ヴィンセントはセフィロスよりもかなり早くオアシスに着いた。
というよりも、着地したらそこがオアシスだったのだ。
コントローラの地図を参照するとドンピシャでエアリスの言っていたオアシスの場所と思われた。
地図に追加をする。
草陰にうまい具合にかくれて池の方を見ると誰か一行とも言える集団が休んでいるのが見えた。
ー某国のものらしいな。
衣装がアラブ風の民族衣装で、しかもかなり身分の高い感じがする。
ー某国はたしか王族がまだいたっけ。
政治的な立場は微妙だが、確か民族ごとの族長のような感じでいたはずだ。
多分あの一行の主人は派手な宝石をいくつもつけている女性と思われる。
ー見つからなくて良かった。セフィに既に人がいるから慎重に来いと連絡しなければ。
例のコントローラに入力して連絡する。
シドが直前に持って来たこのジェット機能をコントロールする装置はどっちかと言うと多機能のコントローラの方が主な主役である。
DNA、その他個人情報をを読み込ませてパスワードとDNA等の身体情報が一致しないと他人が使えないようにしてから初めて起動する。
コントローラを持っている人間の間は専用の電波帯域と通信衛星を使って、連絡できる機能もある。
ーセフィは色々いじってたからもっと機能があるのかもしれんがな。
機械に弱いヴィンセントは取りあえず必要最小限の所しか使わなかった。
オアシスにいる一行はくつろいでいるのか全然動かない。付き人達も一体全部で何人いるのか不明だ。
ー全体の人数ぐらい把握したい。
ヴィンセントは草陰から少し身体を動かした。
付き人の1人がこっちを振り向く。
ーまずい、気付かれたか。
そのまま動かずにいると気付いた女は主人に耳打ちした。
ーどうすればいい?あれは相当警戒しているぞ。
女主人が立ち上がりこちらへまっすぐ近付いてくる。
ヴィンセントは取りあえずセフィロスにメールを素早く送信して周りを見た。
女主人がヴィンセントのいたところへ辿り着くと、そこには誰もいなかった。
「アマルダ!いないわね。」
アマルダと呼ばれた女は、きっと隠れているのでしょう、その内また気配を現しますと答えた。
ー油断ならないな。
ヴィンセントは近くの草陰にまた移動していた。
女主人との距離はわずかだ。
「アマルダ、どんな感じの人かは分かった?」
女主人の珍入者への興味はまだおさまらないようだった。
「ちょっと見た感じでしたけど、黒髪の長髪の方で細身でしたね。
男性とは思いますが、もしかしたら女性かもしれません。」
ヴィンセントはびっくりした。ちらっと見たぐらいであんなに分かるとは。
「私が探しましょうか王女様。」
「そうね。探す楽しみもあるけど、そんな人だったら私も早く見たいわ。
女だったら殺しておしまい。」
とりあえず、かなりまずいらしい事が分かったヴィンセントはなんとか気配を消そうとオアシスから少しずつ離れていった。
アマルダと呼ばれた女はまっすぐヴィンセントの所へ近付いてくる。
ーこいつ・・・なんでこんなに正確に分かるんだ。
女の近付く影をみて反対方向へ身を隠したら、肩を、ポン、とおされた。
「ゲームオーバーね、色男さん。」
顔を見ると、まだ少女のような黒髪の女だった。
「王女様、どうしましょう?」
私の側に連れて来て。と女主人は言った。



セフィロスはシドが狙った通りの座標へ着地した。
「おつかれさま、セフィちゃん!」
いきなりエアリスが声をかけてきたので仰け反るセフィロス。
「お前、びっくりするだろ!」
「そお?安心するかと思ったんだけど。ところで、あなたの相棒は?」
もう1人を探すエアリス。
「もしかして、逃げられたのかなぁ?セフィちゃんなさけないねぇ!」
ーこいつ分かってていってるんじゃないか?
