ミッドガルではリーブがルーファウスと対峙していた。
穏やかなごく普通の午後のお昼過ぎ、季節は春、今にも眠くなりそうな陽気ではあったが、リーブとルーファウス、そして一緒に来たナナキ(は机の下に控えていた。)の間には緊張感溢れる空気が流れていた。
「新しい情報が入ったと聞いた。是非話してくれ。」
ルーファウスは楽しそうにリーブヘ話し掛ける。
リーブはルーファウスの顔色を伺いながら、どの話からしようかと自分の頭の中のメモを繰った。
足下にいるナナキを撫でる。
ーどのカードから行くのが一番有利ですかね。
リーブ的には一応プランは立ててから来るのだが、相手を見つつ交渉を進めるのは交渉スキルの鉄則。その場その場で組み換えるのだ。
「そうですね、二つ程新情報があるのですが。どちらもあまり楽しくないですよ。」
「調査事項事体が面白いものではないからな。?」
ルーファウスが携帯を見て、リーブに失礼、と言いながら着信メールを見た。
内容を見て、くすりと笑うとルーファウスはリーブの方を向いた。
「失礼した。ツォンからの報告だ。おたくのセフィロスとやり合ったそうだ。」
ー?ツォンが某国へ?
「もしかしたら、君は知らないかもしれないが、この案件一度キャンセルしようとしていたんだ。
そうしたら、いやにセフィロスが食い下がって来たのでそのままにしたのだが。」
それにしてもあんなに某国の調査にこだわっていたのはなんでだろうな?と続けるルーファウスの言葉にリーブは心から脱力した。
ーセフィロス・・・相変わらず我がままの限りに仕事を利用してますね・・・
セフィロスの動機がそんなでも、結果的には今までの案件は成果をかなりあげているので今の位置にいるわけで。
「ちなみにツォンとセフィロスがやり合った原因を聞いてもいいですかね。」
リーブは微妙にやる気をそがれた感じで、ルーファウスに質問した。
「まず、そちらの話を聞いてからだな。」
リーブはまあそれが目的ですしね、と答えて話し始めた。


第三王女の宮殿では朝のあわただしい時間だった。
ヴィンセントは朝食時に王女に会おうとしていたのを思い出し、ユフィはうまく手配しているのかと起きたとたんに気になった。
今日はこの国へ来て四日めだ。取りあえず目に見える成果は何もない。
隣にはエアリスがぐっすり眠っている。
ー・・・警戒心のないやつ。
彼女はパティオから帰る時に侍女の部屋へ匿ってもらおうとしたのだが、ユフィがかえってヴィンセントの部屋から監視カメラを取った方が安全だと言うのでこちらへ移したのだ。
でも、追っ手からずっと逃げ続けていてやっと安眠できる場所だったのかもしれない。
「エアリス、おつかれさま。」
ヴィンセントは彼女の髪をなで、頬に軽くキスをした。
エアリスがぱちりと目をさます。
「悪いな、起こしてしまったか?」
「今のセフィちゃんが見たら、モーレツに嫉妬するね。」
エアリスがヴィンセントを見上げながら言った。
「きっとセフィロスは私と話をする人すべてに嫉妬してるな。あの様子だと。」
ヴィンセントは冗談めかして答えた。
エアリスはそう、セフィちゃんは相変わらずね、とにっこり笑うところんと寝返りをして、彼の手をとった。
「もしね、ヴィンセントが困ってるなら私からそれとなく伝えてもいいのよ。」
相変わらずエアリスは勘がいい。それは困ってはいるのだが・・・
「でも、セフィにちゃんと考えるってはずみで言ってしまったし、何よりセフィロスは真剣だからね。」
あまり人頼みにはできない、と言うと、へえはずみでねぇ・・・、とエアリスは手を離して興味深そうにヴィンセントを見た。
まあ、どんなはずみだったのか今度ゆっくり聞かせてもらいましょうか、と言うエアリスにそれだけは絶対に白状したくないと自分の失言を後悔するヴィンセントであった。
ノックの音がしてユフィがヴィンセントを呼びに来たので、ゆっくりおやすみ、とエアリスに声をかけて部屋を出た。
複雑な通路を通って、王女の部屋へつくと彼女は着替えてベッドへ座っていた。
