「あのさ、ちょっと聞きたいんだが。」
珍しく社員食堂で一緒になったザックスとクラウドにセフィロスが正面に座って話し掛けた。
「初デートに動物園ってありなのか?」
しかもこの歳で・・・と付け加えるセフィロスに二人とも、おお!と食い付いた。
「動物園に行きたいって言われたのか?」
ザックスが早速リサーチを始める。
セフィロスが頷いて、運んできた八宝菜を食べ始めた。
「動物園なんてかわいい娘だな〜。俺なら直ぐにOKだよ。」
クラウドが、まあ相手がセフィロスなら大体の人間はどこでもOKだろうけど、と付け加える。
「動物好きな娘なのか?」
ザックスがさらに質問すると、
「そんな様子を見せたことはないな。しかもかわいい所もあるけど、年上だしな。」
セフィロスが年上とデート?という新たな情報にさらに盛り上がる二人。
ーおい、セフィロスって年下を自分好みにするタイプかと思ってたんだけどよ。
と、ザックスがクラウドに囁く。
ー俺もそう思ってた。意外な好みだな。
だから、納得いかない場所でもきっぱり嫌だと言えないのか?と推測するクラウドだった。
「女の子とのデート経験が豊富な俺のアドバイスとしては、年上だったら言われたことは素直に言うこときいといた方がいいぞ。」
ザックスが一体どんな相手なのか知りたいぞ〜と好奇心を押さえるのにかなり苦労して言った。
「でもさぁ、セフィロスが相手だったら普通の女だったら舞い上がっちゃうと思うけどな。」
っていうか男でも舞い上がる奴も(自分を含め)いるんじゃ、とクラウドが付け加えた。
「そうか、参考になった。ありがとう。」
さっさと食べ終わって食堂を去って行くセフィロスに、山ほどの質問リストを頭の中で作リ始めた二人であった。
ヴィンセントは自宅で電話を受けていた。
「査察団がそんなに早く来たのか。良かったな。」
相手はエアリスのようだ。
「警察に狙われなくなっただろ。うん、そっか。組織の調査員は続けられるんだな。」
ヴァレンタイン家の電話はもともと屋敷に備えられていた、アンティークな金と白の唐草模様付きの電話だ。
もちろん受話器は本体から取り外せない。
電話器を持って、ソファの方へ移動しながらヴィンセントはあいづちを打っていた。
イファルナの様子を聞いた後に、ヴィンセントがクスクス笑っていた。
「セフィロスにした約束の話か?ちゃんと守るよ。心配するな。おやすみ。」
電話を切ってソファに寄り掛かって、ちょっとくつろいだ後会社へ行く支度をする。
今日は16時から夜中までの張り込み業務の打ち合わせとその後業務の実行となる。
ー14時までに着けばいいな。
時計を確認してヴィンセントは家を出た。
ザックスとクラウドはウータイから帰ってきたばかりなので、今日明日は任務はなく軽くトレーニングする程度の予定になっていた。
二人ともトレーニングセンターの中でジョギングを軽くしていた。
「あのさザックス。俺すっげー気になるんだけどさ、」
クラウドが走りながら話し掛けて来る。
「セフィロスのデートの相手って誰だ?」
ザックスは走りながらクラウドの方に寄って来て声をひそめて言った。
「俺も知りたい。っていうか、最近旦那落ち着いたよな。」
「前より無茶なこと言わなくなってきたのは気がついてた。」
クラウドがザックスの横に並んで同じように小声で言う。
「俺年のせいかと思ってたけど、恋人ができたせいだったのか?」
「初デートって言ってたよな。」
ザックスが昼の会話を思い出して言った。
「どっちにしても旦那の相手じゃ相当美人だぞ。」
旦那はえらい面食いだからな・・・とザックスが色々思い出して言った。
「しかもセフィロスがあんなに気を使うなんて、相当我侭なんじゃ。」
クラウドが普段の俺様な態度を思い出して、気を使うセフィロスって見てみたい!と思っていた。
「俺の予想はスーパーモデルか女優のすっげえちやほやされてる女だな。」
ザックスがそれならお友達を今度紹介してもらおう、とにやにやした。
「でもそんな人とどこで会うんだ?」
クラウドが聞くと、それはさぁ、俺達の知らない依頼を旦那が全部やっているわけよ、とザックスが訳知り顔に言った。
ーセフィロス・・・ずるいぞ。
とクラウドは思ったがこれは管理職の特権ってやつだろう。
「一度さあ、セフィロスのうちに押し掛けて洗いざらい吐き出させようぜ。」
クラウドがザックスににやっと笑いかけて言う。
「それはいいアイディアだな。」
ザックスもにやにやしながら楽しそうにクラウドに返した。
ザックスとクラウドが一通りトレーニングを終えてオフィスの辺りをうろついていると、セフィロスが横の廊下から出てきた。
「セフィロ・・・」
ザックスが話し掛けようとしたら、彼は目当ての人がいるのか声が聞こえない感じで真直ぐ出た廊下を正面へ向かって行った。
ー誰に会うんだ?
目を遠くに向けると長い黒髪の人にセフィロスが声をかけている。
「美人じゃん。」
ザックスが呟くと、
「でも、男だけどな。」
とクラウドが回答した。
えっ、とザックスがクラウドを見ると、
「あの人は、俺の社内美形ファイルに載っているヴィンセント・ヴァレンタインだ。」
と(なぜか)威張ってクラウドが答えた。
「・・・確かに・・・ってお前美形ファイルって!?」
思わず変な話題に食い付いてしまい、セフィロスのその後の会話を聞き逃した二人であった。
Next