順調にオアシスに着いたエアリスとセフィロス一行は周りに誰もいないことを確認して作戦を練り始めた。
まず、エアリスは某国のこの周辺の航空地図を取り出した。
「落ち合うのをこの地点にしたのは、生化学兵器工場が一番ありそうだったからなのよ。」
ーだから、オアシスにいたヴィンセントを捕らえに刺客が来たわけか。
なんて危なっかしい計画をたてるんだよ、と文句を言うセフィロスであった。
「なるべく時間を節約したかったの。セトラであろうと無かろうと、外国との連絡を密にとっている人間だとばれるとすぐ国外退去になる可能性があるのよ。」
エアリスの広げた地図を見てオアシスから歩いていけるか?という微妙な地点に不自然に砂の様子が盛り上がっている場所があった。
セフィロスがその地点を指でなぞる。
「やっぱりいい勘してるわね。その辺に入り口がありそうよ。」
そこで、とエアリスが2人の役割分担を決めた。
有能なセフィロス様は生化学工場査察。
某国の地理に明るくて後宮ヘ入ってもバレなそうなエアリスさんはヴィンセント救出へ。
「ちょっと!エアリス汚いぞ。俺だってヴィンセントを救出したい!」
セフィロスが思わず本音を言う。
「そう言うと思って、セフィロス様へは特典を御用意致しました。」
こいつふざけてやがる、とセフィロスはエアリスをねメつけた。
「ヴィンセントを救出して、セフィロス様が工場から成果をあげる情報をゲットしたら、私に邪魔されない一日をプレゼント。」
にぃーーーこり笑って、あなた却下はできないわよ、と笑いかけるエアリス。
ーやっぱりエアリスの手の上で踊る俺とヴィンセントだ・・・
首を横に振らなかったのを了承の意志として受け取ったエアリスであった。
「最初はここが兵器工場か確認するのと、入り口のセキュリティをどうやって作っているかを確認して。あんまり技術が発達している国ではないので絶対は入れないって事はないと思うの。」
それとね、もし全然関係ない施設だったらさっさと引き上げてね。まあ、こんな隠れてあるようなところは碌な場所じゃないと思うけど。
「私がセフィロスにこっちを振る理由はね、私だと顔が割れている恐れがあるの。セフィロスだったら初めてこの国に来るわけだし、絶対に最初から警戒はされないわ。」
しかも軍人ぽいしね、といいヴィンセントは無事に助けるから安心してね。と付け加えてエアリスはセフィロスへ食料や何やかやを渡した。
「落ち合うのは3日後のこのオアシスで。変更の時はそのコントローラに連絡するわ。」
すっかり仕切られてはたして俺は本当に指揮官なのか?と思いつつエアリスと別れた。
ーっていうか。コントローラに連絡するって絶対ヴィンを救出する気!
なんかエアリスってとんでもないかもと思ったセフィロスであった。
砂漠は夕日で赤く染まって来ていた。
果てしなく続く砂の大地を見てふと自分の記憶の中にこんな風景は一辺も無いなと思った。
それがセフィロスの失われた記憶を掘り起こすきっかけになるのだが、セフィロスにとってそんなことを考えるよりも大事なことが目の前にあった。
ーとりあえずやることやってから、だな。
コンパスで方向を確かめて怪しい砂漠の座標へ向かった。
「アマルダ、といったか?」
ヴィンセントは王女が去った後にまだ残っている侍女に話し掛けた。
「お前は私の監視役なのか?」
侍女はそれに答えずに、天井にある隠しカメラと盗聴器をはずした。
あっけにとられているヴィンセントを目の前にいきなり服を脱ぎ始める侍女。
「えっ!ちょっと待て!」
焦る彼を無視して侍女は半そでにショートパンツの身軽な格好になった。
「はぁ〜、すっごく窮屈だったんだよね。あんたが王女に気に入られて良かったよ。そうじゃ無かったらこの格好いつまでやってれば良かったか。」
ベッドに無遠慮に腰掛けた短髪黒髪の少女はせいせいしたという感じで思いっきり伸びをした。
「お前もスパイなのか?」
