ザックスを通して知っているとはいえ、クラウドはセフィロスから例の事件が手伝えるなら、と依頼を受けた時はかなりびっくりした。
ーだって、俺はまだソルジャー3rdで下っ端だし。
同じ3rdの同僚からやっかみ、羨ましい視線も感じながら、ミッドガルの市街へくり出していた。
ーまあ、まじめに訓練していてもいつもの繰り返しだしな。
セフィロスから受けた任務は、
1.女性を殺害した犯人と思われる人間を見つけたらすみやかに捕獲できる様行動、報告すること
2.それに関連する証拠物件を見つけたらすぐにセフィロスかヴィンセントに報告すること
とあった。
ーあんのかな。そんな証拠。
別にセフィロスを疑っている訳ではないが、あまりに漠然としていてやり方が指示されなかったので疑ってしまうのだ。
(いや、多分そんな期待はされてないんじゃないかと・・・by 筆者(汗!))
しばらくすると、ヴィンセントと一緒に行動することになったので任務内容に進展はないにしても、ちょっと安心したクラウドだった。
その後、何回か不審人物が付いてきたりと軽微な変化があり、その報告をすると不審人物の方へ関心が移っていった。
観察していると、尾行はクラウドよりも、ヴィンセントを追っているらしい。
でも、いまいちヴィンセント、被害者、被疑者(現時点では不明)の関係は良く分からなかった。
っていうか、
ーヴィンセントは関係があるのか?
クラウドがセフィロスに連絡して聞くと、
「お前ちょっとは使えるようになったな。」
と答えが返ってきて、尾行しているやつに気付かれないようにな、と指示された。
「ヴィンセントは付けられてるの気付いてるんだよな。」
クラウドが聞くとヴィンセントは曖昧な顔をして、そろそろ会社に戻ろうと言った。
ルクレツィアはヴィンセントが屋敷に帰る前にうまい具合に家にいるようにいつも帰っていた。
「ただいま。」
19時頃ヴィンセントが帰ってくると、ルクレツィアがぱたぱた出迎える。
「おかえりなさい。」
ヴィンセントにまとわりつくと、
「弟の面倒はちゃんと見ていた?」
とヴィンセントが聞いて、こくりと頷く。
ヴィンセントはにっこり笑うと、食事にするよ、と声をかけた。
昨日作ったラタトィユにパスタを絡めて一品と、もやしのサラダと豚しゃぶしゃぶを手早く作り、ミルクも温めはじめる。
ルクレツィアは弟を眺めて話し掛けながら食事を待っていた。
「ルクレツィア、明日から学校にいけるよう手続きをしたから。」
ヴィンセントが話し掛ける。
ルクレツィアはびくっとして、弟から目を離した。
「えっ、何で?」
「何でって、ルクレツィアの年の子は学校に行くのが義務だよ。」
温めた料理の皿を食卓に運びながら、君も手伝うんだよ、と彼女に声をかける。
「私・・・学校行けるか自信ない。」
取り皿をテーブルにおいて、ルクレツィアが返事をした。
「ちょっとずつ普段の生活に慣れないと、もっと大変になるよ。」
ヴィンセントがルクレツィに視線を合わせてしゃがんで話し掛ける。
彼女のちょっと困ったような泣きそうな顔は、前にもそっくりな表情を見たことがあってどきっとした。
「ルクレツィア・・・」
彼女の頬に手をあてて、思わず唇にキスしそうになり寸前で理性が行動をセーブする。
ーあ・・・危なかった・・・
あれは私の愛していたルクレツィアじゃ無い、10歳の子供だ、と自分にたっぷり言い聞かせてから平静を装って彼女の額に軽くキスをした。
ーでもすごい似てるけど・・・
立ち上がって学校の話はゆっくりしよう、と取りあえず食事にすることにした。