リーブが次の日出社すると、机の上に伝言がおいてあった。
ールーファウス社長が今日の午後会いたいとの事。要折り返し連絡を。
ー乗って来ましたねぇ・・・
リーブはちょっと楽しくなって来た。
大体彼ぐらいの地位になると面白いつばぜり合いの交渉は全部部下に振られてしまい、できなくなってくるのだ。
連れて行く予定のナナキに連絡を入れると大丈夫だと言う。
ーヴィンセントの情報ともう一個ぐらいサプライズ情報があると面白いんですが。
と、思っているとセフィロスからメールが入って来た。
ーー某国は変な遺伝子操作実験をしているようだぞ。
実験サンプルを実際に見た。
あと、宝条が加担していたらしい証拠も見つかった。詳しくはあとでーー
ーまた、ナイスタイミングですねぇ。
リーブはセフィロスの情報はどう使おうかと思いながら、楽しく交渉プランを考えはじめた。
一方ヴィンセントとエアリス、ユフィはどうやって明日オアシスに向うかを検討していた。
「やっぱ王女に直接頼むのが一番穏便だと思うよ。」
ユフィは結構王女信頼派だ。
「私としては、いっその事屋根を上りたいんだが。」
ヴィンセントとしてはこれ以上王女と関わりたくはない。
「でも、屋根を上るとかえって目立つんじゃない?」
エアリスはいい考えが浮かばないのなら王女に頼るのもありかな、と思っていた。
その時、ヴィンセントの通信機へメールが入って来た。
ーー地下の実験施設は調査し終わった。そっちはどうだ?ーー
「セフィロスだ。」
ヴィンセントは安心したように息を付いた。
「さすがセフィロス様ね。もう任務完了とは。」
エアリスがにっこり笑った。
ヴィンセントはセフィロスにメールを送った。
ーーこっちはエアリスと合流している。第三王女の宮殿からオアシスヘ向かうーー
送信を終わって、さてさてどうやって宮殿から出るかと言う問題に戻る。
「ヴィンセント、やっぱり王女に外出許可をねだったら?」
大分沈黙をしていたが、エアリスが口を開いた。
あからさまに嫌そうな顔をするヴィンセントを、まあまあ、となだめて
「ちょっとうまく行くかもしれないかなっていう、考えがあるの。」
と、エアリスは続けた。
セフィロスはツォンの手にあるカプセルを一緒に見ていた。
カプセルの中には小型のチップが入っていて、ツォンは勝手知っているようにそれをPCカードのアダプターへ入れ、小型のPC へ入れた。
「それには何が入ってる。」
セフィロスが不審そうに尋ねた。
「これがあの実験工場へ入った目的だ。せっかくだから見せてやる。」
ツォンはPCの画面をセフィロスにも見えるように向けた。
チップの情報を呼び出すと、どう見ても訳の分からない記号と数字、アルファベットが並んでいった。
「宝条め、やっぱり暗合化していたな。」
ツォンは呟き、その情報を保存すると、ソフトを起動してパスワードをいれた。
そうすると、呼び出されたのは化学記号と塩基配列と染色体の関係図、あとは雑多な数式、タンパク質構成、そして最後の方は日記のように見えた。
「ふん、これはきっとあの異常なモンスターの作り方だな。」
セフィロスは塩基配列と、化学記号、染色体図を比べてみながら言った。
「さすが、わかるんだな。」
ツォンはセフィロスの方を見ずに日記の方へ進む。
日記の日付けは10年程前から始まっていた。
ツォンがその記録をざっと見ている時に、セフィロスの通信機へ連絡が入って来た。
ーーセフィロス、オアシスで落ち合うためにヴィンセントが王女へ外出許可をとりにいっているわ。でも、もしかしたら王女ヴィンセントが気に入っているから身の危険があるかも・・・なるべく私も邪魔するようにがんばるけど!ーー
エアリスからだった。
ーげっ、ヴィンの身の危険!!大変だ!
いや、セフィロスさんこんなわざとらしいメールにそこまで反応しなくても・・・
セフィロスはすっと正宗を抜くとツォンの首筋に刃をあてた。
「!セフィロス!」
ツォンがびっくりしてセフィロスの方を見る。
「ツォン、お前第三王女の住居の見取り図持ってるだろう。出せ。」
「・・・(いきなり何を言い出すんだ・・・)」
「さっさと出せ!!」
刃が本当に首筋に食い込んで来そうになったので、ツォンは自分の持っているPCを指差した。
「これに入っている。」
「呼び出して見せろ。」
ツォンはなるべく時間を稼ぎたかったが、セフィロスが尋常じゃない(笑)様子だったのでさっさと見取り図を画面に広げた。
ざっと見取り図を見たセフィロスはツォンの首筋にさらに正宗を突き付けつつ、PCを自分の手に移した。
「悪いな、ツォン」
そう言いながら、セフィロスは正宗を峰打ちの方向へ向けながらツォンの腹を強打した。
「うっ・・・」
ツォンが倒れると同時に正宗を鞘へしまい、セフィロスは着陸の時に使ったボードを取り出し足に装着すると、PCを小脇に抱えつつ、砂の上を滑るようにさぁっと首都の方へ砂漠を去っていった。
ーセフィロスめ・・・絶対社長に報告してやる・・・
これはツォンの悔し紛れの一言である。
「あのな、エアリス。私としてはこんな見え透いた作戦が成功するとは思えないんだが。」
失敗した時の自分リスクがあまりに大きいので、ヴィンセントはメールを送り終わったエアリスを説得にかかった。
コントローラをヴィンセントに渡しながらエアリスはにぃーーこり笑いかけた。
「ヴィンセント、心配はいらないわよ。セフィちゃんは絶対くるから。」
ー何を根拠にそんな確信を・・・
鈍いヴィンセントには分からないだろうが、読者諸子にはもうその結果が見えているはず(笑)。
「とにかく、この作戦の目的はセフィちゃんを呼び寄せるのが第一の目的ではないし、」
と、エアリスはユフィを見た。
「まあ、説得の仕方が相当まずくなければ王女の方は大丈夫だと思うよ。」
ユフィはお気楽に答えた。
「それよりも気になってたんだけど。」
ユフィはヴィンセントの方を向いた。
「あんたって、ホモ?」
「ノーマルだ!!」
まったく最近の女性は・・・とため息をつくヴィンセントを慰めながら、ユフィ、ヴィンセントをからかっちゃダメよ、とエアリスがフォローした。
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