ちなみに、リーブとティファはこのやり取りをばっちりみていた。
「長いキスでしたねぇ。」
と感心するリーブ。
「でも、あの様子だともう二人が結ばれるのは時間の問題よね。」
ニコニコしているティファ。
「う〜ん、私にはヴィンセントの理性が飛ぶか飛ばないかにかかっている気がしますよ。」
「でも、それじゃあセフィロスは自分から動いてもしょうがないってこと?」
「いえ、さっきみたいに自分から動いてヴィンセントの理性に揺さぶりをかけるんですよ。」
自分のことでもないのに色々と作戦を考える二人である。
「でもさ、セフィロスはそれでうまくいったとして、自分が求められているのかルクレツィアの面影を求められているのか悩まないかしら?」
「いえ、」
リーブはちょっと声を潜めた。
「さっきの様子だと、取りあえず落とせればいいって感じの顔でしたよ。
言葉では渋っていましたが、実際キスしてる時はかなり気持ちよさそうでしたからね。」
「さすがすごい観察力ね、リーブさん。」
ふふん、とリーブは胸をはった。
「これでも何人もの部下を統率して来ましたから、人の観察なんてお茶の子さいさいですよ。
特にセフィロスは分かりやすいですからね。」
「分かりやすくて悪かったな。」
リーブとティファはギョッとして声の方を振り向いた。
「お前ら、またのぞきか。」
セフィロスとヴィンセントがもう部屋から出て来ていた。
「全部見てたのか?」
ヴィンセントが顔を真っ赤にして恥ずかしそうに口に手をあてている。
「だって、私はセフィロス応援団ですもの!」
開き直ってティファが胸を張る。
「私は二人の恋路を見守る優しいおじさんをしているんです。」
訳が分からない立場説明のリーブだが、お前その割にはセフィロスの作戦を一生懸命考えてなかったか?
「とにかく!人ののぞきをするぐらいだったら、お前ら自分の心配をしろ!ティファはクラウド!リーブはさっさと嫁さんを探せ!」
ヴィンセント以外には完全に強気のセフィロスであった。
それを聞いたティファは膨れっ面をして言い返した。
「この観察は私の計画の一部なの!
そんなこと言うんだったら、セフィロスさっさとヴィンセントをものにしなさい!」
ーものにする?ちょっとティファ何を考えているんだ!
話にいまいちついて行けないヴィンセントがあせった。
「私の嫁の心配するなら、セフィロスあなただって嫁をもらってもいい年ですよ。
っていうか、嫁をもらう気がないんだったらさっさとヴィンセントとまとまって欲しいんですが。」
ーまとまる?何言ってんだリーブ!?
ヴィンセントはこのやり取りですっかり顔から赤みが引いて、セフィロスを見た。
「お前社内中に私のことが好きだと言いふらしているのか?」
「してない!こいつら妙に勘がいいんだ。」
ふてくされた感じでセフィロスはティファとリーブを睨み付ける。
二人とも睨み付けられてもどこ吹く風、という感じでニコニコしていた。
鈍いヴィンセントも何となく今回の作戦はみんなにはめられた気がして来た。
「セフィ、今度の潜入作戦能力的には全然別の人間でも良かったんじゃ。」
ヴィンセントの怒りが微妙に伝わって来て、セフィロスは焦った。
「良くない!特にエアリスとヴィンセントが集めてくれた情報からは絶対に能力の高い実行パーティーが必要だったんだ。」
「最初はそうでなかったと。」
ヴィンセントが畳み掛ける。
「いや・・・最初からなんかきな臭い感じだったし・・・」
微妙に視線をそらすセフィロスをみてリーブとティファは助け舟をだした。
「あのね、結果的にはこの人選は良かったのよ。
だって、内乱さえガセだったし。
そんな事前情報が当てにならない国はやっぱりベテランじゃないと。」
「そうですよ。私は別にこの話が無くってもあなたをそろそろ休ませないと、と思っていましたし。
この任務がなければ休暇をとらせようと思ってましたから。
まあ、思ったよりハードな任務になってしまったので、悪かったと思ってます。」
ヴィンセントは何となく納得がいかず、それについて言ってやろうと思った瞬間、
「ちょっと待って、ツォンから連絡が入っている。」
ティファが携帯を取り出した。
「ティファか?」
電波が悪いらしくザザーと雑音がかなり入っている。
「そうよ。なに?」
「今エアリスと一緒だ。かなり慎重に場所を決めたようだが、状況はなかなか厳しい。
時間を3時間程早めた方がいいぞ。今エアリスに代わる。」
「もしもし。」
すぐにエアリスの声が聞こえて来た。
「エアリスっ!大丈夫?」
心配そうにティファが言う。
「大丈夫よ。ツォンに偶然会ったの。でも、彼の言うことは本当。
思ったよりも某国内の情報網は厳しいわ。ミーティング地点へはヘリで来るのよね。」
「ええ。」
「昼間の間にきた方がいいわ。夜だと目立つから。あと2時間で準備できる?」
「皆揃っているし大丈夫よ。」
ティファはセフィロス、ヴィンセント、リーブの順に目を合わせた。
「なかなか計画通りいかなくてごめんね。待ってるから。」
エアリスは通信を傍受されるのをさけるように急いで携帯を切った。
ティファが指示をだす。
「ヘリの準備急いで。某国の近くまではジープでいく予定だったけど2時間短縮じゃ無理ね。
飛行機使えるか調べて。」
計画ではおとりのヘリを一機と、実際にミーティング地点へ行くヘリは現地へ行って調達する予定だった。
ティファは某国へ一番近い国際線空港を調べていたが、どこも今いち追跡されそうで不安な場所であった。
「かえってうちの飛行部隊を使った方がいいかもしれませんよ。」
リーブが助け舟をだす。
「そうかもね。シドに連絡とってみる。」
さっきまでのおちゃらけぶりはどこへやら、リーブもティファも完全に仕事モードへ入っていた。
「セフィロス、潜入地点についてからはどうするんだ?」
ヴィンセントが聞いてくる。
「取りあえず、エアリスに会って近くのオアシスへ潜入する。」
「会えなかった時は?」
自分の武器を確認しながら再度質問する。
「その時は俺達二人でオアシスへ向かう。ヘリの中でオアシスが見えたら方向を確認してくれ。」
一応某国の地図は持っているがオアシスの場所は移動することも多い。
しかも持っているのは10年前の地図でエアリスが指定した場所の近くにオアシスの印はなかった。
ー方向さえ分かれば大丈夫だ。
ヴィンセントは少しずつ緊張してきた。
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