物思いにふける様子をみてシドは我慢できずに話し掛けた。
「ヴィン、お前髪切らないか?」
ーは?
唐突に言われて思考が止まるヴィンセント。
「さっきから、すげー邪魔そうだし。」
本当は自分の妄想を止めるためなのだが、シド自身もそこ迄は自分で分かっていない。
「そうだな・・・邪魔は邪魔なんだがなんとなくな・・」
自分の髪を見つめながらひとふさ手にとる。
ー・・・そんな仕ぐさシエラでもしねーよ。
いや、すると思います。シドさんが見てないだけで。(・・・汗)
話がそれてきた時、資料室の扉が開いてセフィロスが入ってきた。
シドと話をしてる様子をすぐに見つけて飛んでくる。
「ヴィン、なに色気を振りまいているんだ。」
セフィロスが素早く隣に座る。
「!色気!何言っているんだ。万年色情狂が。
今、シドに某国の情報を聞いているところだったんだ。」
髪から手を離して言い返す。
「それよりナナキが探していたぞ。お前が仕事さぼっていると。」
「もう片付けてきた!」
とてもモニターで見たシドとヴィンセントが気になって、ナナキも驚くペースで片付けたとまでは言えなかった。
「ならいいんだが・・・ところで、どこ迄話してくれた?」
ヴィンセントがシドに話し掛けた時、シドは二人のやり取りを聞いてすっかり変な妄想から戻っていた。
「いや、そんな大したことは俺様も知らないが・・・」
記憶をたどってみる。なにかあった気もするが・・・
覚えている限りの自分航空日誌をめくりながら、正面に座っている二人を眺める。
目もさめるような美男二人だ。
ーこんな整っている二人はめったに見られねェな。
周りを見ると女子社員が遠巻きに二人へ熱い視線を送っているのがわかる。
ーでも、話し掛けられねェよな。俺だって知り合いじゃなかったらとてもとても。
「そう言えばお前ら某国へは潜入捜査じゃないよな?」
周りの取り巻きの視線を観察しながらシドは言った。
「潜入捜査だ。」
きっぱりとセフィロスが言う。
ー・・・これだから自分の容姿に自覚がないやつは。
「あのな、悪いこと言わないからやめとけ。お前ら二人いるとかなり目立つぞ。」
シドは目で周りにいる女子社員達の視線を知らせた。
セフィロスはぎょっとした。ヴィンセントはにっこり笑って言った。
「セフィ、いっそのこと髪だけでなくて整形もするか?」
ー!それって不細工にだろ!
シドを含め回り全部が心の中で却下した。そんなの人類の損失だ!(笑)
「まあ、もともとお前が行くまでもない案件なんだ。誰か別の人をたてた方が無難だ。」
「そんなこと言って、ヴィンセントとエアリスだって二人いれば目立つぞ。」
悔し紛れにセフィロスは言い返す。
ーエアリス?あっ!
シドは埋もれていた記憶を思い出した。
「そういえば、燃料が足りなくて某国に緊急着陸した時がある。」
なに!と二人は身を乗り出した。
「その時、うちの乗組員にセトラが居たんだ。普通なら燃料補給したらすぐに追い返されるところ、結構長居できたな。」
「そういえば、セトラを優先的に移民させていると本には書いてあった。」
「お前ら、セトラ民族ってことにして堂々とエアリスに迎えに来てもらったどうだ?
セトラだったら結構目立つ容姿のやつもいるし、エアリスだって美人だしな。」
俺様って天才!とシドが思ったとたんにセフィロスがシドの両手をとった。
「シド!凄いいいアイディアだ!ありがとう。」
セフィロスがこの上もなく嬉しそうなのが分かりシドはあっ!と思った。
ーでも俺様の勘は当たらないからなぁ・・・
その後シドはヴィンセントとセフィロスに思い出せる限りの某国の情報を伝え、
他の飛空挺の乗り組み員にも聞き込みをしてみると約束し別れた。
ー勘はシエラの方がいいからな、ちょっと話してみよう。
夕食に面白いネタが出来たとシドは上機嫌で資料室を後にした。
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