目はかなり暗闇に慣れているが、明るいところで戦うのとは比べ物にならないくらい遠くは見えない。
モンスターの接近は足音と気配を感じ取れるように感覚を研ぎすます。
整然と並んでいる机の影に身を潜めながら、ゆっくりと進みさっきのウロコのモンスターの背後に出た。
正宗をさっくり突き刺そうかと思ったが、堅そうだったので取りあえずファイヤで焼いてみる。
ぼおっと炎があがるとその明るさに引き寄せられるようにモンスターがぞろぞろ集まって来た。
「セフィロス、引き寄せてるぞ。」
「剣で切るよりも確実だったんだ!」
黒焦げになりつつあるモンスターに近付いてセフィロスは驚いた。
モンスターだと思ったウロコの節々に人間の顔が3〜4個浮かんでいる。
彼はツォンの方を見た。
「人面モンスターなんて初めてみたぞ。」
「これが多分研究成果だ。」
ツォンは冷静に答えた。
ー研究って、何をやってるんだ。
ツォンに聞く間もなく次の敵が近付いて来たようだった。
「ツォン、その辺に燃やせるもんないか?」
セフィロスはとにかく視界を広くしたくて話し掛けた。
ツォンは黙ってモンスターを見る。
何となく夢見が悪くなるような気がしたが、例のモンスターをもう一回焼くことにした。
肉と油の焼ける臭いとともに、なんとなくモンスターの表皮にある人面が歪んで行く気がして彼は吐き気がした。
「少しは明るくなってるな。」
自分の心の弱さを戒めるように、ツォンに話し掛ける。
ツォンは黙って拳銃のねらいを定めると、取りあえず近付いてくるモンスターを片っ端から討ち始めた。
敵が怯んだ隙にツォンはセフィロスの腕を引っ張った。
「こっちへ来い!」
引っ張られた方向へ全力で走る。
ツォンの銃撃で少し怯んでいたモンスターも、もう銃弾が来ないと分かると追い縋って来た。
「上にあがるからな。」
端的に目的を伝えて、ツォンは壁際のスイッチを押し、セフィロスは近付いてくるモンスターをファイアで取りあえずどんどん退けた。
一個一個よくは見えないが、見た限り全部人面モンスターのように見える。
ーなんか嫌な研究をやってそうだよな。
セフィロスはできればこんな研究を調べたくない・・・と思いながらツォンの様子を見た。
エレベーターはなかなかこないようだ。
「こんな古い施設のエレベーター壊れているんじゃないのか。」
つっけんどんにセフィロスが言うと、
「大丈夫だ、エレベーターは新羅製作所製だからな。」
と妙な答えが返って来た。
ーこういうの、大企業病っていうのか?まあちゃんと動けばいいけど。
彼としてはツォンの保証が欲しいのではなく、確実な脱出プランが欲しかったんだが・・・
少しずつモンスターとの距離が縮まって来て、何となく囲まれている感じになって来た。
まあ、一匹一匹は雑魚だったのでどんどん魔法で片付けて行く。
「こんなえさも何もない空間にこれだけ生き物がいるってことは、恐らくかなり飢えているだろうな。」
時間潰しにツォンに話し掛ける。
と、ガコン!と音がして背後の扉が開いた。
「乗るぞ。」
セフィロスとしてはかなり乗るのは不安だったのだが、中に入った。
しかし、・・・いくら待っても動かない・・・
モンスターがエレベーター扉の前にわんさと詰め掛けて来たので、セフィロスは正宗で次々切り倒して行った。
「ツォン、さっさと動かせ!」
「分かってる!」
彼にしては焦っているのが声で分かった。
エレベーターの前にはセフィロスが切ったモンスターが積みあがっていく。
真直ぐに襲い掛かってくるやつもいたのだが、不思議と集まっている数よりも少ない気がして視界を広げると、
ー喰ってやがる・・・
セフィロスが倒したモンスターを他のやつらが手許に引き寄せて喰いちぎっていた。
ーああそう、そうやって栄養補給しているって訳か。
吐き気を催しながら、きっと仲間のモンスターよりも俺達の方が数段美味しく見えるだろうよ、と思った瞬間ー
「うわっ!」
扉が開いたまま、箱が上に移動し始めた。
セフィロスは素早く正宗を鞘にしまうと、箱に入って来そうなやつらの前にサンダーを落とした。
「何が新羅製作所製だ!ぽんこつじゃないか。」
「うるさい!黙ってろ」
と、ツォンが答えた瞬間急にエレベーターは上昇の速度を急に上げ、彼等は重力に逆らえずに床に押し付けられた。
エレベーターはぐんぐん上昇して行き、体勢を立て直そうとして身体を動かすと同時に、
ドン!
と上から鈍い音がして二人のからだが宙を舞い、エレベーターの床に叩き付けられた。
「止まったようだな。」
ツォンが呟く。
いってぇなぁ・・・と思いつつ身体を起こそうとすると、セフィロスの耳にさらさらと砂の音が聞こえて来た。手許を見ると天井から砂がおちて来ている。
「モンスターの次は砂に生き埋めか?下に戻った方がまだいいんじゃないか。」
セフィロスが言うと、
「まずいな・・・」
と一言言って、ツォンはエレベーターのボタンの辺りを解体し始めた。
「セフィロス、この上は恐らく脱出口になっているはずだ。砂の重みで下へ下がる前に、天井を開けてくれないか。」
ー本当に大丈夫かよ。
と思いつつセフィロスは正宗の柄で天井のハッチを少しづつはずしていった。
ツォンは解体した場所から何やら取り出すと、ついでに何かを仕掛けている。
ガコ!と音がして天井が一気にはずれ、砂がドバッと入って来た。
「セフィロスすぐ上に扉があるだろ。急いであけろ!」
エレベーターが少しずつ下へ向かっている感触がする。
セフィロスはエレベーターの天井に手をかけ、目の前にあったマンホールのふた(のようなもの)を一気に上に押し上げた。
「急げ!」
ツォンに言われるのとセフィロスが地上に抜け出し、エレベーターが一直線に下へ向かったのがほぼ同時だった。
砂漠に降り立つとツォンは素早く鉄のふたを元に戻した。地下の奥深くで何かが爆発した音がする。
セフィロスはツォンの顔を見た。
「あんなもの、できれば他にやつらには見せたくないからな。」
ツォンはそういうと、ふたの上に元通りに見える様砂をかけた。
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