「ちょっと、ヴィンセント。」
セフィロスに呼び止められて、ヴィンセントは振り向いた。
セフィロスが近くに来てちょっと囁き声で話し掛ける。
「本当に場所あれでいいのか?」
一瞬何のことか分からなくて視線がさまよったヴィンセントだったが、ああ、出かける話ね、と納得した。
「不満でも?」
ヴィンセントがにっこり笑って答える。
「いや・・・でもこの年の男二人って場所柄かなり目立つ気が・・・」
「いやなら、やめとくか?」
ヴィンセントが畳み掛けるのを聞いて、セフィロスはこれは断ったら負けだ!と本能的に感じた。(笑)
「やめないけど、動物園のセレクトは俺がするからな。」
あと、中の見学ルートも指定させてもらうから、と言ってヴィンセントの腰を抱き寄せようとさりげなーく近付いた。
「あっ、セフィごめん呼んでるから。」
もうちょっとで腰抱きが成功する所を、するりと逃げられたセフィロスであった。
セフィロスが自室に珍しくいると、ドアのノックが聞こえてクラウドとザックスの声がした。
「お前ら、閑人だな。」
セフィロスはちょうど話し相手が欲しかったと見えて、二人を快く部屋に入れた。
セフィロスは会社の独身寮に住んでいる。それはザックスもクラウドも一緒だ。
独身寮の作りは何処も似たようなものなのだが、セフィロスは業績がいいのと既に管理職なので、ちょっと特別な部屋を使えるようになっていた。
「すげ〜。この部屋カウンターバーがあるぜ。」
ザックスが部屋を見渡して言う。
「独身寮なのに部屋が三つある・・・しかもどれも俺の部屋より広い。」
クラウドがずりぃ、差別だ、と呟いた。
これだったら、彼女を連れ込んでもばれないなとザックスが言うと、
「女は連れ込み禁止だ。」
とセフィロスが答えた。
「まさか、お前真面目に守っているのか?」
ザックスが聞き返す。
クラウドが早くも本題に突入か?と素早く酒をつまみを用意して三人で車座になって床に座った。
「お前らなんだこの体勢は。」
自分の話をじっくり聞こう体勢にちょっと驚きつつ身構えるセフィロスであった。
「俺達もさ、大事な上司が変な女に騙されないように心配してるわけよ。」
もし、昼間のヴィンセントとセフィロスの会話を聞いていたらこんな誤解はないであろうセリフをザックスが言った。
「俺達、セフィロスよりもずっと時間があって、いい女の見分け方とかは良く分かっているから、是非セフィロスに色々俺らの体験談を参考にして欲しいわけ。」
ー男相手だったら少ないけど・・・
クラウドは、昼間に会った黒髪の美形じゃないよな・・・とちょっと迷いつつ言う。
少し酒を飲んでそれなりに酔ってきたころ合いに、さらに二人はセフィロスを問いつめた。
「俺達の間柄だろ。さっさと白状しろよ。」
ザックスがにやにやと目つきが怪しい感じで言う。
「っていうか、セフィロスってどんなタイプが好みなんだ?」
クラウドはいつか自分の参考にするのか(笑)、セフィロスに話つなぎに質問をした。
それを聞いてセフィロスはちょっと油断したのか話し始めた。
「別に見かけはこだわらない。俺に釣り合うくらいだったらいいんだ。」
ーその時点で大部分アウトだと思います・・・とクラウドの密かな突っ込みが入った。(笑)
「性格は落ち着いてて、でもちょっとはからかえるくらいがいいな。一瞬かわいい顔を見せるとポイント高い。」
ーそれって、大人かわいい女性ってこと?
その時点でかなり大変な選択肢だと思ったザックスであった。
「要するに誰何だよ!!!」
二人でセフィロスに迫った瞬間、
「お前ら、それを聞く為に質問してたのか?」
とセフィロスが剣呑な感じで二人を睨み付けた。
「絶対教えない。」
セフィロスが言って来るのを二人は怪し気な笑顔を絶やさずさらっと流した。
「ほら、旦那協力してやるからさ。」
ザックスがセフィロスに肩を組んで絡む。
「自分だと聞きにくいこととか、リサーチかわりにするぞ。」
クラウドが上目遣いに頼む様子でセフィロスを見る。
ーやだよ、ヴィンにばれたら何を言われるか・・・
二人でなんだかんだ言ってもセフィロスは口を割らなかったが、とうとうデートの日程だけはなんとか聞き出して満足して帰って行った。
「来週の土曜か。」
ザックスがセフィロスの部屋のドアを閉めて呟いた。
「ザックス暇?」
クラウドが聞いた。
「ついて行ってみるか?」
ザックスがニカッと笑う。
賛成!とクラウドが張り切って答えて、楽しいレジャーが増えたぜ!、とセフィロスにははた迷惑な計画が発進したのであった。
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