Second Lesson for Fujimaru, the Hachiohji head of a ward 2
それから、1ヶ月程立った時の事。
「こんな遅い時間に済まないな。」
「ケンとオレの仲じゃねぇかよ。気にすんな。」
立川の軍用緊急回線の定期チェック中にエラーが出て、どうしても立川支部の職員では原因が特定できずに、仕方なく藤丸にケンが依頼をしたのだが、
彼もすぐに来る事が出来ずに、やっと藤丸が立川に着いたのが20時過ぎだった。
既に、職員は大部分帰宅しており、今日来る、という藤丸をケンは立川区庁舎で待っていたのだ。
「ここなんだがな。」
サーバ室に入って、藤丸が愛用端末で軽く見てから、そこに作り付けてある端末で詳しく調べ始めて、
いくつかサーバの通信状況を見ようとハードウェアの方を見上げる。
「うーん、、、ちょっと複雑かもしれねぇな・・・。」
上着をバサッと脱いで、狭いスペースにつまっている各サーバとその他の通信ハードウェアの接続チェックをしようとそれに触れて行くのを、
ケンは手伝う事もできないので、近くの椅子に座って見守る。
1時間程作業をして、
「ケン、何か書くもんあるか?」
と聞いてきたので、胸ポケットからポストイットとペンを取り出し渡そうと、近づいた。
「あ、あと椅子も。」
ん?と思ったが、自分が座っていたそれも運ぶ。
「よっと。」
ペンと紙を受け取って、椅子の上に登って背が届かなかった場所のハードウェアのチェックを続けた。
「気をつけろよ。」
脚立の方が良かったな、と周りを見回したがすぐに目にはつかない。
「うん。」
と時節メモを書き付けながら、大方終わったのかサーバラックに少し手をかけて、その扉を閉めようとした。
「うわっ!」
思ったよりも力が必要だったらしく、椅子が回って藤丸がバランスを崩したのを、ケンは急いで抱きとめる。
「わりぃ。」
「けががなくて、良かった。」
そのまま、彼を椅子から降ろして、ケンがサーバラックの扉を閉める。
「何か分かったか?」
「はっきりここが原因、ってところはねぇんだけどよ。」
と、いくつかハードの交換と、接続パスの不具合の場所のメモをケンに渡す。
その暗号のメモをケンがこれで大丈夫なのか、という表情で見ると、
「ケンのとこのシステム担当なら分かるから。」
と藤丸が言った。
既に22時を過ぎていて、
「今から八王子に帰るか?オレの所に泊まってってもいいが。」
とケンが言って来る。
「そうだな。今日は久々にケンのとこ行くか。」
と藤丸が笑顔を向けたのに、メシは食ったのか?とケンが聞いて来る。
軽くな、と答えて、上着を手に取ってサーバ室を出ようとする。
「ちょっとセキュリティ確認するのに時間必要だから、先に行っててくれ。」
ケンの言葉に、おう、と答えて藤丸が立ち去る。
ー大分大人になったんだな。
見る限り、藤丸は華奢で細身で、アメリカ人の自分からは、まだまだ子どもだと思っていたが、
今日抱きしめた感じはずっと前に抱き上げた時よりもかなり重く、大人のそれと言ってもいいぐらいになっていた。
ーもう、言っても大丈夫だろうか。
彼には気付かれないようにしてきたが、いつからか同士、昔なじみの友達、とは別の彼を求める感情が自分の中に生まれて、
いつかはきっと押さえられなくなる、という気がしていた。
「ケーン、まだかかりそうか?」
「悪い。すぐ行く。」
思ったよりも時間が経っていたのか、藤丸が呼ぶ声が聞こえて、ケンはすぐにその場を離れた。
「また、何かあったら呼べよ。」
難しい顔をして、ケンの家のソファに座って、ミネラル・ウォーターを飲みながら今回の原因を考えている様子の藤丸をリラックスさせようと、少しは頭をそこから離せよ、とケンが言う。
「でも、こういうのは集中してる時に、解決策が分かるもんだからよ。」
彼の真剣な様子に、自分が今日藤丸に言おうと思っていることと、彼に対する気持ちが、少し気に咎めた。
「藤丸、少し話をしてもいいか?」
と彼の掛けているソファに、身体を移そうとして言った。
「何だよ。改まって。」
ケンの座るスペースのために、少しだけ身体を寄せる藤丸。
どさっと、そこに座ったケンに、その重みを感じて、軽い話じゃないな、と藤丸は察した。
「藤丸。」
ちょっと身体を抱きしめ愛撫する動きに、何だよ、と笑いながら藤丸がリラックスした表情で答える。
「ずっと黙ってたんだが。」
と、ケンの目が自分をまっすぐ見てきて、うん?とその目を見る。
「俺はできれば、お前と一緒に生涯を過ごしたい。それは、普通に友人として着かず離れずという意味ではなく。」
