ウータイの深い森の中、敵に悟られないよう島を脱出する為に救援を待つ。
森の中は湿度が高くてさらに不快な気候だが、そこ以外の場所は潜伏するには見晴しが良すぎるし、ウータイの武器は飛び道具が多いので格好の的になりかねない。
「だからさっさと出てけって言ったんだよ。」
セフィロスの隣にいるヴィンセントが心配そうにしながらも、乱暴な口調で言った。
「あんな状況でおいて行くなんて、見殺しも同然だ。」
大体なんで完全に負け戦だって分かってる状況で、お前出てくんだよ、とセフィロスが文句を言う。
「後始末だよ。っていうかあれだけなんとかなるって言ったのに、ついてきたのはセフィだろ。」
それで怪我してちゃ世話ないよ・・・と血がにじんでいる背中を観察する。
「いまの所命に別状はないけど、あんまり出血が多いと心配だな・・・。」
セフィロスは特に表情に出してはいなかったが、鎌のようなもので傷つけられた背中の切り口はかなり大きくまだ血が止まる気配はなかった。
武装解除勧告を無視したウータイと始った小競り合いは、思ったよりも相手が手強く、体勢建て直しの為にセフィロス達の組織は一時撤退をすることになった。
「救援の船はどこに来るんだ?」
ヴィンセントが聞いてくる。
「これに連絡があるはずなんだが・・・」
セフィロスの持っている通信機は、うんともすんともいっていない。
日が大分傾いてきて、今日はきっと森の中で野宿になるに違いない。
「城内を探してもいないって分かったら、ここを捜索されるかな。」
「大将の俺が残ってるってばれたら特にな。」
城を脱出してきた経路には、セフィロスの血痕が転々と残っているので、誰かが罠にかかったと気付いたら追手がかかりそうだ。
「ヴィンが突き飛ばしてくれなかったら、心臓を一突きにされてたかもな。」
撤退前にできるだけ余計な情報を隠滅するのと、有用な情報は持って返っておこうとセフィロスが侵入した城に、偶然ヴィンセントがいた。
なんでお前がいるんだよ!、と文句をいいそうになったが、絶対に自分が見つけた脱出路以外からは逃走は無理で、撤退時刻が迫っている上、城は包囲されているので、ぐずぐずもしていられない。
大丈夫だから先に行けと言うヴィンセントを、無理矢理一緒に連れて行くと、脱出路として確保した経路にウータイらしく罠が仕掛けられていて、まんまとかかってしまったという訳だ。
「取りあえず、落ち着ける所を探さないか?」
傷口の血が止まらないのが気になるヴィンセントが、早めにセフィロスを休ませようとしていた。
森を抜けると海岸線が見えるのだが、そこまで出てしまうと広々した平野に身をさらしてしまう。
木々が密集している奥へ奥へと歩いて行くにつれて、夕日が見えない程森が深くなったのか、それとも日が暮れたのか森の中を照らす光が感じられなくなってきた。
静かな木々のしじまに、土を踏みしめて進む二人の足音以外は聞こえない。
「ウータイの森には生き物は住んでいないのか?」
あまりに静かなので、ヴィンセントが聞いてきた。
「いや・・・小型のほ乳類とかいるはずだが・・・」
セフィロスが答えた時、大木がいきなり目の前に現れた。
その奥には白い岩肌の崖が、大木に添うようにそびえ立っている。
「ちょっと・・・待ってて。」
崖の上の方に目を凝らしてから、大木に手をかけて登りはじめるヴィンセント。
ー猿かよ・・・。
微妙に背中の感覚がおかしくなっている気がした。
ぼーっとヴィンセントが木に登っている様子を見ていると、時間がその場で止まっている感じがする。
「上に、自然の岩の洞窟があるから。そこなら横になれそうだ。」
するすると木から降りてきたヴィンンセントが、登れるか?と聞いてきて、重い体を上げる。
一瞬とても心配そうな顔をしたヴィンセントだったが、セフィロスは気付かずに洞窟へ向かって登って行った。
「お前、俺がいなかったらどうやって脱出するつもりだったんだ?」
洞窟に着いて暫くすると日がとっぷり暮れ、薄い三日月が昇っているなかセフィロスが聞いてくる。
「別に・・・私一人くらい何とかなる。」
三日月を見ながらヴィンセントが答えた。
「なんにも考えてなかったくせに。」
お前意外に行き当たりばったりだからなぁ・・・とセフィロスが言う。
ヴィンセントは何も言わずに、セフィロスの背中を傷を見ようと近付いてきた。
