「つながりそうですか?」
セフィロスに見捨てられた(笑)リ−ブさんが、ティファとクラウドにPCの接続を頼んでいる。
「繋がるには繋がったんだけどね・・・。」
クラウドが自室でかちゃかちゃPCの設定をいじっていた。
「あっ、そこクラウドのIDじゃない方がいいんじゃない?」
会社のシステムに入ろうとするのに、ティファが口をはさんだ。
三人はベッドサイドにある電話のケーブルを抜き、椅子とテーブルのセットをその近くに移動して集っていた。
リーブにIDを聞いて入力すると、
「あっ、PC番号とIDの登録者番号が違うってエラーになっちゃったよ。」
「大変ですねぇ。」
人事のようにリーブがのんびり呟いた。
「そんなこと言って、リ−ブさん総裁から首って言われたら大変でしょ!」
のんびり屋なんだから!、とティファが心配して組織のシステム部門に連絡をし始めた。
「あっ、俺のIDだと入れるけど・・・リ−ブさんのメールは見れないや。」
三人で色々試しながら話していると、ヴィンセントが地元警察から入手した資料とPCを持って入ってきた。
「なんとかなりそうなのか?」
リーブに自分のPCを渡して、ベッドに腰掛けてから一所懸命操作しているクラウドに話しかけた。
「あのね、システム部門の方で許認可のメールを携帯に転送設定してくれるって。」
電話を切ったティファがリーブに言った。
「おお!助かりました!」
リーブの返事を聞いて、取りあえず手をとめるクラウド。
10分ぐらいしてリーブの携帯に続々とメールが入ってきた。
ヴィンセントは取りあえず資料を整理して、ティファとクラウドにそれぞれ渡して手分けして読み始めた。
リーブは携帯に向かって一心に親指でキーを打ち続けていた。
2時間程経ち、セフィロスが屋敷の主人との話が一段落ついたのでみんなの所に戻ると、4人がリーブの携帯を囲んで話し合っている。
ー何やってんだ?
セフィロスがヴィンセントの頭越しにひょいっと覗き込んだ。
「あっ!セフィロスいい所に。私の携帯が動かなくなっちゃったんですよ。」
ー俺は何でも屋か・・・。
泣きそうななリーブを無視したい気持ちでいっぱいだったが、ヴィンセントが見ているので取りあえず携帯を受け取った。
「直りそうか?」
ヴィンセントが覗き込んできて、彼の手元の書類がちらっと見えた。
「警察の資料手にはいったんだな。」
ちょっと見せて、とリーブの携帯を適当にいじりながら彼の手元に手を伸ばす。
「セフィロスひどいです。私の携帯をちゃんと直してくれる気はないんですか?」
彼の適当な態度にリーブが思わず口をはさんだ。
セフィロスはじろっとリーブを見ると、ぱちん、と彼の携帯を閉じて
「っていうか、お前もう帰れ。」
と言って携帯をぽいっと放り投げて渡した。
見捨てられたような言葉にショックを受けたリ−ブが、ヴィンセントに泣きつくと、
「だーかーら、ちゃんと理由はあるんだよ!」
とリーブを彼から引き剥がして、携帯の保存容量オーバーと転送してくる容量があんまり多くてバグってるから、会社に帰ってPCで仕事した方がいいんだよ、と親切に説明した。
「なら、私システム部門に連絡して転送止めてもらうね。」
ティファがすぐに携帯をかける。
「クラウド、今からミッドガルに帰れるか聞いてみろ。」
セフィロスの指示にクラウドが屋敷の人を探しに部屋を出た。
「捜査の途中ですみませんがヴィンセント、リーブ説をよろしくお願いしますね。」
すっかり気を取り直して力強くヴィンセントの目を見て言うリーブに、
「えっ?あっ・・・まあ・・・。」
と曖昧に答えるヴィンセント。
「っていうか、さっさと帰り支度しなくていいのか?」
セフィロスが邪魔そうにリーブを見る。
おお!そうですね、と言ってリーブが自室に戻った。
その後を追うようにティファが、
「リーブさーん!転送止まったってよー!」
と彼を追いかけて出て行く。
さっき迄5人でがやがやしていた部屋が、あっという間に二人っきりになった。
「で、話できたのか?」
ヴィンセントがセフィロスに聞いた。
「大分詳しく、かなりみっちりな。」
にやっと笑って、ヴィンセントの隣に座る。
「じゃあ、こっちの資料と突き合わせてみるか。」
