次の日は抜けるような青空だった。
セフィロスは昨日起こったことを色々と考えながら、入り口で待っていた。
そして・・・セフィロスが待っている入り口から10m程度離れた所にクラウドとザックスも物陰に隠れてセフィロスの待人を伺っていた。(笑)
−ザックス、誰だと思う?
クラウドがひそひそ声で聞く。
ー全然予想もつかねぇよ。
ザックスとしては今まで何人もの女性を紹介してきたが、全部セフィロスが気に入らなかったらしいので、今となっては誰を勧めたらいいのか分からなくなっている状態だった。
セフィロスが門の前にある時計を確認している。
ー何時に待ち合わせなんだろうな。
クラウドがザックスに話し掛けると、ザックスが答えずにクラウドを小突いた。
「セフィ、早いな。」
ヴィンセントが動物園の門の前に来る。
「そんなに動物園が楽しみだったか?」
にっこり笑うヴィンセントに騙されそうになるが、
ー動物園じゃなくって、ヴィンに会うのが楽しみだったんだよ!
と思わずはっきり言いそうになって、飲み込んだ。
セフィロス的にはロケーションは面白く無いのだが、ヴィンセントはかなり嬉しそうだ。
ーまあ、ヴィンが好きならいいか。
さり気なくヴィンセントの腕を取って、入り口に向かうセフィロスだった。
ーちょっと、セフィロスが気を使ってるよ!
クラウドが二人の様子を見て、ザックスに話し掛けるのを彼は制止して、その後をこそっとついて行った。
「何見る?」
セフィロスが言うのを聞いて、
「まずはパンダだな。」
ヴィンセントが迷わず答えた。
朝の動物園って、人が少なくて動物が食事をしていて動いているからおいしいんだぞ、と言って迷うことなくいつの間にかパンダ舎の前にいた。
柵の前で白黒の巨大な動物を観察する二人、・・・と背後にいるおまけ。
「セフィ、パンダ見たことあったか?」
聞いて来るヴィンセントに、
「本物は初めてだ。」
意外に世間知らずな答えが返って来る。
じゃあ、見れて良かったなとヴィンセントがにっこり笑った瞬間、セフィロスが我慢仕切れないようにヴィンセントの頭を抱き寄せて唇を重ねてきた。
抵抗する間も無く、ヴィンセントはセフィロスの腕の中で唇を吸われていた。
パンダは無関心な感じで、黙々と笹を食べている。今パンダ舎にいるのは二人(とおまけ)だけだ。
ヴィンセントが、苦しくなってきた瞬間にセフィロスが唇を離した。
「昨日からずっとキスしたかったんだ。」
愛おしそうに頬に唇を当てるのを感じて、ヴィンセントは言おうと思った文句を思わず飲み込んだ。
何もヴィンセントが言わないのをいいことに、セフィロスはしっかりとヴィンセントを抱き締めると瞼にキスしてから、また唇を重ねて吸い始めた。
舌を絡めて、ヴィンセントが少しでも感じるように愛撫を始める。
ーって、セフィ朝っぱらから早すぎるから!!
ヴィンセントは急いでセフィロスの顔を離して、次は鳥舎に行くから、と身体を離しずんずん進んで行った。
ーちぇっ。
と思ったセフィロスと、5m程度後ろから見ていたので自分達の見たものを信じられないおまけ達が次の場所へ移動して行った。
鳥の朝は早い。既に朝食を食べ終わった鳥類達がばさばさと活発に飛び回っていた。
鳥舎には大きな鳥かごの形の檻にいろんな種類の鳥が放されていた。
以外と人慣れしているのか、セフィロスとヴィンセントが入って行ってもお構いなく近くを飛んで来る。
足下に白孔雀が横切って行った。
二人が鳥舎の中で話をしている一方、ザックスとクラウドは外の立ち木の影でこそこそと話をしていた。
ー入らない方がいいよな。
ザックスがうなずく。
ーでもさ、ぜってぇキスしてたよ。セフィロスって男好きだったのか?
クラウドがさらに聞いて来る。
ー・・・でも、俺が夜誘うのにも来てたから純粋に男じゃ無いとダメってことはないんじゃ。
でも、今まで紹介した中であれぐらいの美人はいなかったかもな・・・俺が紹介するのは可愛い系が多かったし、とザックスは思っていた。
ーしかも角度があれだったから、キスはして無いとしても絶対抱き締めてたよな。
クラウドがこくこくうなずく。
う〜ん旦那バイでもいけるんだったのか・・・と新たな発見をしたザックスだった。
10時を過ぎてくると動物園にはちらほら他の来園者達も現れてきた。
まあ、お約束のように大体は子供連れの家族が大部分だ。
ー男二人なんてぜってー不似合いな場所だよな。
サル山の前で手すりに寄っかかってサルを見るヴィンセントと、その横でヴィンセントを見ているセフィロス。
視線に気付いたのかヴィンセントがセフィロスを見た。
「私なんていつでも見られるんだから、サルを見ろよ。」
「それが意外にそうでもないんだよな〜。」
手を伸ばして、ヴィンセントの髪を指ですうっと梳いていった。
その指の動きを横目で見守るヴィンセント。
ちょうど東南に昇った太陽の光が髪の隙間からこぼれでて、シャッターチャンスな感じだった。
ーそーいやカメラ持ってこなかったな。
まあ、男二人連れでカメラがあるのも気持ち悪いか、と思ったセフィロスだった。
セフィロスがサル山を素直に見学を始めると、横でヴィンセントが下の方を見て話をしている。
「あのね、一緒に写真に写って欲しいの。」
まだ3〜4歳と思われる髪をツインテールに縛った丸顔の女の子が、ヴィンセントに頼んでいた。
「パパとママはどこにいるの?」
ヴィンセントが優しく話し掛けると、子供はサル山からちょっと離れた場所を指差した。
ヴィンセントは女の子の両親と思われる人に会釈をして
「いいけど、この人も一緒でもいいかい?」
とセフィロスを指差す。
女の子は、うん、と嬉しそうにうなずいて両親の方へ駆けていった。
女の子が両親と話をしている様子を見ていると、母親の方はびっくりしたようだが、二人の方へ近付いてきた。
父親と思われる人が、すみません、といってカメラを構える。
余りの身長差に構図が決めにくそうだったので、ヴィンセントが、抱き上げてもいいですか?と聞いてセフィロスと二人で女の子を抱き上げて写真を取った。
「ありがとうございます。よかったら、写真を送りますが。」
と男性の方が言って、ヴィンセントがセフィの住所教えてあげて、と促した。
ーやっぱ、ヴィンも自分の正体が知られない様一応気を遣ってるんだな。
セフィロスが自分の独身寮の住所を書いている間に
「ありがとね。」
と女の子が、ヴィンセントの頬にキスをしていた。
ヴィンセントはちょっとびっくりしたようだったが、
「ねえ、お返しは?」
と女の子が言うので、両親にいいですか?と聞いてから彼女の頬にチュッとキスをした。
ーガキ、その無邪気さが羨ましくて、しかもむかつくぞ!
その場にいたセフィロスと女の子の母親が同時に思ったかもしれない。(笑)
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