「変なくすりでも塗ってあったのかな。全然血が止まらない。」
彼の傷口を良く見ようとした瞬間に、セフィロスがヴィンセントに抱きついてきた。
「何だよ。」
ヴィンセントが言う。
「SEXしたい。」
「誰と?」
「一人しかいないじゃん。」
セフィロスがヴィンセントの目を見た。
「出血が止まらないのにダメだ。」
そのまま彼から体を離そうとするヴィンセント。
「万が一この出血が原因で俺が死んだら、ヴィン俺の頼みを聞かなかったことで一生後悔するぞ。」
脅しのような言葉をかけながら、セフィロスが彼の体を抱き寄せた。
ヴィンセントは迷うように、セフィロスの背中に腕を回そうか逡巡している。
「こんな状況で頼みごとをしているのに、聞いてもらえないなんて、可哀想な俺だと思わない?」
すぐ近くにあった彼の顔に頬擦りして、ヴィンセントの同情を誘う感じだ。
ヴィンセントがセフィロスの体を押しもどそうとする。
「俺がヴィンのことこんなに好きなのに答えてくれないなんて、本当に俺を大切に思ってくれている訳?」
我が侭を言う子供のようにもう一押し拗ねてみせた。
「今はただセフィに、無事に生きてて欲しいだけだ。」
呟くようにヴィンセントが答えた。
「誰の為にだよ。」
目を合わせない彼に、セフィロスが聞いてくる。
「セフィの為だ。」
と言った瞬間に、ぎゅっと抱き締められたあと、体中を愛撫されている気がした。
あっ・・・と声を上げてしまう。
「俺はヴィンが一緒じゃないと、無事に生きられないんだ。」
キスしようとセフィロスがヴィンセントの顎を少し上げる。
切なそうに彼を見るヴィンセントの表情に、思わず貪るように唇を重ねた。
何度もキスしながらセフィロスが彼の体を撫で回す。
「はあっ・・・セフィっ・・・」
腕を掴んで、ヴィンセントがたまらずに彼の肩に頭を持たせかけた。
セフィロスが、何も言わずに彼の胸の辺りを撫で回し、乳首に触れる度にぴくんと体が動く。
「あっ・・・だめっ・・・セフィっ・・・」
色っぽい彼の表情にたまらずに、セフィロスが頬を引き寄せてまたくちづけをした。
ひんやりとした洞窟の床に何度もキスしながら彼を寝かせ、静かに服を脱がせはじめる。
「セフィ・・・いいなんて言ってない・・・」
彼の身体から離れようとして、首筋にきた舌にびくっとした。
「今いいって言ってよ。」
甘い声音で耳もとに囁く。
「背中の傷、痛くないのか?」
愛撫のせいか目に涙を浮かべているヴィンセントが、掠れ声で耳もとに聞いてくる。
大丈夫だ・・・ヴィンを抱いている間はな・・・と返された、
ヴィンセントが、心配そうに傷を見ようとする。
と、下半身に愛撫を感じて声を上げた。
何か言おうとしたのだが、セフィロスに唇を塞がれて言葉を止められる。
優しくポイントを刺激される感触に、たまらずにセフィロスの身体にしがみついた。
「あっ・・・・セフィっ・・・そこはまだっ・・・」
身体をひらかされ、やわらかくほぐそうとされるのを止めようと手を伸ばすと、その指を口に含まれた。
「こんなになってるなんて、俺の事が好きで好きでしょうがないか、すごいエロいかどっちかだよな。」
濡れている下半身を撫でながら、俺の事が好きだろ、と聞いた。
「好きだよ。」
眉を顰めて目をつぶって、ヴィンセントが気持ちよさそうな表情をした時、セフィロスは彼の胸の先を転がすように舌を這わせていた。
だんだん熱くなってきた彼の身体が心地よい。
ヴィンセントが、セフィロスの顔を上げさせ、唇に触れた時、
「んんっ・・・!」
と声を上げた。
「はあっ・・・・まだ早いっ・・・」
そう言いつつも、腰をくねらせる。
「いつもより体力ないからな。」
彼の中で指をくちゅくちゅと動かした。
ーセフィ・・・ほんとは傷大したことないんじゃ・・・
ふっと頭に浮かんだが、念入りに身体をまさぐられていると思考がだんだん麻痺してきた。
「あっ!ああっ・・・」
いきなり身体の中に入ってきた違和感に、彼の背中にしがみついてしまった。
「くっ・・」
ヴィンセントの手が背中の傷に触れて、思わず声を出す。
彼がすぐに涙目の目を開けて、セフィロスを心配そうに見た。
「平気だ。」
囁く口に、そっとヴィンセントが唇を重ねる。
いたわるような優しいキスに、思わず全身がとろけそうになるが、自分がやることを忘れた訳ではなかった。
