ヴィンセントがティファの携帯を受け取って、窓の側に立ってルクレツィアと話をしている。
セフィロスは家政婦さんの持ってきてくれたサンドイッチをつまんで話しかけた。
「けがしてる女には会えるのか?」
「顔だけなら、今日見てきましたよ。話はまだ無理そうでしたが。」
リーブが言った。
「こめかみにひどい傷があって、可哀想でした。あんな傷を自分でつけるのは無理だと思いますよ。誰かに思いっきり殴られたかしないとあそこまでは。」
そうか・・・とセフィロスが呟いた。
「そう言えば、ここの親子は何しているのか分かったのか?」
話を振られて、クラウドとティファに目を合わせる。
クラウドが口を開こうとした時、ヴィンセントが、ありがとう、とティファに携帯を返した。
「そう言えばヴィンセント、携帯どうしたの?いくらかけても繋がらないから私の方にかけたって言ってたけど。」
えっ、それは・・・と口籠るヴィンセント。
「ティファそんなことを聞いてはいけませんよ。二人であんなことしてたから電話どころではなかったんですから。」
リーブがティファに素早くささやく。
「リーブ聞こえてるぞ。」
ヴィンセントがじろっと睨んだ。
「お前そんな鈍いんじゃ、自分の方は大変なんじゃないか?」
話の腰を折られたセフィロスが、さらりと口をはさむ。
「自分の方ってどう言う意味よ。」
ティファがむっとして言い返してきた。
ーこの状況で・・・俺は・・・話していいのか・・それとも黙って聞いているべきなのか・・・
口を開きかけたクラウドが、ドキドキして様子を見守っている。
「ほら、リーブが変なこと言いだしたから、クラウドがここの親子のことを話せなくて困っているぞ。」
ヴィンセントが彼の様子を見て、助け舟を出した。
「そうでした、話の途中でした。」
あの二人は放っといて始めましょうか、とヴィンセントとクラウドで車座に席を作りはじめるリ−ブさん。
その様子に気付いたセフィロスが
「ほら。お前、クラウド助けなくていいのか?」
とにやにや笑って言った。
「・・・手伝います。」
ーセフィロスってエアリスの言う通り、時々すごいむかつくわ・・・(怒)
先手を取られて、腹は立っても言い返せないティファでした。


ミッドガルにある新羅カンパニーの最上階は天井がガラス張りで直接日光が当たる為、晴天時は眩しすぎるのではないのかというくらいの太陽の光が降り注いでいる。
だが、天井ガラスは建築設計上太陽光が直接部屋の中に入らないように乱反射させ、晴れている日には快適な空間から美しい空を眺めることができた。
眺めのいい場所なので、新羅カンパニーの社員もその眺望を見ながらくつろげるスペースなのだが、その中の仕切られた一角に、ルーファウスがさりげなく座っていつもの風景を眺めていた。
「ここにいたんですか。」
それをやっと見つけたのか、ツォンがパーティションの中に報告に入ってきた。
「お問い合わせのあったヴィンセント・ヴァレンタインが持って行った情報は、特に社内外機密A+++に係わるようなものではなく、タークスが持ち出せる情報の一部だったようです。」
そうか・・・と答えてから、少し考えてツォンに言った。
「その程度の情報でも、持つやつが持てばどんな端緒になるかわからないな。聞いた所によると、宝条に関係することを調べているようだったが。」
「宝条自身というよりは、当事やつの下で働いていた人物を中心に情報を持っていってますが。」
ツォンが手元に持っていた書面を彼に渡した。
座っていい、と身ぶりで示して、ルーファウスはヴィンセントが抜き出していった情報リストのタイトル一覧をじっと見ていた。
「ヴィンセントは何の事件を担当していたんだ?」
「今ミッドガルで話題の連続殺人事件だと思いますが。」
そうだよな、と答が返ってくる。
「それが何で新羅カンパニーに一時籍をおいていた、宝条とその助手の情報が必要になってくるんだ?」
「それはまったく・・・。」
イリーナに聞いてみたか、と聞かれて、分からないとは思いますが念のため、とツォンが連絡をとったがやっぱり何も聞いてなかったようだ。
「この前みたいなことがまたあったら困るからな。」
何をしようとしているのか聞いておいてくれ、とツォンに指示を出して彼を送りだした後、ルーファウスは時間を確認してまた眺めのいい窓に向かって物思いにふけった。


