ザックスを通して知っているとはいえ、クラウドはセフィロスから例の事件が手伝えるなら、と依頼を受けた時はかなりびっくりした。
ーだって、俺はまだソルジャー3rdで下っ端だし。
同じ3rdの同僚からやっかみ、羨ましい視線も感じながら、ミッドガルの市街へくり出していた。
ーまあ、まじめに訓練していてもいつもの繰り返しだしな。
セフィロスから受けた任務は、
1.女性を殺害した犯人と思われる人間を見つけたらすみやかに捕獲できる様行動、報告すること
2.それに関連する証拠物件を見つけたらすぐにセフィロスかヴィンセントに報告すること
とあった。
ーあんのかな。そんな証拠。
別にセフィロスを疑っている訳ではないが、あまりに漠然としていてやり方が指示されなかったので疑ってしまうのだ。
(いや、多分そんな期待はされてないんじゃないかと・・・by 筆者(汗!))
しばらくすると、ヴィンセントと一緒に行動することになったので任務内容に進展はないにしても、ちょっと安心したクラウドだった。
その後、何回か不審人物が付いてきたりと軽微な変化があり、その報告をすると不審人物の方へ関心が移っていった。
観察していると、尾行はクラウドよりも、ヴィンセントを追っているらしい。
でも、いまいちヴィンセント、被害者、被疑者(現時点では不明)の関係は良く分からなかった。
っていうか、
ーヴィンセントは関係があるのか?
クラウドがセフィロスに連絡して聞くと、
「お前ちょっとは使えるようになったな。」
と答えが返ってきて、尾行しているやつに気付かれないようにな、と指示された。
「ヴィンセントは付けられてるの気付いてるんだよな。」
クラウドが聞くとヴィンセントは曖昧な顔をして、そろそろ会社に戻ろうと言った。


オフィスについてからヴィンセントはクラウドと応接室に入って話を始めた。
「取りあえずセフィロスには何て言われた?」
「ヴィンセントと一緒に行動しろって。」
「その後は?」
「尾行している人間がいるって言ったら、そっちを気を付けろって。」
ヴィンセントはそれを聞いて、ちょっとため息をついて目を反らせた。
「何か問題が?」
クラウドが不安そうに聞いてくる。
「いや、クラウドは悪くないんだ。」
ヴィンセントが目を伏せて、考えながら答えた。
「クラウドはずっとこの事件を手伝うつもりか。解決するまで。」
そのつもりだけど、と答えるとヴィンセントはクラウドの目を見て話し始めた。
「もし、なにか重要な任務が入ってそっちを優先することになるようならこの案件からは手を引いて欲しいんだ。」
「どう言う意味?」
クラウドが良く分からずに聞いてくる。
「その・・・セフィロスから何て言われているかは分からないけど・・・」
と言いかけて、ヴィンセントは考え込むように口をつぐんだ。
応接室の壁は以外と薄いらしく、外を歩いていく女性の噂話しをするようなさざめき声が聞こえてくる。
ヴィンセントはテーブルに飾られている椿をちょっと凝視してから、口を開いた。
「何でもない。何かあったらその時言うから心配しないでくれ。」
ーえっ?
クラウドが訳が分からなくなっている間に、ヴィンセントは尾行している人物について話し始めた。
「多分、二人いると思うんだ。一人はすごく気配が分かりやすくって、もう一人は全然クラウドには分からないかもしれない。危ないのは気配の分からない方だから。」
「俺が知っているのは分かりやすい方?」
もし分かっているのが一人なら、とヴィンセントは頷いた。
「その子は別に大丈夫だから。警戒しなくてもいいよ。」
「?」
「ただ、何かあった時に守って欲しい。っていうのは、あの・・・事件の被害者の娘で、私が引き取っている子だと思う。」
ヴィンセントがちょっと言いにくそうに言った。
「でも、セフィロスは尾行している人間の方が重要だって・・・」
クラウドの言葉に、ヴィンセントはちょっとため息をついて続けた。
「セフィは・・・あいつが何を考えているかはちょっと分からないことが時々あるけど。
でも、とりあえずこの案件に関しては解決しないと、という結論は一致しているから。」
最後の方は自分に言い聞かせるような感じでヴィンセントが話していた。
「ちゃんとセフィと話すから、クラウドは心配しなくていい。」
「何か、そんな風に言われるなんて俺・・・部外者みたいだ。」
「そんなことない。ただクラウドの言葉を聞いて、セフィと話さなきゃ、と思っただけだし。」
ヴィンセントが焦ってフォローする。
「それに俺も同席していい?」
クラウドの言葉は事情を知らないものなら当然出てくるセリフだったが、ヴィンセント的にはかなりびっくりした。
「えっと・・・」
「何かまずい所ある?」
ー小さい時のセフィみたいな言い方だ・・・
べ・・・別に、まずいことはそんなに無い、と考えつつ答えるとじゃあ決定、とクラウドが答えて、いつ会うの?と話が続いた。

ルクレツィアはヴィンセントが屋敷に帰る前にうまい具合に家にいるようにいつも帰っていた。
「ただいま。」
19時頃ヴィンセントが帰ってくると、ルクレツィアがぱたぱた出迎える。
「おかえりなさい。」
ヴィンセントにまとわりつくと、
「弟の面倒はちゃんと見ていた?」
とヴィンセントが聞いて、こくりと頷く。
ヴィンセントはにっこり笑うと、食事にするよ、と声をかけた。
昨日作ったラタトィユにパスタを絡めて一品と、もやしのサラダと豚しゃぶしゃぶを手早く作り、ミルクも温めはじめる。
ルクレツィアは弟を眺めて話し掛けながら食事を待っていた。
「ルクレツィア、明日から学校にいけるよう手続きをしたから。」
ヴィンセントが話し掛ける。
ルクレツィアはびくっとして、弟から目を離した。
「えっ、何で?」
「何でって、ルクレツィアの年の子は学校に行くのが義務だよ。」
温めた料理の皿を食卓に運びながら、君も手伝うんだよ、と彼女に声をかける。
「私・・・学校行けるか自信ない。」
取り皿をテーブルにおいて、ルクレツィアが返事をした。
「ちょっとずつ普段の生活に慣れないと、もっと大変になるよ。」
ヴィンセントがルクレツィに視線を合わせてしゃがんで話し掛ける。
彼女のちょっと困ったような泣きそうな顔は、前にもそっくりな表情を見たことがあってどきっとした。
「ルクレツィア・・・」
彼女の頬に手をあてて、思わず唇にキスしそうになり寸前で理性が行動をセーブする。
ーあ・・・危なかった・・・
あれは私の愛していたルクレツィアじゃ無い、10歳の子供だ、と自分にたっぷり言い聞かせてから平静を装って彼女の額に軽くキスをした。
ーでもすごい似てるけど・・・
立ち上がって学校の話はゆっくりしよう、と取りあえず食事にすることにした。

 

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