部屋の窓から外を見ると太陽の光があふれんばかりに差し込んできて、眩しいぐらいの良い天気だった。
空は青く澄み渡り、東南にある太陽は高度はまだ低いが輝いている。
ーこんなにゆっくりできる日は久しぶりだな。
ヴィンセントはベッドの横のスツールに腰掛け、眠りこけるセフィロスを見た。
ー靴はいたまま、寝てやがる。
ヴィンセントは彼のブーツを脱がすと、何となく腹が減った気がして侍女に朝食の用意を頼んだ。
ーしかし、何でセフィは天井から出て来たんだろうな。
もしかしたら、自分の部屋にも隠し扉があるのかもしれないと天井を見上げるヴィンセント。
と、セフィロスの持って来たPCに気がついた。
寝ながら大事に脇に抱えているのをそおっと取り上げて起動する。
ハードディクス内を軽く検索して目的のファイルを見つけて開いてみると、以外と量があり、ヴィンセントは姿勢を正して机にPCを置いた。
太陽がだんだん高くあがって行き徐々に暑くなってくる。
しばらくして侍女が朝食を運んでくると、ヴィンセントは脇のテーブルにおいて下さい、と手で合図をしてPC内の情報を再び読み始めた。


「ユフィ、地図とかないのかな。」
宮殿内を歩き回りながら、似たような風景が曲がる度にあるのでエアリスがしびれをきらして言った。
「侍女ごときには入手不可なの。」
ユフィが答える。
ーでも、王女の部屋に入ったらいきなりセフィちゃんがいたわよね。
絶対セフィロスはなんか知っているわよ・・・、とエアリスは考えながら、ユフィのあとについて行った。
ヴィンセントがPCの情報を大体読み終わると既にニ時頃になっていた。
部屋の中は冷房が効いていて程よい気温だが、窓からパティオを見るとかなり暑い様子が伺える。
セフィロスはピクリともせず眠っていた。
ーセフィもあんな必死に来ることないのに・・・
ヴィンセントは砂漠の施設からここの距離を考えてよくもまあ体力があるものだと感心していた。
ーまあ、感謝した方がいいんだろうな。
と一人で納得してヴィンセントは、ありがとう、とセフィロスに話し掛け頭を撫でた。
「んっ・・・」
セフィロスがごろんと寝返りを打って、再び深い眠りについたようだ。
王宮の外には出られないし、ヴィンセントはパティオを散歩しようと窓を開け、そこから出た。
夜見る中庭と昼間はまた趣が違って目新しかった。夜はほんのりと街灯が灯って幻想的だったのが、昼間の日の光の中だと明るい光りのなかで全てが前向きに
肯定されているように見える。
石畳をゆっくり歩きながら久しぶりの太陽の光をゆったりと楽しんでいると、
「白い肌に紫外線は有害ですよ。」
と後ろから日傘を差し掛けられた。
ゆっくり後ろを振り向くと浅黒い肌の精悍な感じの男性がヴィンセントに日傘をさしていた。
「少しぐらい日に当たった方がいいんじゃないか?特に私のような生っちろい男は。」
相手の意図を図りかねてヴィンセントが笑いもせず答えた。
そう思われているのでしたら失礼致しました、とその男は彼の愛想の無い様子をものともせず答えると、散歩に同行しても構いませんかときいてくる。
見張りのものかと思い、ついてくるのは構わんとヴィンセントは答えた。
庭とはいえ宮殿の建物内にある中庭なので5分もあれば隅々まで見渡せてしまう。
ゆっくり散歩した後に噴水近くの椅子に腰掛けて水の流れる様子を見つめるヴィンセントを、同行した男は見るともなく日傘をかかげながら隣に立っていた。
「お前はこの水を見ていて勿体無いとか思わないか。」
ヴィンセントは側の男に声をかけた。
「全ては神の思し召し、私達はその中から最良の選択肢を見つけだすだけです。」
男が答える。
ただの見張りにしてはずいぶんしゃれた答えを言う男だと思いつつ、ヴィンセントは噴水の近くに行って流れる水を手にとった。
