所変わって、リーブの執務室。彼はどうすればルーファウスの口を割ることができるか考えていた。
例のコントローラから着信が入る。
ーールーファウスは某国から生化学兵器を輸入したのかもしれない。ウータイのスパイが高機能のレーザー兵器を輸入して怪んで某国へ侵入している。ーー
ー相変わらずヴィンセントは冴えてますねぇ・・・
リーブは良い情報をもらったと思い、早速ルーファウスへ連絡をとった。
「もしもし、XXXのリーブですが、ルーファウス社長はいらっしゃいますか。」
秘書の女性が申し訳ありませんが、今日は終日外出で帰ってきません、との答え。
ーどうすればいいですかねぇ・・・できればこの情報をうまく使いたいんですが。
リーブはでしたらこちらからまた御連絡します、と言って簡単な伝言だけを伝えた。
某国の情報で新しいことが分かったので御都合の良い時間を教えて下さい、と。
内容を伝えようかどうしようか迷ったが、ルーファウスは一筋縄でいかないので取りあえず正攻法でいってみようと思った。
ーまあ、いくらやり手とは言え私の方が年の功が絶対ありますからね。
変な小細工は止めて、ちょっと面白い人を連れて行きましょう、と思ったリーブはやっぱり策士である。
セフィロスは比較的真直ぐ目的の座標に到達した。
さて、入り口を探そうと思ったら、そこに見慣れた男がいる。
黒髪、長髪、男、長身。
ー・・・
ヴィンセントだったら嬉しかったのだが、どう見てもツォンだった。
しかも自分が調べようとしているところを同じように調べている。
隠れるところのない砂漠地帯なので、すぐに気付かれるとは思ったのだがあえて声をかけずにいたら、ツォンはセフィロスに全然気付かずに入り口を見つけてさっさと中に入っていった。
ーあいつ・・・タークスとして失格じゃ無いのか?
と思いながらラッキー!と思ってするりとツォンの後に滑り込んだ。
忍び込んだ場所はだだっぴろい岩壁の空間が広がっていた。自然にできた砂の下の空間だと思うのだが、良く考えると不安定な土壌の砂の下に素直にこの空間があるわけは無い。
ー多分ここは元は砂漠では無かったんだろう。何かの施設を作って隠すために、ここも砂漠にしたんだろうな。
取りあえず十年前の地図を呼び出してここの座標を調べてみると、砂漠になっていた。
ーということは・・・
ここはもっと昔からそんな風に使われて・・・?
即決は避けた方がいいなと思って気を取り直し、ツォンを尾行することにした。
入り口らしきところに着く。
科学技術が無い某国にしては立派な金属製の扉が前に立ちはだかった。
ーこれは・・・何か無いと入れないぞ。壊していいならいいが・・・
さてさて、正宗で壊せるのかと扉の強度をたたいて確かめる。
「セフィロス、お前も入りたいんだろう。」
気配を消していたはずなのだが、隣にツォンがいる。
「やっぱり分かってた?」
セフィロスとツォンはどっちが先輩かといったらツォンの方が少し先輩になる。
「あたりまえだ、そうじゃ無ければお前を一緒に入れたりしない。」
やっぱり計算済みだったんだ、とまあ引っ掛かったのと相手を利用したのと半々ぐらいだったのでいっかと思っていた。
「相変わらずお前は最後の読みが甘いようだな。それできっとヴィンセントに迷惑をかけているんだろう。想像に固く無いな。」
言い返せないのが悔しい。同じ黒髪長髪でもヴィンよりも数段発言が辛いやつだ。
「とにかく、入れてくれるんだろう?」
セフィロスはツォンにストレートにきいた。
「あたりまえだ。そうで無ければ声はかけない。」
あっさりとツォンが言う。
ーきっと俺はハプニング要因なんだろうな。
そう思いながら、俺はラッキーに助けられている管理職かもな、と自分の実力を自覚するセフィロスであった。
ーヴィンセントはアンラッキーな典型だな。
それが俺にとっては良かったんだが・・・とやっぱり俺はラッキーなのかな、と思う。
大きな扉をくぐると中は普通の会社の風景だった。
ーおい、ツォン。お前どこを調べるのか分かってるのか?
セフィロスが話し掛ける。
ー心配するな。大体私の会社がお前の組織へこの案件を発注したんだぞ。
ツォンを信頼して無いわけでは無いが、でも発注元に提供する情報以上をゲットするのがセフィロスの仕事だ。
ーこの兵器工場はルーファウスにうちの情報が正しいか裏づけを与えるだけだな。
とセフィロスは思った。あまりうるさく質問して敵に気付かれるかもしれない可能性を作るのもいかがなものかと思ったので、その後は黙っていた。
長い砂漠の道程をかなり歩いてエアリスは大分首都の近くに接近していた。
ーとりあえず、尾行の人間はきて無いわよね。
背後を確認しつつ大丈夫か自分の心の中で何度も念押しする。
ーこの判断でOKもらえますように!
エアリスが祈ったのは、彼女が教えを受けた調査スキルの教官に対してかもしれない。
自分がつけられては元も子も無いのでかなりエアリスは慎重だ。
首都に入る前に気付かれてはしょうが無いし、入ってからはなるべく早く行動しないと、せっかくの極秘調査が某国サイドへ筒抜けになる恐れもある。
そういう彼女自身も、追われているのだから結構危ない立場なのだ。
ーヴィンセントのことだから大丈夫だとは思うけど、でもちゃんと落ち会わないとね。
王族の王宮に入るのに目立たない民族衣装の入手も必要だった。
エアリスは警戒をしながらも服をかりられる知り合いを通りつつ、最短で首都へいける道程を取った。
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