「朝食はまだなんですか。」
ヴィンセントは思わず口に出した。
「お腹空いているの?用意させましょうか。」
彼が答える前に侍女を呼び出そうとしていたので、ヴィンセントは焦って王女を止めた。
「私は大丈夫です。それよりもお願いがあってきたのですが。」
王女は、分かっているわ、と言って彼女が座っているベッドの隣をたたいた。
ー座れってことだよな。
ヴィンセントは少しだけ彼女との距離をとって隣に座った。
「私はこの国を出たことがないの。だから、私に面白い話を聞かせてくれたらあなたの頼みを聞いてあげても良いわ。」
王女は楽しそうに話し始めた。
ーなんか昔話みたいな展開だな・・・
ヴィンセントの知っている昔話は大体面白い話をするとその相手が良いものを出してくれるというものなのだ。
「面白い話といっても、あなたがどんな話が好きか分かりませんので・・・」
ヴィンセントは余計なことはいいたくないと思いつつ、様子を伺った。
「そうね。」
王女は私の方を向いて、にっこり笑った。
「最初はあなたがいっていた、愛する人、の話から聞きたいわ。」
ーそんな話万国共通だろう・・・
思わず突っ込みを入れたくなったが、彼女の譲歩を引き出すためだ。苦笑いと取られないように少し微笑んで、本当に聞きたいんですか?と念押しした。
「とっても。」
ー・・・えーっと・・・
「私の質問に答えてもらうっていうので良いかしら。」
王女は強引にいうと、ヴィンセントの顔を下から覗き込んだ。
「どんな外見の人?」
ーはっきりいって、選択の余地無いじゃないか・・・
しょうがないのでヴィンセントはうんざりしているのを気取られないように笑顔で答えた。
「朝食を食べながらにしましょうか。」
あなたの答えを聞いてから持って来てもらうわ、という王女へ軽く殺意を抱きながらヴィンセントは答えた。
「栗色の長い髪で、賢そうだけど・・・どこかに危うさがある、美しい人です。」
「名前は?」
「・・・ルクレツィア。」
チェーザレ・ボルジアの妹ね、といってさしずめあなたはお兄さんなのかしら、と言い出したので、私は年下でした!と思わず余計なことをいってしまった。
「ふうん・・・」
王女はヴィンセントの失言にかなりおもしろそうな感じだった。
「じゃあ、」
と王女が言葉をつなげたとたん、天井が、ガコン、と音がした。
思わず二人とも天井の音源の辺りを見上げると、天井の石がするすると空いて、できた隙間から何かが落ちて(?)きた。
ー人!?・・・セフィか?
一瞬何が起こったのか分からないヴィンセントと、びっくりして彼に抱き着く王女にすっと、刃を向けて上から落ちてきたセフィロスがいった。
「そこの女。俺の男に手を出すな。」
ー・・・私はお前の男じゃない・・・
という突っ込みはおいといて、ヴィンセントは王女が危ないので彼女を自分の背後へ匿った。
セフィロスは正宗を彼の背後へ定めつつ、ヴィンセントには王女への敵意が手に取るように分かる。(笑)
「ヴィンセント、その女に丸め込まれて無いんだろうな。」
セフィロスの言葉を聞いて彼は思わず
ー丸め込まれていれば・・・
と思ってしまった。(ごめん、セフィ。by筆者)
「セフィ、どうやってここへ来たんだ。」
ヴィンセントは取りあえず王女への関心を反らそうと彼に声をかけた。
「ヴィン、あのさあ、俺にありがとうとかないわけ?
俺が来たおかげで、そこの女の妙な質問に答えなくて良くなったんだし。」
正宗の切っ先が鈍ったのを感じて、あなたヴィンセントっていうのね、と王女がいった。
彼が、そうです、というのをきいてセフィロスが切れそうになっていた。
「ヴィン!」
ヴィンセントはセフィロスを落ち着かせて正宗を鞘におさめさせ、彼の手を取り自分の隣に座らせた。
不満そうなセフィロスの対角に王女が座る。
「こんなことになってしまいましたが、話を聞いて下さい。」
と、ヴィンセントは王女へ本題を話し始めた。

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