「取りあえず、二人がここから出られるようにしないと。」
クラウドの話が終わって、ヴィンセントが言った。
「できれば、私も二人と一緒に帰りたいです。」
リーブがちょろっと口をはさむ。
「お前は別に今帰ってもいいよ。」
セフィロスがばっさりと言い返した。
「そんなことを言ったら、私が駅員さんから聞いた大切な情報を教えてあげませんよ。」
むっとした様子で答えるリーブに、なんだそれは?、とヴィンセントが反応した。
「駅員さんの話を色々聞いていたらですね、あの女性が襲われた事件が起きてから私達がここに来るまで、身元不明な不審者はこの街に一人も出入りしていないようなんです。
どうも極端に人の出入りがない街らしいですね、ここは。」
「それは、駅を使って来てないってだけじゃ。」
駅員は駅しか見てないだろ、とヴィンセントが、もっともな突っ込みを入れた。
「ここはミッドガルから近いんだ。車で都市から直接乗り入れて誰か来ることだってあるだろ。」
セフィロスも、なんだそんなことか、という感じに言い返す。
「この街の事を良く知っている人なら、抜け道とか知ってるかもしれませんが。
この街に繋がる道路は、必ず駅前のメインロードに出る作りになってるんですよ。
しかも観光も温泉も有名人もいない街にふらっと来る人は、相当住人の目につくらしいですよ。」
クラウドとティファが目を見合わせた。
「そういえば、一緒の部署の子もここに来たことのある子はいなかったかも。」
「あのザックスでさえふらふら来たこともなかったって言ってたし。」
「ヴィンセントなんか、ミッドガル暮しが長いのに、この森のことさえ知りませんでしたよね。」
お前はただの引きこもりだろ、とセフィロスがヴィンセントに言う。
「ってことは、何が言いたいわけ。」
引きこもり・・・と言われて若干むっとする。
「要するに、ここのお嬢さんが誰かに襲われたんだったら、絶対にすぐに身元がばれる人が犯人だってことです。」
お嬢さんが話ができるようになったら、きっと心当たりを言ってくれますよ、と得意そうに言うリ−ブさん。
「でも、お前大事なこと忘れてないか?」
セフィロスがため息をついて言いながら、クラウドをちらりと見た。
「その・・・リ−ブさんには悪いんだけど、お嬢さんがけがした時、部屋に誰もいなかったんだけど・・・。」
クラウドがおずおずと付け加えた。
「すごい狭い部屋だったし、人がいたらすぐ分かったと思うの。」
私もそこにいたんだから、とティファも言い添える。
抜け道があったんですよ!某国の屋敷みたいに、と言い逃れるリ−ブさん。
「部屋調べたけど、そんなものがあるようには見えなかったけどなぁ。」
大体、いない奴を心当たりに言うなんて八つ当たりじゃないか?、と言うセフィロスもリーブ説(笑)には反対のようだ。
「ヴィンセントは、協力してくれますよね。」
孤立無援になりそうな感じだったので、ヘルプを頼むように話を振られた。
「・・・まあ、どちらにしてもその女性の話は聞いた方が・・・。」
「ヴィンセントも味方をしてくれないんですか?」
「いや、味方とかそういう問題じゃ・・・。」
皆さんひどいですねぇ・・・、と言いつつも時間が遅くなってきたので、それぞれ部屋に引き取ってまた明日がんばりましょう、とその日はお開きになったのでした。

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