ぴくん、と触れている彼の身体が反応したのが分かり、その目の色を見ると、自分が好きな、揺れている紅い色になっていた。
「どういう意味か、分かるか?」
俯いて、顔の表情を隠した藤丸は、すぐに口を開く。
「ケン、東京が、こんな状況で、俺は今八王子区長で、ケンがしたいのって・・・、何だよ?」
俯いて、表情をケンに見せないまま、藤丸は言葉を続ける。
「単に、ちょっと故郷からを離れて寂しいだけじゃねぇのか?」
自分が赤銅泉に抱かれている理由と、ケンが自分と一緒に居たい理由が、そこにしか思いつかず、ケンもそれだと嫌だと思って、思い切って疑問をぶつけた。
その表情を確かめようとケンの目を見ると、優しく自分を見つめている。
「藤丸、寂しいのは俺もお前と一緒だ。」
「ケン、おめぇは、アメリカに家族もいて、立派な親父もいて、そんなわけ・・・・・・」
そっと自分の身体を抱いて来るケンの腕には抵抗しないが、まだ納得のいかない身体の強ばりに、ケンは彼の疑問に答えた。
「藤丸、お前にが側にいるのに比べたら、そんなの全然いないも同然だ。」
すっぽりケンの腕にソファの椅子の上で包まれ、その言葉に藤丸は何も言い返せなかった。
じっとケンの腕に抱かれて、でも、それを振り払う事はせずに、本当の自分の気持ちを考えを巡らせるように思って、瞳を閉じる藤丸に、ケンは言葉をかける。
「返事を、もらってもいいか?」
あっ、とケンの目をみてそれを揺らせて、何か言おうとして頬を赤らめるのに、そんな事に慣れていない様子が分かって、ケンの顔に微笑が浮かぶ。
「オレだって、ケンがいれば、ケンさえいれば・・・・・・。」
赤くなった顔を隠すように、手を顔に添えて、さらに近くにあるケンの胸に顔を埋める。
「ケン、オレになにして欲しい?オレとどうしたい?」
ぎゅっと自分に抱きついてくる感触に、優しくその手を緩めて顔を上げさせる。
「藤丸、今日はどうしたい?」
優しいケンの言葉に、素直に藤丸が答える。
「ケンが、したいように。」
と、じっと澄んだ紅い瞳で見られて、どきっとして、そっと彼の瞳にキスを落とした。
じゃあ、とまだ抱き上げられる重さの、彼の身体をソファから持ち上げる。
「お前を求めてもいいか?」
はっとした表情が顔に表れて、彼の腕がケンの肩にかけられる。
「ケンが、本当に、そうしたいなら・・・・・・。」
緊張した面持ちの藤丸の顔に、いつものようにその頬に手を触れるのだった。
暗い、灯りが着いていない寝室に抱き上げられながら入るのは初めてではない。
まだ、子どもだった時に、そこに寝かされて自分が寝かしつけられた後で、ケンがソファで寝てくれた3、4年前の事を思い出す。
シャツを着たまま、そのベッドに降ろされてケンが藤丸の顔を見つめるのに、自分も見返した。
今度はそっと自分を寝かせてくれるだけではない、と分かっている。
「ケン。」
自分の身体を離れた彼の腕に手をかけたら、彼の腕が自分に伸びて、思ったよりも近くに腰を抱き寄せられて少し焦った目をする。
「藤丸、初めてか?」
ケンの優しい目に、何をどこまで答えて欲しいのか、迷った。
その一瞬の逡巡に、
「初めてではないな。誰としたんだ?」
と責める風ではなく聞いて来る。
「その答えは、今必要か?」
藤丸が返事を声に出し、ケンはゆっくり首を振った。
優しく、というよりは今までの思いが溢れて止まらないように、藤丸の身体はケンの愛撫にさらされた。
「あっ・・ケンっ・・・少し待っって・・・」
まだ、十分感じきっていない胸の突起を、舌で嬲られて、あっんっ!とまだ望まない愛撫を受けさせられる。
シャツを少しはだけさせて、ベッドに押し倒した姿で自分にのしかかられている藤丸の様子は、何度か自分が彼にしたいと思った光景そのものだった。
ただ、それが誰かに既にされたあとの彼だという事を、除いては・・・・・・。
ーきっと赤銅隊長だ・・・
勘のような確信で、ケンは藤丸に手を出すならきっとあの男だと思った。
天城屋副隊長がそんな面倒な関係に、手を出すとは思えない。
藤丸の下半身を迷いなくむき出しにして、その足を開かせる。
「あっ、・・・ケン、そんないきなり・・・・!ん!」
藤丸の可愛らしい反応も、きっとここは既に誰かに触れられて、何度も最後まで導く愛撫にさらされたのだ、と思うと少し許せなかった。
「あっ・・・んっ・・・」
びくっと身体が反応して、寸前で愛撫を止める。
悩ましげな顔で自分を見下ろしてくるのを、顔を足の間から上げ、彼の表情を見ようと抱きしめた。
「あっ・・・」
胸の先を指先で転がすのに耐えきれず、藤丸は声を上げる。
