子供を肩車しながら出口の方へヴィンセントとセフィロスが向かうと、予想通り幼児園児の集団がいて、先生が一人足りないのを気付いて焦っているようだった。
「すいません、この子じゃ無いですか?」
ヴィンセントがおろおろしている先生に話し掛けると、泣き出しそうになっていた女性がよかった〜、ありがとうございます、と安心したように答えた。
セフィロスが子供を肩車から降ろすと、幼稚園児がわらわら二人に寄って来て、いーなー、僕も肩車やって欲しい〜とすりより始めた。
「時間があればやってもいいけどな。」
人数を見ると30人以上いるので一人3分としても・・・
「セフィ、無理だよな。」
ヴィンセントが囁いた。
幼稚園の先生がすみません、と言って園児をまとめ始めた。
なかなか言うことを聞く子ばかりでもなくヴィンセントはまた服の裾を掴まれていた。
「今度会いに行くからね。」
ヴィンセントが裾を掴んでいる女児に話し掛けて優しく手を取ると先生に、こちら何処の幼稚園ですか、と聞いていた。
ーなんだかんだ言って、律儀だよな。
ヴィンセントがセフィロスに声をかけて、セフィロスの名刺を先生に渡していた。
「お前いい保父さんになれるぞ。」
去っていく園児達を見守っているヴィンセントに言う。
「セフィだって」
と話し掛けた瞬間にヴィンセントは立ち木の近くにいる人影を気付かせるように、セフィロスに目配せした。
ーちょっと振り回して、挟み撃ちにしよう。
二人とも気付かれ無い様にさり気なくゆっくり移動を始めた。
「なんか、ほのぼのいい感じじゃねぇ〜」
ザックスが二人の後を付けていきながら、これで男女のカップルだったら絶対に結婚が近い感じの雰囲気だぜ〜と呟いた。
「俺はセフィロスがあんなに普通な感じ初めてみたよ。」
クラウドは全然仕事している時や俺達といる時と違うと思っていた。
なんかさ、もう見ていてもお腹いっぱいだから帰らねぇ?とザックスがクラウドに話し掛けて、そうだな〜と答えた瞬間、前にいるはずの二人を見失った。
「どこ行ったんだろう。」
クラウドがきょろきょろする。
場所はちょうど突き当たりに爬虫類舎の建物がでんとあり、左右は行き止まり、後ろは歩いて来た道である。
「中に入って行ったんじゃ無いのか?」
ザックスがまあ、もう帰ってもいいけど、と言うと、
「お前らもう帰るのか?」
と後ろからセフィロスの声が聞こえて来た。
「うわっ!」
と二人で後ずさる。
「人の土曜の予定にたっぷり付き合ってもらったからには、途中で抜けるのは無いんじゃないのか?」
人の悪い笑いを浮かべて、二人にずいっと近寄っていくセフィロス。
「いっ、いや偶然だよ。俺達もちょうど動物園に行きたいなぁ〜なんてな。なあ、ザックス。」
とクラウドが話し掛けて、そうそう!とザックスも後ずさりながら、爬虫類舎へ追い詰められていった。(笑)
爬虫類舎の建物にあとちょっとで入るか、という距離になった時
「ザックス、クラウド、私を尾行しようなんて十年早いんじゃ無いかな。」
ヴィンセントが入り口にもたれ掛かりながら、遮るように長い足を反対側に引っ掛けて入り口を塞いでいた。
長身の二人に阻まれてなんか白旗をあげざるを得ない二人であった。


動物園の閉園時間は17時だったので4人とも早々に園外へ追いやられた。
セフィロスが全員を連れていったのは場末の気を使わない居酒屋だった。
ーセフィ、夕食はオイスターバーとか言ってなかったか?
ヴィンセントが話かける。
ーあいつらにはこれで十分だ。
セフィロスが答えて、今度お前と二人だけの時にオイスターバーは連れていってやるから、とヴィンセントの頬に軽くキスした。
「セフィ、人前でやめなさい。」
ヴィンセントがいちゃつくセフィロスに釘を差す。
二人を見るザックスとクラウドが、普段は見られないセフィロスの様子にまたしても固まっていたのでした。
生ビールがきて、四人でグラスを合わせ一口飲んだ後、まずヴィンセントが口火を切った。
「幽霊調査でなんか変なことしてただろ。」
いいわけをしようとするクラウドを、セフィロスの表情を見ながらザックスが横目で止めて、
「すいません!」
と二人で取りあえず謝った。
ヴィンセントはその言葉を聞いて、今後同じようなことをする場合は本人に断わってからの方がと付け加えてから
「あと、何で今日あとをつけようと思ったわけ?」
と一番良く分からない質問をした。
困ったように二人が顔を見合わせると、その隙に店員がつまみをどんどん机に載せて来た。
店員が去ってからセフィロスが二人を睨み付けた。
「お前ら、明日から余計なこと考えないように特別訓練な。」
はっ、はい!と二人で軍隊のように姿勢を正して返事をした。
ヴィンセントがさすがは実行部隊だなぁと思って見守っていると、
「ヴィン、他に苦情はないのか?」
とセフィロスが聞いて来た。
いや、勝手に私の調査に一般人を入れないのと、私生活を探らないでもらえれば・・・とヴィンセントが言うと、
「分かったか。俺が許可してないことは、必ず俺に確認を取ってから行動に移すこと。特に他人が関わることはな。それが組織のルールだ。」
二人に言い聞かせてから、食べてよしと二人に声をかけていた。
ーセフィ、食べてよし、なんて何だか犬に対する命令みたいな気がするんだが。
ヴィンセントがセフィロスに囁くと、
ー実行部隊は荒くれ者も多いんだ、命令口調で言った方がいい場合も多くてな、とセフィロスが答えて、不快だったらすまん、と謝ってさえ見せた。
いや、いいんだけど・・・とヴィンセントはセフィロスを見ながらテーブルに頬杖をつく。
愛するルクレツィアの面影を残す美男で、流水かと思うような滑らかできれいな流れの髪を持つセフィロスを、思わずじっと観察した。
ー私にはルクレツィアに似ている愛しい顔だとしか思えないけど、多分普通に見たらきれいな顔立ちなんだろうな。ちょっと眉を潜める時とか、銀髪が動く時とか個人的には好きなんだが・・・
じっと見てるのに気付いたのか、セフィロスが
「惚れ直したか?」
と聞いて来た。
言い返す間もなく、抱き寄せようとして来たのでヴィンセントがギャラリーがいるんだから、と止める。
「ザックス、クラウド何時迄いるんだ?」
とじれったいように聞くセフィロス。
「お邪魔だったら、直ぐに退散するけど。」
ザックスがクラウドに、別に席俺らだけ移動してもいいよな、と声をちょっとかけた。
「いや、好きなだけいてもらった方が私は都合がいいんだ。(汗)」
引っ付くセフィロスを止めようとしながら言うヴィンセントのコメントを聞いて、ザックスはどっちの意見を優先させたらいいんだ?と迷っていた。
クラウドが、
「もし、二人とも時間があったらこの近くにあるしゃれたバーへ案内するよ。」
とタイミングよくいって来たので、断わるまでもなく皆でついていくことになった。
でも、会計時にセフィロスがお前らヴィンのチケット売ったおかげで金もらってるんだよな、と一言口を挟まれまんまとセフィロス達はただ飯をごちそうしてもらったのであった。(笑)


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