ヴィンセントはあっけにとられて少女を見た。
「スパイって程じゃ無いけどまあこの国の内状を探りに来たのは一緒かな。」
彼女はユフィ・キサラギと名乗った。ウータイの地方の跡取り娘で最近彼女の地域で変なことが良く起こるので調べて行ったら某国へ行き当たったと言う。
「ウータイは最近政情不安定じゃないのか。」
ヴィンセントがいうとユフィは確かに、うちのおやじが取りまとめ役をしているけど隠れて戦争の準備をしているやつがいるんだ、とユフィが言った。
「まず、その戦争の準備の為の兵器の買い出しがここの国からだったことをおやじが突き止めた。」
ー兵器の輸出か。対外的には内乱があったことになっているから、特に不思議ではないな。
ヴィンセントはおとなしくユフィの話を聞いている。
「しかも、その兵器が今までじゃ考えられない程すごいんだ。某国は科学技術が発達しているわけじゃ無いのに、高性能な高エネルギーレーザー砲やら、追跡型ミサイルやら価格もなぜか安いし、あんまり怪しいンであたしが調査に来ってわけ。」
武器の中身を聞いてびっくりしたのはヴィンセントだった。
「私の方の情報は生化学兵器だったが、そんなものも輸出しているのか?」
今度はびっくりするのはユフィだった。
「生化学兵器も作ってるの?ますます分からなくなって来たよ。」
「いや・・・私の方の情報は実際に輸入したかどうか確認はしていないんだが。」
ーもしかして、ルーファウスの会社に輸入されたから調査の依頼があったのか?
リーブの方は順調に進んでいるか気になって来た。
「ねえ、お人形さん。」
ユフィが明るく話し掛ける。
「人形ではない。ヴィンセント・ヴァレンタインだ。」
むっとしてユフィを見る。
「ごめんごめん、だってあんた名乗らなかったからさぁ。あのさ、目的が一緒だったら協力しない?」
まったく屈託なく話すユフィを見てヴィンセントは誰かに似ていると思っていた。
ー幼い頃のセフィはもうちょっと思慮深気な子供だったな。ルクレツィアか?
全く私は誰にでもルクレツィアに結び付けてしまうな、と自分に呆れつつヴィンセントはユフィに言った。
「協力というが、お前はどんな情報元を持っているんだ?」
本当に役に立つなら協力してもいいな、と思った。調査の人間は3人しかいないし、思ったよりも手こずりそうなのは明らかだった。
「何寝ぼけたこと言ってるの。あたしは王女の第一侍女だよ。ウータイとこの国の例の兵器輸出関係でゲットした地位だよ。」
「そんなんで第一侍女を決めるのか。危ないな。ちなみにあの王女はこの国ではどんな位置にいるんだ。」
ユフィの話では、王女は部族の中で第三位の王位継承権をもつ某国で一番有力な部族だという。第一侍女と言うのは本当は見せ掛けで、どっちかと言うとユフィと王女は対等の位置でユフィが行儀見習いに来ているようなものだと説明した。
「でも、表向き外国人を受け入れないスタンスをとっているので侍女として一緒にいるわけ。」
「王女は何か知ってそうなのか?」
多分全然知らないと思うよ。良い子だもん。でも王宮の中とこの国の中をある程度を自由に動き回れるから、とユフィは言った。
「良い子ねぇ・・・」
ヴィンセントは自分が拉致られてされそうになったことを思い出して道徳的に問題がある子じゃ無いかと言った。
「脱がそうとしたこと?あれ、本当に人形遊びだよ。着せ替え人形にしようとしたわけ。
でも嫌がったら止めたジャン。もしかしてもっと怪しいことを期待してたの?」
悪戯っぽく笑うユフィに大人をからかうんじゃ無いと答えた。
「でも、あんた本当に整った顔してるねぇ。愛する人って誰?どんな人?」
話が変な方向へいきそうになったので、ヴィンセントはお前と協力することにするから分担を決めようと無理矢理話を戻した。
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