ヴィンセントが王女に事情を話し終わった時、意外にも王女はあまり驚いた様子が無かった。
「いいわよ。あなたの要求を全面的にのんでも。」
「でも、そんなことをするとあなたが危なくなるんじゃ・・・」
思わずヴィンセントは言った。
「やっぱりお人形さんは優しいのね。ねぇ、ヴィンセントって呼んでも良いかしら。」
王女が尋ねるので、良いですよ、というヴィンセントと、生意気な女だとぼそっとセフィロスが言った。
王女はむっとして
「さっきからそこの大男は態度が悪いわね。あなた誰なの?」
と言うと、
「お前こそヴィンに馴れ馴れしいぞ。俺のものに手を出すな。」
とセフィロスが答える。
ーあー、セフィ!せっかく交渉がうまくいっているのに!
ヴィンセントは王女にこいつの言うことは気にしないで下さい、と言ってセフィロスの臑を思いっきり蹴飛ばした。
いてぇ・・・というセフィロスをよそに、王女とヴィンセントはめでたく某国調査の拠点として彼女の王宮を使わせてもらうことに合意した。
「きっと、アマルダの事もばれているわね。彼女も参加させるわよ。」
と王女がユフィを呼びにやった。
ユフィが来る間に王女はヴィンセントに拠点を貸す代わりの要求事項を告げた。
「ほんとはユフィが来たことでなんとかなるかと思ったんだけど、とてもそんな簡単にいかなかったのよ。」
彼女は今某国が一部の政治家達の思枠で変な方向に行っていると考え、外国人を何人か入れてかき回そうとしていると言う意味合いの事を伝えた。
それだったら、協力できるかもしれません、とヴィンセントがいう。
今、あなたの国の施設に査察団を入れる証拠集めをしているんです、というと王女がユフィもなかなかやるじゃない、とにっこり笑った。
こちらの我がままを受け入れて頂いて感謝しています、とヴィンセントが答える。
「ちなみにそこの大男は誰?」
王女がヴィンセントに尋ねた。
「彼は私と組んでいる調査員の一人です。」
そして、名前を言いなさいとセフィロスに促した。
「・・・セフィロス」
よろしく、と二人は取りあえず表面上は言葉をかわしたが相性が悪いような感じだった。
ドアが開いてユフィとエアリスが一緒に入ってきた。
「もう、本名はばれているのよね。」
王女がユフィに言った。
彼女はうなずいて、近くに座ると王女がエアリスに気付いた。
「この人は?」
「彼女も私と組んでいる調査員です。」
エアリスが自分の名前を名乗り、王女とヴィンセントににっこり笑いかけた。
「でもユフィ、よくこの人を信用する気になったわね。」
王女がヴィンセントの方ちらっと見て言った。
「そう言う王女様も危険を侵して、自分の王宮に連れてきちゃったじゃないですか。」
そう言えばそうだったわ・・・と二人は目を見合わせてくすりと笑いあった。
ヴィンセントは王女が全面的に協力してくれる旨をエアリスに伝えて、調査する予定の施設はまだあるのか?と聞いた。
「候補はいくつかあるんだけど、でもセフィロスに頼んだ所が一番有望だったのよ。」
セフィロスがあそこには生化学兵器はなかった、と言ってツォンから奪ったPCを見せた。
「これの中には宝条の遺伝子変異研究記録が残っている。これはこれで、某国内で行っていたから材料にはなるが。」
でも、できれば依頼の趣旨通りのものを探す努力も必要だな、まだ時間はあるし、と話を続けた。
三人の話を聞いていた王女が口を挟んだ。
「国内の情報ならお父様に頼めば分かるかも。」
お父様って、カンディフ族の族長?とエアリスが尋ねると、そうよ、と答えた。
「騙して投獄ってことは無いから安心して。
もともとお父様が動くと勘付かれるから私の方を使って何とかしようとしているの。
だから、ユフィが来た時私の侍女にしたし。」
でも、お父様気難しいから私と一緒に行くとしても頼み方を吟味しなくっちゃ・・・、と王女がヴィンセントを見てにっこり笑いかけた。
ーこの笑いの意味は一体・・・
嫌な予感がしたヴィンセントを見てから、
「お父様って私と好みが似てるのよね。
だから、きっとあなたが頼めばOKしてくれるんじゃないかしら。」
「好みって、私みたいな性格が信頼されやすいってことか?」
念のために確認するヴィンセント。
「何言ってるのよ。一回会っただけで性格まで分かるはずないでしょ。
外見!容姿があなたお父様の好みど真ん中だから!」
ちなみにお父様両刀だから気をつけてね、という王女。
ヴィンセントすごいわね、今回は老若男女にモテモテじゃないと言うエアリスに、エアリスこそ美人の容姿を生かさなくて良いのか、と悔し紛れにヴィンセントが言った。
「今回は大人の色香のヴァレンタインさんに全部お任せしますわ♪」
とエアリスがかなり楽しそうに答え、本当は私は語学要員だったはずなんだが・・・とヴィンセントはため息をついた。
セフィロスはずっと黙って聞いていたが、
「おい、女。お前のおやじがヴィンに手を出したらただじゃすまないからな。」
と脅しぎみに王女へ言った。
「大丈夫よ。ヴィンセントがホモじゃなかったらね。」
と王女がにっこりヴィンセントへ笑いかけ、ユフィが、私は話しててホモかと思いましたー!と口をはさんだ。
「ユフィ、私はノーマルだって何回言わせるんだ。」
ヴィンセントがユフィを睨み付け、それを聞いたセフィロスが思わず、ノーマルの割にあの反応は・・・と口を滑らせる。
チャッ、とヴィンセントは銃をセフィロスのこめかみに素早く突き付けた。
「お前、それ以上余計なこと言ったら安全装置はずすからな。」
悪かった・・・にやりと笑いながらいうセフィロス。
反応?と二人で目を見合わせるユフィと王女を、はいはい仕事しましょうね、とエアリスが片付けた。
ホルスターへ銃をしまうヴィンセントの目の周りが少し赤くなっているのに気付き、やっぱり可愛いやつ、と思うセフィロスであった。


某国の数ある砂漠地帯の内首都から遠く国境ぞいの所にその施設はあった。
別に入り口は地下にあるわけでもなく、堂々と地上にあったのだがどう見ても無害に見える老人が、ゆったりとその入り口を設けてある屋敷に暮らしている。
時々屋敷の外へリクライニングチェアを持ち出してくつろいでいる様子は、昔からここに住んでいて、いつの間にか近所の人が年月ともに立ち去って行き、でも住み慣れた土地を離れたく無いと思いここに住んでいる風に見えた。
しかし、それは見せ掛けだけで、その屋敷の暖炉の隠し扉から地下に大きな空間へ続く通路が隠されている。
老人は時節内部の人と連絡をとって様々な処理をしていたようだが、潮時が来たのか最近ぱったりと暖炉の通路へ通うことはなくなり、しばらくするとその屋敷からもいつのまにか姿を消していた。

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