とヴィンセントが分けた警察の資料を手元に戻して、座っているベッドに分かりやすく広げ始めた。
セフィロスがレコーダーとメモ用紙を出して、さっき屋敷の主人とした話の説明を始める。
ヴィンセントは彼の声を聞きながら、それに合わせてさらに資料を整理していく。
「ヴィン、ここなんだけど。」
説明の途中で自分の疑問点をピックアップしたメモを片手に、彼の側に少し寄った。
その横顔を見て、はっとしたようにヴィンセントは身を引く。
「?どうしたんだ。」
「何でもない。」
返答をさけるように、少し目を逸らす。
不思議そうに彼を見る表情に
「ごめん、ルクレツィアもよく同じ事してたんだ。」
と言い訳のように言ってから、セフィロスから離れようとした。
ぐっと腕を掴まれて、引き寄せられる。
「じゃあ、今チャンスなんだ。」
代わりはやだけどさ、と呟きながら抵抗できない彼に唇を重ねた。
「セフィ、・・・書類が・・・。」
ベッドに広げた書類の上に、お構いなく寝かされてヴィンセントが言う。
「ヴィンを物にできるかって瀬戸際で、そんなこと気にすると思う?」
彼の首筋にキスしようとした時、
「でも・・・、セフィと一緒だったら、この事件を解決できるんじゃ・・・。」
と、資料を手に取って彼の唇を止める。
「ルクレツィアだったら無理かもしれないけど。」
「・・・」
ちょっと動きが止まったセフィロスの額にキスして、ヴィンセントが身体を起こした。
「打ち合わせ、また後でな。」
手早く書類を集めて、部屋を出て行く。
ー・・・またかわされた・・・!?
でも、代わりはやだしなぁ・・・、と思ってしまい、少し考え込むセフィロス様でございました。


「何にもできなくて済みませんね。」
何とか終電に間に合うようで、クラウドが運転する車に乗り込んで、見送りにしたヴィンセントに話しかけた。
「気にするな。それよりも、ルクレツィアをよろしく頼む。少し気になるから。」
と言うヴィンセントに
「まあ、こんなに役にたたないとは思わなかったけどな。」
セフィロスがサクッと付け加えた。
「そんなことばっかり言っていると、今度の会議で寝ていた時に起こしてあげませんよ。」
リーブのセリフに、ヴィンセントとティファがセフィロスを見た。
「セフィ、居眠りして給料もらっているのか?」
「リーブさんを敵に回すと怖いわよ。」
二人の突っ込みに、
「リーブ、お前俺の3倍寝てるくせに偉そうなこと言うな。」
とセフィロスが言い返した。
「何言ってるんですか。私は必要な所はちゃんと起きてますよ。」
リーブの言葉に、なんて上司だ・・・、と再びため息をつくヴィンセント。
ーこれ以上やってたら、止まんないよ。
皆の会話の途中でクラウドはさっさと車を発進させて、あっという間に門の外に出て行った。
「ティファは危なくなったら連絡下さい!何とか帰れるようにしますから〜!!マリンちゃんが心配しますからね〜!!」
見えなくなりそうな瞬間に、リーブが大声で叫んでいた。
「リ−ブさんありがと!大丈夫だから。」
見送りが終わってくるっとヴィンセントの方を向いたティファが、
「ちょっとお嬢さんに会ってくるね。」
と言って屋敷に戻って行った。
夏に向かう日ざしは夕刻になっても強い熱が感じられるが、それを和らげるようなそよ風が吹いている。
庭の隅にこれから咲こうとしているひまわりの蕾みが、重い花に負けずにすっくと立っていた。
「お嬢さんの話、ティファに聞いてもらおうか。」
ヴィンセントがセフィロスに話しかけた。
「そうだな・・・。いいかもしれない。」
それよりも、あのミッドガルから来た警官はどこへ行ったんだ?、と聞いてきた。
「そういえば・・・見ないな。警察署かな?」
ー神出鬼没なやつも怪しいんだよな。
と思ったセフィロスが、
「ヴィンは、あいつを信用してるわけ?」
と聞いてきた。
「いや、疑うには材料が足りなすぎると思うけど。」
彼の言葉に、一応チェックしてるんだ、と答える。
夕闇に向かって陰る日ざしの中で、屋敷は少し暗く薄汚れているように見えた。

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