思ったよりも気持ちよかったので、噴水の脇に腰掛けてばしゃばしゃと水をはねかせていたら視線を感じてパティオの入り口を見た。
ユフィがヴィンセントの側に入る男を凝視しているのを見つけ、ヴィンセントは見張りと思っていた浅黒い男に目を移した。
「もう、時間切れの様ですね。」
彼は、ではまた、とヴィンセントへ声をかけてユフィとは別方向の入り口へゆっくりと姿を消した。
ヴィンセントは彼を目で追ってから、ユフィに声をかけた。
「何をそんなに驚いているんだ?」
後ろからエアリスが姿を現して二人一緒にに噴水の側にやってきた。
ヴィンセントの隣にユフィ、エアリスの順に腰掛ける。
「でも、ありえないかも。」
物思いにふけって、独り言を言うユフィをエアリスとヴィンセントが見守った。
「あれ?どうしちゃったのーー二人とも!」
自分をじっと見つめているエアリスとヴィンセントに気付いてユフィがあははーと笑った。
「ユフィ、ごまかすな。私の側にいた男に見覚えがあったんだろう。」
ヴィンセントが問いつめ、私達はどんな不確かな情報でも知っていて損はないの、とエアリスが付け加えた。
「あの、全然断言はできないんだけど・・・あの人王女のお父さんに似ていたような・・」
いや、以前にちらっと見ただけだからわかんないよ!とユフィが続けるのをヴィンセントとエアリスはあり得ない話ではない・・・と考えていた。
「もし、そうだとしてわざわざ私を偵察に来たわけだ。」
ヴィンセントが水をシュッとはねかして噴水の縁に手をおいた。
指先の雫がじわりとコンクリートを濡らしていく。
「興味があるってことよね。」
どんな意味合いか分かりませんけど、とエアリスが付け加えて一緒にいくのはセフィロス様より私の方が族長の警戒心が少ないかもよといった。
「そうだなぁ・・・」
と考え込むヴィンセントを遮って、ユフィが
「私!いまいち三人の関係が分からないんだけど!」
と口を挟んだ。
て、協力している調査員だけど、とエアリスが答えると、そんなことでなく!とユフィが言い返す。
「聞いてると!セフィロスって人は確実にヴィンセントが好きで、追いかけてるわけでしょ。で、ヴィンセントとエアリスはどうなの?」
ユフィは二人にビシッと言ったつもりだったが、エアリスとヴィンセントは反応ははて?という感じだった。
「セフィロスって分かりやすすぎるわよね。いくら女の子は勘が鋭いっていっても。」
「あいつ、あれで隠してるって言うんだったら私の方からなんか言わないとな。」
いや、こっちに来てからそれはないでしょう、とエアリスが言ってユフィはなんかこの人たち私の質問に答えてない!と、いら〜として来た時、
「そろそろ私は部屋に戻る。エアリスはどうする?」
とさっさとヴィンセントは会話を終わらせて、エアリスが私はまだ王宮内を見せてもらうわ、というとじゃ、と帰って行った。
ヴィンセントが部屋に入って行くのを見守って、ユフィがエアリスに聞いた。
「あの人いつもあんな風にそっけないの?」
う〜ん、とエアリスが言って
「かまって欲しいの?」
とにっこり笑ってきく。
「そういうわけじゃないけど、あまりしゃべらないから取り付くしまがないって言うか、エアリスはよく話が続くなあって。」
この国に来る前に私とヴィンセントはコンビを組んでいたのよ。と、エアリスは言った。
「新人同志で?」
ユフィが尋ねる。
「ああ見えてもヴィンセントはいい歳なのよ。」
へえ、いくつ?とユフィがいうと、60歳なの、とエアリスがさらりと答えた。
「へ!?」
ユフィが固まったのを見て、冗談だからとエアリスが笑いながら中庭から宮殿へ入って行った。

Back/Next

一ヶ月の休暇案内版へ