「藤丸・・・もっと感じてる声が、聞きたい。」
下の濡れている彼自身を直接触れ、何度も愛撫すると自分が望む声が漏れて来る。
ー泉と同じ事を言う・・・
自分の記憶のある体勢で、同じ事を言われて、藤丸は少し頭が醒めた。
「あっ!だめっだ!!」
それでも、次にどこに伸ばされるか分からない手の愛撫に、思わずその動きを止めようと手を伸ばし、同時に拒否の言葉が口をついて出て来る。
その手をケンに掴まれて、さっき与えられた快感で艶っぽい藤丸の表情がケンの目に映る。
「藤丸、何がダメなんだ?」
その言葉にぞくっ、として、頼むように言葉を投げかけた。
「ケン、ちょっと待ってくれ。まだ、オレ、そんないきなり無理だし・・・。」
ケンの前でむき出しにされた身体を、少し蠢かす。
「藤丸、何が無理なんだ?」
ー初めてではないのに・・・
身体を這い回る手の感触に、うんっ・・・と反応する自分を抑えて、藤丸は言葉を続ける。
「ケンだってオレ、」
まだ、好きってちゃんと言われてないし、キスもされてない、と言う彼にはっとして、すぐに口づけた。
思ったよりも長い口づけに、藤丸の眉が寄せられ、んっ!んんっ!という声を無視して、思いっきり抱きしめる。
やっと、積年の思いが今夜遂げられる、と思って気ばかりはやって、藤丸の気持ちを考えていなかった。
しかもあんな風に、100%無条件で自分を受け入れてくれるとは予想していなくて、ケンは既に藤丸の心も身体も自分の物だと、勝手に思い込んで彼を抱いていたのだ。
「好きだ。I love you, Fujimaru.」
唇を離されて、それが本当に顔に近い所から言われて、藤丸の頬は真っ赤になった。
“I love you, don’t you love me?”と言葉を続けられて、自分が言った手前何か答えなければ、と身体をまさぐるケンの手を止めて目を見る。
「オレだって、ケンの事大好きだ。ケンが、・・・ケンが側にいてくれなかったら、きっとオレつらくて生きてられなかった。」
心の中でずっと思っていた事を、やっと言葉にして伝えて、自分の言葉に気恥ずかしくなって、藤丸は赤くなった顔をケンの胸に埋める。
ーオレ、多分ケンと一緒にいられなくなるなんて、ムリだ・・・。
なかなか自分の胸元から顔を上げない藤丸に、ケンは
「藤丸、今日はずっとこうしていたいか?」
と聞いた。
10年以上前、藤丸に会ったばかりの時に胸に彼を抱いていた時の事を思い出す。
“Ken, but would you like to do other thing to me ?”
あの時のように、くいっと胸から顔を上げ、言いにくいのか英語で返して来る。
“I would not like to do anything against your feeling. I have waited for you to become adult so long time
so it is not long time to wait for only few days, weeks, months or more.”
「ケン、オレ、ケンをそんなに待たせるなんて、悪くてできないよ。」
藤丸はケンの胸から顔を上げ、静かにベッドの上で抱きついていた身体を離した。
優しく藤丸の様子を見守るケンの顔を見つめ、自分から口づけをする。
藤丸の腕が、ケンの金髪の頭に回されそれを指に絡めるのを感じて、ケンは彼をベッドにそっと倒し、その口づけに答えた。
脳髄がくらくらするような、長年の思い人からの口づけに、もっとそれを堪能したいとケンは彼の口を舌先で優しく開かせる。
「んっ、んんっ・・・」
今度は全然拒否していない仕草で、藤丸はケンの身体を抱きしめ、もっと、という風に舌を絡めて来る。
満足してやっと唇を離すと、藤丸がケンの頭を抱いて言ってきた。
「ケン、大好きだ。」
また、告白の言葉を言われて”I love you.”と彼の耳元で呟く。
華奢な彼の身体を抱きしめ、気持ちを確かめ合った後では、身体を繋ぐのは今日でなくて、もう少し藤丸が大人になってからでもいいのではないかと思われた。
「藤丸、狭くないか?」
彼の、きれいな細い身体を抱いてケンが言う。
頭を振って、
「ケン、オレ、今日ケンのとこに来て良かった。ずっと言いたかった事、やっとケンに言えた。」
とまた藤丸から愛情を込めたキスをされ、満ち足りた幸せに包まれて、今夜の二人は身体を寄せ合って眠ったのだった。
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