リーブは自分の情報を話し終わってからルーファウスの顔を見たが、その表情からは何も読み取れなかった。
「言っておくが、全面的に協力するというわけでは無い。」
言葉の一つ一つに力を込めるようにルーファウスが口を開いた。
「どういうことですか。」
事情を聞いてみないことには何とも言えないが、リーブとしてなるべく全面的な協力を取り付けたいところだ。
「条件としてはおたくのセフィロスがツォンから奪ったPCを、絶対に私達の指定の場所まで持って行くか、最悪廃棄することだ。」
リーブの目がきらりと光った。
ナナキはテーブルの下でまだのんびりと寝そべっている。
「あの、PCに重要な情報が入っていたんですね。しかも、セフィロスが持って行ってしまったと。」
リーブはルーファウスがぴくッと眉を動かしたのを見てこれは使えるかもと思った。
「できればどんな事情か教えて欲しいですね。宝条の研究と関係がありそうですが。」
ルーファウスはちょっと迷っている様子だったが、ここまで来てしまったら言わないわけにはいかなくなってきた。
「すまないが、会議室のモニタと集音装置を切ってくれ。」
ルーファウスは席を立って、警備室のへ連絡をとった。
リーブは下で寝そべっているナナキにうまくいきそうですね・・・と合図を送った。
モニタと集御装置が切れたと確信できるまでルーファウスは口を開かなかった。
リーブは彼が口を開くのをじっと待っている。
そして、机の下に入るナナキはすうっと、ルーファウスの方へ寄って行った。
そんな動きには気付かずにルーファウスは話し始めた。
「セフィロスの持っていったPCの中には、私の会社が回収したかった情報が入っているんだ。」
リーブはルーファウスの話しを聞きながら何か伺えないかと彼の目を見ていた。
「この調査をもともと始めようと思ったのが、その情報を回収するのが目的だった。
某国に潜入して、宝条が怪し気な研究をしていた証拠を隠滅するのが目的だ。」
「隠滅とは、また穏やかでは無いですね。彼を凶弾する材料を集めるのでは無いですか。」
リーブがあいづちを打つと、ルーファウスは確かに・・・本来はそのはずだ、と言葉を続けた。
「ただ、知っている通り宝条はいま行方不明だ。
しかも、神羅カンパニーの取締役としていた時に姿をくらましている。
いくら個人的な研究に会社は関わっていなかったとはいえ、内容があまりに非人道的で、うちにも監視責任が発生するような実験をしていたら会社の方にも危険が及ぶ。
社会的責任を免れようとしているわけでは無いが、やはりあいつが何をしていたのか事前に調査したかったと言うのが本音だ。」
ルーファウスは表向きに何かまずいことがあった時の声明文を読む第一声のような感じだった。
「あなた最初に揉み消すつもりって言いましたよね。」
リーブはルーファウスの注意をこちらに引き付けるようにわざと突っかかった。
セフィロスの方の情報はこれで大体分かった、あとはヴィンセントが持ってきてくれた情報の方、兵器の輸入をしたか確かめなければ。
「揉み消すなんて言っていない。」
思わずルーファウスが声をあげた瞬間、ナナキがすうっとルーファウスの椅子の正面へ辿り着き、彼の足を前足でちょっと押さえた。
「!?」
ナナキと目をあわせると、彼は脅すように喉をガルル・・・と鳴らした。
「リーブ、これはどう言うことだ?」
ルーファウスは状況が読めずに少し動揺したようで、声が上ずっている。
「本当はもう一つ、質問があるんです。あなたの会社、生化学兵器を某国から輸入したんじゃないですか。」
「なんでそんなこと答える必要がある。」
ルーファウスが答えた瞬間にナナキのしっぽがすっとルーファウスの服をかすった。
「彼の種族のしっぽの炎はウソをついている人にかすると、炎が燃え移るんですよね。髪に。」
「うそつけ。」
「試してみますか。さっきの質問で。」
リーブはにっこり笑った。
ー・・・
ルーファウスはリーブの言葉をあからさまに疑っているようだったが、でも万が一本当だったら髪が黒焦げになるのだ。
命に係わらないとはいえ(笑)かなり躊躇しているようだった。
ナナキは両足をさらにルーファウスのそれに押し付けて、逃げられないようにしっかりと力を入れている。
かなりの時間リーブとルーファウスは睨み合っていたが、とうとうルーファウスの方が口を開いた。
「はぁ・・・こんなに早く白状することになるとは。」
ルーファウスは観念したようにナナキをちょっと蹴った。
ナナキのしっぽがルーファウスを掠めそうになって彼はびくっと身体をすくめる。
「別にずっと黙っているつもりは無かったんだが、こんな脅し方は無いんじゃ無いのか。」
リーブは自分の作戦が成功したのを内心かなり喜びながら、ナナキに合図する。
「どんな生化学兵器を輸入したんですか。」
ナナキはすっかりルーファウスの膝に前足を載せて、しっぽをぶんぶん振り回している。
「天然痘ウィルスの兵器だ、ってこいつのしっぽ普通に触ると焦げるじゃないか!」
炎なんだから、当たり前です。とリーブが答えた。
「あなた、分かってて天然痘の兵器を買ったんじゃ無いでしょうねぇ。
そんなことしたら、私神羅カンパニーを潰しますよ。」
リーブが脅すと、さすがにルーファウスも、私にも良心がある、興味のある生化学兵器があると聞いてサンプルをもらったんだ、と話した。
「と、いうことはまだ正式に取引はしていないと。」
「そうだ。まさかあんな危ないものを持ってくるとは思わなかったし、あと、宝条のことがあったので調査を開始するのにちょうど良いと思ったんだ。」
「ちなみに、どんなルートで紹介を受けたんですか。」
どんどん質問して行くリーブと、プレッシャーをかけるナナキに挟まれて、監視カメラを自分から切った浅慮を呪ったルーファウスであった。

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