セフィロスが少しずつ身体を動かしていく度に、ヴィンセントの額にうっすら汗がにじんできた。
唇を離すと、密やかな喘ぎ声が耳に入ってくる。
洞窟の中は外気よりは最初は涼しい感じだったのだが、二人の体温のせいか蒸し暑くなってきていた。
セフィロスがヴィンセント自身を愛撫すると、締め付けてくるのが感じられる。
「ヴィン、すごい気持ちいい。」
からだの動きは止めずに、耳もとに囁く。
「あっん・・・セフィっ・・・」
言葉を紡ぐのももどかしそうに、抱きついてきた。
何度もキスをしながら身体を愛撫してやると、彼の息づかいがだんだん切羽詰まってきている感じがした。
からだの動きを早めて彼の身体を揺するようにすると、ヴィンセントが自分から腰を動かしてくる。
「あっ・・・セフィもう・・・」
薄く瞳をねだるように開いてキスをするヴィンセント。
ーすごい、エロくて可愛いな・・・
一瞬もっと彼の表情を見ていたくなったが、我慢できそうもなく、彼自身を愛撫しながら、さらに身体を揺らした。
ぴくり、とヴィンセントが反応する。
背中の傷に触れないように、頭と背中を抱き締められた。
ヴィンセントの首筋にキスをすると、彼がびくん、と反応した。
「あっ・・・」
セフィロスを抱き締めている腕に力が一瞬入る。
はあ・・・、と大きく息をついて、首筋にセフィロスが顔を埋めてきた。
耳もとの荒い息づかいがくすぐったくて、ヴィンセントが彼の顔を上げさせた。
「良かったろ。」
「ケガしてるのにこんな所で頑張るんじゃない。」
「こうでもしないと、ヴィンはなかなか俺と寝てくれないじゃないか。」
がんばったんだから、感想ぐらい聞かせて欲しいよなぁ・・・と言いつつ、目を閉じるセフィロス。
ーもしかして、怪我したのもわざとじゃないだろうな・・・
相当疲れていたらしく、セフィロスの寝息がすぐ聞こえてきた。
彼の真意を確かめたいような確かめたくないような、微妙な気持ちになりながら目を閉じるヴィンセントだった。
ピピッピピッという電子音が、鳥の声に混ざって聞こえてきた。
がばっと起きて、ヴィンセントが音のする機械に手を伸ばす。
ー船がきてる。
洞窟の入り口から、夜明けの赤い光がうっすらと見えていた。
「セフィ、起きろ。」
彼を揺らしながら、通信機を掴むとごろっと背嚢に一緒に入っていたものがこぼれでてきた。
「んっ・・・救援が来たのか?」
セフィロスが目を開けると、ヴィンセントがマテリアを手に持って彼を睨み付けていた。
「セフィ・・・・・・・、回復のマテリアを持ってるなら何ですぐに言わないんだ・・・。」
低い声で相当怒っている声音だ。
「きっ、聞かれなかったし、大体俺もう魔力切れで使えなかったから・・・」
寝ぼけつつしどろもどろに答えている間に、ヴィンセントが素早くケアルラを発動して、背中の傷をあっさり直した。
「船とのミーティング地点はここだ。」
通信機の画面に示されたウータイの地図上の点滅している赤いポイントを見せられた。
時間を確認して、素早く身支度をする。
「ヴィン、怒ってるのか。」
洞窟を出ようとする前に、彼に目を合わせて顔をじっと見た。
「あきれてるだけだ。」
ヴィンセントが答える。
「戦闘時に回復のマテリアを持ってないはずないだろ。」
「そのことに気付かなかった自分にもあきれてるんだ。」
目をあわさずにさっさと明るい方へ向かう彼を、思わず引き寄せた。
「セフィ、時間ないんだぞ。」
と言った瞬間に、キスされた。
「それって、ヴィンも俺と寝たかったってことかな。」
唇を離されて、素早く囁く。
「バカなこと言ってないで、早く出発・・・」
「大事なことだ。」
詰め寄る彼に、少し困った顔をするヴィンセント。
「大事なことは・・・・昨日言ったから。」
一瞬ゆるんだ彼の手を振りほどいて、さっさと洞窟を出ようとヴィンセントが大木に移動した。
セフィロスも急いで彼の後を追って、洞窟を降りる。
ミーティング時間まであと30分。
大分日が昇ってきて追手に気付かれないよう、慎重に二人は船の場所へ向かって行った。
019. ただ1つだけの真実
お題はこちらから借りています。
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カップリング創作好きに100のお題
*すでにサイト閉鎖されております。