部屋にシャワー室がないので船室をでた。
天候のいい中低空飛行で飛んでいるので、夜の闇の中星がきれいに見える。
廊下の向こうにシドが気持ちよさそうに煙草を吸っているのが見えた。
「シド、シャワー室はどっちだ?」
けだるそうに聞くヴィンセントをみてシドは思わず
「もう一緒に寝たのか?」
と言った。
びっくりして眠気もさめるヴィンセント。
「もしや、図星?」
と聞かれ、思わずシドを殴った。
いてぇ、と言った後になにも照れることねぇのによ・・・と続けるとヴィンセントはため息をついて壁に寄り掛かった。
「お前もセフィロス応援隊なのか?」
今度はシドが驚いた。他にもいるのか?
「・・・そんなにセフィロスは分かりやすいのか?」
聞き返すヴィンセントにシドは俺はもしやと思っただけだが、シエラに話したら絶対そうだって言うから確信したんだ、といけしゃあしゃあと答える。
「っていうか放っといてくれ。」
「そうもいかねぇよ。こんな面白いこと。あと、セフィロスに落ち着いて欲しいしな。」
それは組織のもの皆が思っていることであった。仕事は優秀なのだが、いまいち感情が不安定なので結婚かせめて恋人でもできれば落ち着くのではとだれもが思っているのだ。
「お前に絡むようになってかなり感情が安定して来たんだぜ。」
まあ、ヴィンセントに会った時は既にセフィロスが恋に落ちた(笑!!)瞬間だったので不安定なセフィロスをヴィンセントは見ていなかった。
「あいつは面食いだと思ってたけどな。
でも顔が良ければ男でも良かったとは意外だったぞ。」
シドは続けた。
ー私だって、男だと思って遠慮して欲しかった・・・
ヴィンセントは本当に心のそこから思った。
「でも、ヴィン、セフィロスはお前の愛していたルクレツィアの息子だろ。
全然繋がリがないわけじゃないじゃねぇか。」
「それが困るんだ。油断するとルクレツィアに迫られている錯角に陥る。」
特にあの栗色の髪が・・・と言いかけてルクレツィアの顔を思い浮かべる。
ありえないけどな、と言ってちょっと笑うヴィンセントを見てシドはこいつ女だったら組織の中でモテ狂ってただろうな、と思った。
「シャワー室は突き当たって右だぜ。」
ありがとう、と言って立ち去るヴィンセントを見ながら俺様もあぶねぇなと首を振るシドであった。


某国に近付くにつれて飛行船は高度を上げ、雲の中に隠れるように飛行した。
ちょうど雲が多い気候で良かった、と舵をとるシドとケットシーとして飛行船へ乗船したリーブは幸運を喜んだ。
エアリスとの遭遇地点へはパラシュートでおりるか、小型のグライダーを使うか天候状態を睨みながらセフィロスが決めかねていた。
隣ではまだヴィンセントが眠っている。
ーやっぱり昨日のが堪えたのか?ああ見えてヴィンは年だからな。
でも、寝顔を見られて嬉しい方がセフィロスにとっては先なのでどこまでもヴィンセントは哀れである。
コンコン、とノックがして入っていいぞとセフィロスが言うとケットシーがぴょん、と飛び込んで来た。
「あんさん、いけませんなぁ。ヴィンセントはんを作戦前に疲れさせて。」
挨拶も無しにいきなりそれかい、とセフィロスは猫に向かって悪態をついた。
ケットシーはそれを無視して、潜入の方法は決まったんかいな〜と怪しい大阪弁で話す。
窓の外から天気の様子を見る。
風は無さそうだ。でも、砂漠地帯まで行くと状況が変わるかもしれない。
ハンググライダーとパラシュートは位置を正確に定めるのが困難だ。
それ以外のジェット噴射のできる機具がなかったか?
そう思い猫に出せ!とおどした。
「相変わらずヴィンセントはん以外には恐いセフィロスさんやなぁ」
そう言いながら、背中に背負うジェット噴射はあるが最初に方角を決めてどこで到着するか加減しつつジェット噴射を操作するのが難しいとケットシーは付け加えた。
「お前ら自慢の最新科学でオートで大体調整はできないのか!」
相変わらず無理難題はすぐ出てくるセフィロスである。
そんなのできればすぐやってまんがな・・・と言いながら取りあえずシドに連絡をとってみた。
ケットシーからの連絡を受けてシドは何かいいものがなかったから考える。
ーホントはパラシュートが一番いいんだが、砂漠だと落ちたパラシュートが絡んで流砂にのまれることも稀にあるしな。しかも回収しないと潜入したことがばれる上に、かさばるし。
ピンポイントで着地でき、コンパクトでしかも着陸の直前で何かあった場合着陸地点を調整できるものと言ったら・・・
ーやっぱ開発中のあれかな。
不安は残るがあの二人なら使いこなせるかもしれない。
ーあと到着まで3時間・・・
考えている時間はない。
「おい、二人の血を採取してあれに情報を書き込んでくれ。」
シドは急いで部下に指示を出した。

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