王女は「お父様」の都合を聞くので部屋で待ってて、とエアリス達を追い出した。
ヴィンセント、セフィロスとエアリスが複雑な廊下を通って行く様子は結構目立つと思うのだが、よく訓練されているのか、王女の王宮の者たちはあまり好奇な目で見る者もなく、ユフィの先導で部屋へ帰った。
「それで、これからどうするの?」
ベッドに足を投げ出してユフィが口を開いた。
「お前も人任せなやつだな。自分の国の事ぐらい自分で考えろ。」
セフィロスがうるさそうに答える。
そんなこと分かってるよ、とセフィロスを睨み付けるユフィにエアリスがフォローにはいった。
「ほら、とにかく王女様のお父さんに会うのはヴィンセントだから、その間に私達は何をしましょうか?」
「俺はヴィンセントと一緒にその族長とやらに会いに行くぞ。」
セフィロスが言ったので、エアリスはびっくりした。
「あんた、王女の言ったこと聞いてなかったの?」
族長の御機嫌伺いに行くのにあんたが行ったら台無しじゃない、というエアリスに
「あんな怪しいやつらの中にヴィンをひとりで放っておけるか。2対2でちょうど良いだろう。」
セフィロスが当然というように言う。
そうね・・・そうかも・・・と呟くエアリスの独り言をきいて、ユフィが、あんた囚われのお姫さまみたいに心配されてるね、とヴィンセントに話し掛けた。
「セフィロス、そんなに私は頼り無いのか。」
と言うヴィンセントに、うん、と力強く頷く(笑)セフィロス。
「大体、お前はマテリアを5個以上装備できないぐらい非力だ。魔法が得意なはずなのに。」
それ以外にも、格闘戦になったときは絶対に相手に組み伏せられそうだし、勝てそうなのは銃撃戦ぐらいだな、と滔々としゃべり始めた。
「大体、マテリアを5個以上持てるなんて異常だ。魔法が得意なエアリスも持てるのは2個までだろう。」
とヴィンセントが、まったくセフィにしゃべらせると碌なことがないと思いつつ。エアリスにふる。
「う〜ん。武器とかに装備できるのはそうなんだけどね。私は特別かも。」
と袋に入れていたマテリアを装着せずに軽く発動させた。
部屋の中の一同がびっくりする。
「補助無しで、発動できるの!」
ユフィが目を丸くしている。
「多分セトラの特殊能力。この国にいるセトラは皆できたから。」
エアリスの言葉をきいてセフィロスとヴィンセントが同時に口を開く。
「多分その能力が目的で、セトラを集めたんだ。」
エアリスがびっくりした顔をして、セフィロスとヴィンセントがお互いに顔を見合わせた。
「そうだよ。だって、ウータイにはそんな人いないもん。いたらこれから戦争を始めようとする叔父がセトラを絶対に集めようとするよ。」
ちょっと深刻な顔になったユフィをヴィンセントが心配するなと声をかけた。
「そうなの、本当にセトラじゃないとできないんだ。セトラと言って亡命させなくて良かった・・・」
エアリスが呟くと、セフィロスがどうしてそんなことができるんだ?と尋ねた。
「セトラって星の声が聞こえる特殊な民族じゃない?マテリアは星の命の循環から一部を結晶としてかためたものだから、なんとなくマテリアの声をきいている感じかな。」
よくわからないな、というヴィンセントとユフィが言う一方でセフィロスは興味深そうに話を聞いていた。
「エアリスの話からすると星の声が聞こえるなら、マテリアも補助無しで発動できそうだな。」
そうね・・・そうかもしれないわね、とエアリスが返すと扉がノックされた。
「私出るね。」
ユフィが急いで侍女の服を着て後ろの三人が見えないように扉を開けた。
そこにいたのは王女の王宮に勤めているのとはちょっと違った雰囲気の男性で、銀の盆にメッセージカードを載せていた。
ユフィは注意深くカードを観察してから、ありがとう、とカードを受け取り男性を下げさせた。
「誰からだ?」
とヴィンセントが話し掛けるとユフィが黙ってカードをヴィンセントに手渡す。
宛名にはヴィンセントと記され、中には日時と場所が記載されていた。
「なんだ?これは。」
セフィロスが不審そうに言う。
ヴィンセントはカードのデザインや記されている紋章、サインをゆっくり見ながら口を開いた。
「多分、族長が王女抜きで会いたいということだと思う。」
ヴィンセントはエアリスにカードを渡し、彼女はそうねカンディフ族の族長の特別なメッセージカードだわこれは、と言った。
「日時は明後日の19時、場所はここ?」
セフィロスが王女抜きで会うにしてはなんでこんな所をと言った。
それをきいて、ユフィは、あっ、と気付いた。
「明後日は第一王子の誕生日だよ。王女もお祝の会に出席するんだ。」
「その会にお父さんは出席しなくていいのかしら?」
エアリスが言うと、どうなんだろうねぇ・・・、とユフィが目をくるんとさせた。
「とにかく、考えても仕方ない。俺は疲れたから寝るぞ。」
セフィロスはヴィンセントのベッドにごろんと横になってあっというまに眠りに落ちた。
じゃあ、私はユフィに王宮を案内してもらうわ、とエアリスが言ってさり気なくユフィを部屋から出す。
よろしくね、とヴィンセントにエアリスが目で合図して、しょうがないな、とヴィンセントがうなずいた。

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