感じでにこりと笑った。
ユフィとエアリスを見て、助かった・・・とほっとするヴィンセント。
「小娘、見て分からないのか。恋人達の愛のかた・・」
セフィロスが全部言い終わる前にヴィンセントが正面から彼の顔を平手打ちにした。
「子供をあやしていただけだ。セフィロス、さっさと食事にするぞ。」
ヴィンセントは侍女を呼ぼうと呼び鈴を鳴らし、ぼーぜんとするユフィにエアリスがお腹すいたから御飯美味しいわよと話し掛けた。
(セフィちゃんは・・・もちろん撃沈してます・・・)
侍女がテーブルに食事を並べていく。
食前酒に前菜、サラダ、カレー、ナン等決して広いと言えないテーブルに載せるだけ載せて、隣のワゴンにメインを載せたまま、何かあったら呼んで下さいと言いおいてかえって行った。
「俺こういうマナーを気にしない食卓って好きだぞ。」
セフィロスが食前酒を一気に飲んで前菜とカレーをつつき始めた。
「メインはなんだろうな。」
ヴィンセントはメインがおいてあるワゴンの蓋をとって、マトンだなこれは、と言ってから下にも皿があるってことは魚もあるのかなぁと楽しそうに呟いた。
好き勝手に食べはじめる二人を、(乙女にしたら)ショッキングなシーンを見て食が進まないユフィと、全然関係なくサラダをぱくぱく食べはじめるエアリスがいた。
ヴィンセントがユフィを気づかって、マトンを取ってやろうか?と話し掛ける。
「だ、大丈夫だよ。気にしないで。自分のペースで食べるから!」
ユフィが慌てて言うのをきいて、エアリスがそういえば一緒に行った調査で一番すごい食事があったわ。と話し始めた。
「カエルか?」
ヴィンセントが聞いてきたので、そうよ、と答えた。
「あの時のエアリスは面白かった。腹が減っているが、自分でカエルを焼かないと食事にありつけなかったからな。」
くすっ、とヴィンセントが笑ったので、ひどーい!私は必死だったのよ!とエアリスが抗議する。
「沼地しかない土地で木の実とかもないし、もってきた食料もつきてきて」
ヴィンセントが美味しいものを食べさせてやるからって言うから信用したのに!
エアリスが睨むと、でも実際食べてみたら美味しかったじゃないか、とヴィンセントが笑いながら答える。
「でもぉ、周りに乾いた薪とかもないし。自分の食べる食材を生身のままファイヤで少しずつ焼いていくのは・・・」
う〜ん、しゅーる、とエアリスが言ったのを受けて、お前がひっくり返りそうだったから
食べる時は元の姿が分からないように加工してやっただろ、とヴィンセントが言った。
「あとで、いきなり「あれはお前が一生懸命焼いてくれたカエルだ。」って言うのをきいて、私は自分の食べたものを吐きそうになったの!」
それはエアリスが食べ物に感謝していないせいだ、食べるものはすべて他の生命の犠牲の上に成り立っているんだからとヴィンセントが言葉を続けた。
「それは、今になってからは分かるけど・・・」
不満そうなエアリスを見てユフィがくすっと笑って、ヴィンセント私マトンが食べたい、と皿を出した。
はいはい、と適当な量を切り分けてからセフィロスがずっと黙っているのに気付いて、お前も食べるか?と聞く。
うん・・・、と答えるセフィロスの元気がいまいち無かったのが気になった。
変な緊張が解けてユフィとエアリスが楽しそうに食事を終わらせるのを見て、ヴィンセントはセフィロスにこの後、ブランデーかデザートか食べたいか?ときく。
「ブランデー」
と素っ気無く言うセフィロスに私もつきあうよ、と軽く言ってヴィンセントは呼び鈴を鳴らした。
デザートにはモカカフェのアイスクリームを持ってきてくれた。
「これ、すっごいモカの風味がするよ!」
ユフィがおいしい!と言ってヴィンセントとセフィロスに無理矢理ひとくちずつ食べさせた。
「確かに、うまいな。」
とセフィロスがニヤッと笑って、そうでしょ、とユフィが満面の笑みで返す。
明日は皆特にやることは決まってなかったら、この王宮の地図を頭に入れて欲しいんだが、とヴィンセントが口を開いた。
「セフィロスが持ってきてくれたPCの中に見取り図が全部入っているんだ。」
さすがはセフィロス様、とエアリスがチャチャを入れて、あたりまえだ、とセフィロスがいばる。
PCのバッテリーがきれる前にプリントアウトしたいからプリンターを持ってきてくれ、というとユフィがすぐに動き、エアリスがAC電源があればOKじゃない?とPCを点検する。
無事に見取り図の印刷が終わり、ユフィは今度はエアリスを王女の部屋に連れていくから、と言って一同は解散した。
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