「朝だぞ、起きろ。」
ヴィンセントはソファにいるセフィロスに声をかけた。
ー本当は朝寝坊をしたかったのだが、絶対あいつは今日は出勤のはずだしきっと起きられないに違いない。
ー手間のかかる子供だ。
全然起きないのでソファに座り髪をなでる。
「あさーーだぞ。」
ちょっと大きい声で言ってみたがまだ起きる様子がない。
耳もとで怒鳴ってやろうと身体をかがめた。
「!」
腰を抱かれた。
「夢と一緒だ。」
「起きてたならちゃんと返事しろ。」
とりあえずソファから立ち上がろうとしたが、全然離さない。
「お前今日は出社するんだろう。昨日の報告をしないと」
「夢と違って全然色っぽくない。」
ー何の話をしているんだ?全く寝ボ助め。
「とにかく私は今日は休みだからな。お前はさっさと出勤しろ。会社まで送って欲しかったらそれぐらいしてやる。」
「それだけ?」
なぜか拗ねるセフィロス。
「充分だと思うが。」
しっかりヴィンセントの腰を引き寄せ、セフィロスは彼の膝に頭を載せた。
「今日は俺も休む。」
1ミリも動くもんかと言う勢いで目を閉じる。
ーっていうか私はお前を起こしたら朝寝をしてブランチを取って、ゆっくりしたいんだよ!居着かれたら困る!
ヴィンセントは彼を動かす方法を一生懸命考えはじめた。まったく昨日の今日でなんでこんなに頭を使わなくちゃいけないんだ。
「離して欲しい?」
セフィロスがヴィンセントを見上げて話し掛ける。
「離して欲しい。しかも出勤して欲しい。」
「やーだよっ」
ーこいつ・・・
思わず銃を探してしまった。いや、冷静に冷静に・・・昨日は上手い具合にいったんだから今日も甘甘作戦でいくか?でも、腰の手を離させるのはちょっと厄介だ。それよりは・・
「セフィ」
顔を近付けて彼の口元に話し掛ける。
「本当に休むなら連絡をしないと。もういい大人なんだから。」
セフィロスの手が腰から離れてヴィンセントの顔を包んだ。
「正夢だったのかな。」
彼はわけの分からないことを言っているが手が離れればこっちのもの。腕を掴んでわきの辺りをちょっとくすぐった。
ーあれ?
無反応。それならひじを持って・・・
セフィロスはヴィンセントの顔をぐっと近付けて起き上がった。そのまま彼におおいかぶさり、ヴィンセントは自動的に彼に押し倒される格好になった。
「セフィ、朝っぱらから何がしたいんだ。」
ー作戦変更だ。手を離す迄は良かったが、寝起きなのにあんなに素早く動くとは。彼はくすぐりに強かったかな?小さい時は結構すぐに笑い転げてたけど。
「う〜ん、夢の続き?いや夢の通りにしたらどうなるか確かめるか?」
「何の夢を見たんだ。」
あんまり夢夢言うのでしょうがないので聞いてみた。
「こんなん。」
セフィロスはヴィンセントをぎゅっと抱き締めて首筋に舌を這わせ、キスを始めた。
ーちょっ、そこはやだ!
思わず目をつぶってぞくぞく感をやりすごす。引き剥がそうとした手に力が入らない。
セフィロスはお構いなく舌をぴちゃぴちゃとさせ吸い上げた。
「はあん・・・」
思わず声を上げた。
「ここの方が感じるんだな。」
セフィロスが耳もとに口を寄せ、耳たぶを甘がみした。舌で弄ぶ。
「やめて・・はあっ・・お願い。」
首筋全体をなめあげんばかりの愛撫に力が抜けていく。なんでこんなピンポイントで攻めてくるんだ。なんとか退かしたいのに、舌が這い回る度に力が抜けるじゃないか。
ぶるぶると身体を震わせヴィンセントはセフィロスの腕に手を載せた。本当は力を込めてすり抜けようとしたのだが、思う通りに動かない。
「かわいい・・・こんなヴィンが好き。」
セフィロスは御満悦でさらに激しく愛撫する。
ーやだっ、このままじゃ変になる!
自分では身体を捩らせて逃げようとしているのだが、セフィロスには快感に耐えきれなくて反応しているように見える。
「はあっ・・・はあっ・・・」
息を切らせて目をあけるとセフィロスがキスしてきた。
「もっと良くしてやる。」
ーいいって!!
「いいから、もう、私から離れて、あっああん」
全くヴィンセントの言葉を聞かずにセフィロスは首筋をしつこくなめ上げた。
「夢だと凄い声を上げて反応してた。本物の方が現実味があるな。色っぽさはこっちの方が上かな〜。」
ー何の夢を見たのか見当がついたぞ。色欲魔人め。
ヴィンセントは彼の舌が自分の胸の方へ下りる前になんとかしなければとくるりと彼に背中を向けた。
素早くセフィロスが後ろから彼の胸を撫ではじめた。
「あっあんっ、あはん、ああっあああっつ」
後ろのうなじへの愛撫と一緒になってヴィンセントは身体を縮こまらせた。
ーもうだめかも・・・
突然彼の愛撫が止まった。
ヴィンセントはびっくりしてセフィロスの方に顔を向けた。
「気持ちよくない?」
セフィロスは彼をじっと見て言った。
この間でなんとか平静さを取り戻す。危なかった・・・
「セフィ、会社に連絡するか出社しなさい。」
「今日もここに帰ってきてもいいか?」
ーほんとは嫌なんだが、
「ほんとは嫌か?」
ヴィンセントは2度びっくりした。
「ほんとは嫌なんてどうして思った?」
彼は身体を起こしてソファの背もたれに寄り掛かった。
「昨日の夢で本当はヴィンセントは俺といるのが嫌だと言っていた。」
ーまた夢か・・・一体どんな夢だったんだ。
「状況によっては嫌だし、でもかわいいセフィには変わらないから結局は受け入れてしまうよ。」
「ほんと!!」
ーまずいこと言ったかも。
「じゃあ、もうでる。今日はこっちに帰ってくる。電話するから。」
ーなんかうきうきしてるし。
そこはかとない不安を感じつつセフィロスを会社へ送りだすヴィンセント。
ーまさか、帰ってきて続き、なんてありそうでやだ。さて、どうやってかわすか考えなければ・・・
また余計なことに頭を使うはめになってしまったヴィンセントであった。

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