みかけは美人できれいなのに、言動はまったくのおやっさん調である。
「逃げられてない!急遽別行動にしてヴィンセントはオアシスに向かっている。」
そのとたんにエアリスの顔色が変わった。
「セフィロス、ヴィンセントとの通信手段は?」
「これだけど・・あっ!」
コントローラの画面はヴィンセントからの着信があった。しかも緊急。
すぐに開くと、オアシスにいるある部族が来ていて身辺が危ないから少し時間がたってからオアシスに来いとあった。
「やっぱヴィンセントはこの国の言語をマスターしてるだけあるわね。
確かにオアシスは危ないもの。」
でも、砂漠の中でオアシスがなかったら大変じゃないか!
と食い下がるセフィロスにエアリスは、はいはいと答えた。
「でも、ないと困るからオアシスにいろんな人が集まるのよ。」
それを聞いて最初の作戦をヴィンセントが危ぶんだのが分かった。
ーはっきり言ってくれればいいのに。まったく、変なところで親心を出すんだから。
「とにかく、ヴィンセントと合流しないと。あっっ!」
着信があったので開くと
ーー某国の族長の関係者に拘束されるかもしれない。
取りあえず内部事情を探る。慌てないように。ーー
ーええっ!!!
セフィロスとしてはすぐにでも助けに行きたかった。
「エアリス、作戦変更だ!族長へ直談判しに行く!」
ーああ・・・これなのね、ティファの言っていたセフィロスの情緒不安定って・・・
エアリスはこいつを操作するのはできるけど結構めんどくさくって、体力使うかも、と思い始めた。
横で慌てて地図と民族構成図等資料を呼び出し始めるセフィロス。
あっそうだ、どの部族かも分からないんだった!、とヴィンセントへメールを送り始める。
「あのね、セフィちゃん!!」
エアリスはセフィロスからコントローラを取り上げた。
あっ、と声をあげるセフィロス。
「この作戦は、この国の生化学兵器査察を受け入れるための資料集めが目的なの。」
セフィロスをじいっと見つめるエアリスは恐かった。
組織の総裁に睨まれるよりも(何故か(笑))緊張が走ったセフィロスであった。
「でもっ!」
セフィロスは彼女へ抗議した。
「ヴィンがいなくなったら俺達のチーム2人になって、俄然不利だ。」
「セフィちゃん、そんなのわかってます!」
ぴしゃりとセフィロスを黙らせる。
セフィロスはエアリスを選んだことを後悔した。
自分がヴィンセントにかまけてても全然仕事が進む人物だと思って選んだんだが、とんでもない!、
もしかしたら自分とヴィンセントがエアリスに使われる作戦になるかもしれない、という気がした。
「とにかく!ヴィンセントは助けるけどなるべく表立たないで。
静かに、そっと連れ去るのよ。相手の王女だって、騒げない立場なんだから。」
ー王女!
セフィロスは思わず動揺した。
「王女って・・・」
エアリスは声を潜めてセフィロスへ話し掛けた。
「一応ね、情報は入って来ているのよ。そして、私達が侵入する情報もね。
その王女は侵入者を捕らえる目的で、それとなくオアシスへ行ったんだと思うけど。」
ー・・・そんなばればれ?
セフィロスはちょっと気が引き締まって来た。
「とにかく、ヴィンセントがその場で殺されなければ救出するチャンスはあるので落ち着いて作戦を立てましょう。
あの王女だったら、多分生かして自分の王宮に連れて行くと思うし。」
「殺すって・・・王族の権力がまだこの国には残っているのか?」
「オフィシャルには民主主義になっているんだけど、中身は全然。
でも政治的権限はないのよ。オフィシャルにはね。」
セフィロスは某国の事情を何となく整理し始めていた。
民主主義を国際的に歌っているが、本当は王権がかなり伝統的と言うか、人情的な部分でも残っている。
内乱はなかった。ということは分裂したと報道されている国は本当は一つ。
「なんかやばくないか?この国。」
とセフィロスがいった。
「ほんとにやばいのよね。知れば知る程。」
とエアリスが答えた。


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