騒々しい二人が帰った後、セフィロスはヴィンセントに電話をかけていた。
「もしもし。」
ヴィンセントの声が聞こえてきた。
「俺。来週夕食も予約するけどなんか食べたいものある?」
別に、セフィの好きなものでいいよ、と即答されちょっとは考えろよと言い返した。
そうだなぁ・・・と電話の向こうで考えているのをほろ酔いで聞きながら、ソファに寝転がった。
ー仕事が終わったらほんとに全然会えないよなぁ・・・
某国の任務でずっと一緒に(まあ本当はもっとべったりずっと一緒にいたかったのだが。)いたことを思うと、ほんとに全然違う部署にいるんだと再確認させられる。
別に会いたければ内線で連絡を取るか、直接会いに行けばいいのだがなんだかんだと仕事をしていたり、外出や任務をこなしているとタイミングがなかなか合わない。
ーまた任務を捏造するか。
自分の髪の毛をちょいっと取って、さらさらさらと落ちるように少しずつ指を離していった。
ーすっかり銀髪に戻ったな。
「じゃあ、中華。」
かなりためてヴィンセントの声がした。
「なら、チャイナドレスで来いよ。」
「人民服で行ってやるよ。」
「持ってんのか?」
くすくす笑い声が聞こえて、この為に新調してやってもいい、と言ってきた。
「ヴィン、寿司とか好きじゃなかったけ。」
「いや、生物なら牡蠣の方が・・・」
「じゃあ、中華かオイスターバーにしとく。」
おやすみ、と言って酔いも手伝って受話器に聞こえる様にチュッとキスをした。
ヴィンセントの声を聞かないようにさっさと電話を切る。
ーあー、キスしたい。
その辺のてきとうな女とかじゃなくって、ヴィンにキスしたいぞー、と欲求不満気味のセフィロス様でした。


「誰からだったの?」
調達課の資材置き場の片隅で待機しているティファが聞いてきた。
「セフィロス。なんかちょっと酔ってるみたいだった。」
携帯をたたみながらヴィンセントが答えた。
「デートの約束したんだって〜�」
ちょっとからかい気味にティファが話かける。
「エアリスからきいたのか?」
ヴィンセントが聞くと、うん、とティファがにっこり笑った。
「それよりも、お化けなんて本当に出るのか?」
今回のは任務というより、社内調査だった。
調達課にいる多くの女子社員から遅くまで残業すると幽霊がでるとの訴えを受けて、ハードな調査から帰ってきたヴィンセントが取りあえず張り込んでみることにしたのだった。
「調査部ってこんなことまでしてくれるのね。ちょっと感動。」
ティファがニコニコしていた。
「うちは何でもやるぞ。大使婦人の飼い猫探しとか、大事な忘れ物を見つけるとかも。」
まあ、今回は私が空いていたから幽霊調査をすることになったけど、とヴィンセントが言った。
「それよりも、某国の調査中セフィロスとの仲は進展したんだって?」
ティファが退屈しのぎに自分の聞きたい話題を振る。
「進展って・・・何を根拠に。」
ヴィンセントがあきれた感じで答えた。
「だってデートに誘ったんでしょ。進展してるじゃない。」
何を言っていますかとティファが言う。
ーやっぱり女性には口では勝てない・・・
返す言葉がなく黙るヴィンセントであった。
「何も言わないなんてずるいぞ〜。」
ティファがヴィンセントの脇を小突く。
その時、ヴィンセントが
「幽霊ってあれじゃないか?」
と部屋の片隅に佇んでいる人影を指差した。

「ほんとに出た。」
ヴィンセントがティファの顔を見るとかなり青くなっていた。
「怖かったら帰っていいぞ。別にティファがわざわざ残らなくても良かったんだから。」
でも私一応この課の責任者だし、この状態で帰れなんてヴィンセント鬼だよ〜とティファが言うので、じゃあ勝手にしろ、とヴィンセントは幽霊と見える影に近付いて行った。
ティファとしては幽霊に近付くのは怖いのだが、だからと言って一人っきりもさらに怖いのでヴィンセントの後ろに隠れて一緒に歩いて行った。
人影に近付いても全然ぼんやりとしていてどんな幽霊かははっきりせず、あと数メートルという所で、ふっと影は消えた。
「消えたぞ。」
ヴィンセントがティファに言う。
「こういう場合って、振り向くと後ろにいたりするんだよね。」
「そんなこと考えるから怖くなるんだろ。」
でも取りあえず後ろを見ようとすると、
「きやあ!!」
ティファがヴィンセントの腕をぎゅっと掴んできた。
「だっ・・・だだだ誰かが肩叩いた。」
顔は真っ青になって、言葉も震えている。
ヴィンセントがティファに、落ち着いて、と腕に置かれた手に触れて後ろを向いた。
「何にもいないぞ。」
がたがた震えるティファを安心させようとしたら、横に金髪の青年がいた。
「ティファ迎えに来たぞ。」
ティファがそおっと声のする方を見る。
「あっ、クラウドだったの。」
はあ〜もう、死ぬかと思ったぁ〜とティファはその場に座り込んでしまった。
ヴィンセントが部屋の電気をつける。
「0時頃迎えに来てくれって言うから来たけど、こんな真っ暗な中で何やってるの?」
「幽霊調査。」
ティファとヴィンセントが同時に答えた。
「ティファ、一緒に調べてくれそうな人がいるなら社内調査にすることもなかったじゃないか。」
ヴィンセントがクラウドを見て言った。
「いっ、いや、俺幽霊とか苦手で・・・」
とっさにクラウドが答える。
「私だって苦手だよー。でもヴィンセント全然平気みたいで、幽霊にどんどん近付いてくから私怖くって。クラウドも一緒にいてくれない?」
いざって時に二人より三人の方が心強いのよ〜とティファが言い出したが、幽霊相手に人数は関係ないのでは?と思ったヴィンセントだった。
「じゃあ、ザックスも誘おう。全部で四人でいれば安心だろ。」
俺も心強いし、とクラウドが提案した。
「っていうか、そんなに人数がいるなら私は必要無いんじゃないのか。」
ヴィンセントが言う。
「そんなことないわよ。ザックスも幽霊嫌いだったらヴィンセントしか頼りにならないもの。」
じゃあ、明日は21時にここに全員集合ね、とティファが言ってクラウドはティファを送り、ヴィンセントは自分の家へ帰って行った。


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