駅前の閑散としたメインロードを出ると、道はあっという間に森の中に入っていった。
太陽の光がよく通る明るい雑木林を、車は軽快に進んで行く。
「お前何あんなに駅員と話し込んでたんだよ。」
助手席に座っているセフィロスが、後ろのリーブに話しかけた。
「いろいろ・・・情報収集ですよ。」
食えない親父っぽく含ませた言い方でリーブが答えた。
何の返答にもならない彼の言葉に、セフィロスが負けずに言い返す。
「あれだろ・・・・調査部にスカウトしようとしてたとか。お前のとこ人材不足だし。」
「人員不足です。才能には困っていませんよ。ヴィンセントがいるんですし。」
リーブの即答に、ヴィンセントがくすくす笑う。
「だったらもっと稼げよ。総裁が言ってたぞ。調査部は一番人間がいるんだから、もっと稼げるはずだって。」
「私達が稼いだお金をあなた達が、すぐ武器とか買っちゃうんじゃないですか。」
「買っているのは俺の所じゃない。飛行部隊と製造部門だ。お前の仲のいいシドとかが、最新式だかなんだかしらないが、予算をすぐ使い切って俺の所とかに・・・」
二人の会話を聞きながら、ヴィンセントは目の前の道路を見ていた。
時々、シカやキツネが道を急いで横切ろうとして、スピードを緩める。
道路には標識もなく、よく見ていないと全速力で走っているリスなんかは引きそうになる。
「この辺、あんまり人が通らないのか?ミッドガルが近いのに。」
ヴィンセントに話し掛けられて、二人の会話が止まった。
「ヴィンセント知りませんでしたっけ?この森は、コンパスが使えないんですよ。」
初耳、とヴィンセントが答える。
「実行部隊内では有名な話だ。ミッドガルに近い森だからちょっと遊びに行って、帰れなくて救出された奴が何人もいるぞ。」
セフィロスが、話ながらナビを消した。
「それも当てにならないのか?」
ヴィンセントが言う。
「別に、道なりに行けばOKだろ。こんな道路。」
ナビを消すと一緒にかけていた音楽も消えた。
暫く三人とも黙っていると、森の奥から鳥の泣き声や動物の足音、自然の中でしか聞こえないような不思議な空気が感じられてくる。
ヴィンセントの表情がすこし嬉しそうになって、運転を始めると、
「ヴィン、こういうの好きだろ。」
と、セフィロスが話しかけた。
ヴィンセントの視線がちらりと彼を見る。
「時々セフィはすごい私の好みを知っていて、驚くよ。」
「っていうか、好きなやつの好みをリサーチするなんて超初心者級だろう。」
リーブが二人の会話を聞いて苦笑する。
「で、いつ二人の仲を発表する予定なんですか?」
「今す・・・「絶対ないから!」
カーブをまがって、沈黙する三人。
「思うんですけど・・・」
「黙れ。」
セフィロスが、リーブの言葉を遮ったとたんに、目の前に門が現れヴィンセントが目に着いたインターフォンを押そうと車を降りた。


「よかった〜。どうしようかと思っていたの。」
三人が屋敷へ着いて通された応接へ入るなり、ティファが安心したように口を開いた。
「クラウドは頼りにならなったのか?」
意地悪くセフィロスが言う。
「・・・だって、俺が何か言う前にティファがどんどん進めちゃうんじゃないか・・・。」
「えーーー!私のせい!?」
いや、ごめんそういう訳じゃ・・・と、どもるクラウドとティファの様子を面白そうに見るセフィロス。
「いや、二人ともよくやってくれました。思った以上に情報がつかめて嬉しいです。」
リーブの言葉に嬉しそうな顔をして、近くの椅子に腰掛けるクラウドとティファだった。
「で、殺人未遂事件の容疑者だって聞いたんだけど。」
ヴィンセントが落ち着いて来たところで本題に入る。
「そんなすごい疑いがかけられている訳じゃないんだ。」
クラウドがやっと、まともな話ができると思って口を開いた。
「ただ、ちょっと特殊な事情があって、あの事件が起こった時にこの屋敷に居た人間は皆容疑者になっている訳で・・・」
そのまま事件の話を続けようとしたクラウドに
「ちなみに本当にやってないんだろうな。」
セフィロスが釘をさした。
「なんてこと言うのよ。」
ティファが怒ったように彼を睨み付ける。
「いや、大事なことだ。はっきり聞かないと。」
ヴィンセントがフォローして、リーブも頷いた。
「もちろん二人とも無関係だよ。大体この家の人は初対面なのに、屋敷に来た日に事件が起こったんだから・・・」
と、クラウドが話し始めた。
挨拶をした後に、親切な館の主人がどんな話を聞きたいのかな?と言って来た。
リーブと一緒に考えた質問をてきぱきするティファに、その答を書き取るクラウド。
一通り質問が終わっても、まだ時間は30分も経っていなくてこれからの時間つぶしに困るくらいの沈黙が流れた。
玄関に出て来てくれた女性が、お茶を出しに来る。
「すてきな髪飾りですね。」
彼女の右のこめかみにはおおぶりで、きれいなクリスタルがちりばめられている髪飾りがキラキラ光っていた。
「ありがとう。気に入っているけど、こんな所だと見てくれる人もそんないないので、お客さまが来たからつけてみたの。」
はにかみながら微笑む様子は、深窓の令嬢っぽい顔色は青白いが高貴な表情で、ティファは思わずありがとうございます、と言いながら顔を赤らめてしまった。
ちらりとクラウドを見ると、彼女に見とれているようだ。
ー・・・クラウド・・・。
思いっきり足を踏み付けてやろう思った瞬間、
「お二人とも、どうされますかな?今の時間ならまた改めて来て頂いてもいいですし、部屋はいっぱいありますから泊まって頂く予定にしてもらって、研究所を見て頂いてもいいですよ。」
「もしよかったら、研究室も見せていただけると嬉しいんですが。」
やっと慣れて来たのか、クラウドのやっと出て来た気のきいた依頼に、屋敷の主人は研究所へ二人を案内してくれた。
「思ったんですけど、きっともう二人が遺伝子の分野に素人だってばれてるんじゃないですか?」
リーブが口を挟んだ。
「そっ!それは俺もそんな気はすごいしたけど・・・なら何でこんな状況で俺達を犯人だって言わないんだ?」
クラウドが焦って言い返す。
「それもそうなんだが・・・ここの屋敷に住んでいるのは今話に出てきた二人だけなのか?」
ヴィンセントも質問する。
「今屋敷にいるのは、研究者の親子と俺達と、あと食事と掃除をする家政婦の人、門番をしている守衛の人、そのくらいかな。」
「事件の日にいない人で、屋敷によく来る人ならこの森に良く猟にくる人がいて、あとは・・・そうね週に一回食料品を売りに来るおばちゃんがいるかしら。」
「その様子だと、全部この近辺の人だな。」
ヴィンセントが言う。
「そうね・・・あっ!あと、この屋敷の娘さんは遺伝子研究をしていて、栗色の髪に黄色いリボンをしている美人さんよ。」
「だから、何なんだよ。」
ヴィンセントが言う前に、セフィロスが突っ込んだ。
「貴重な情報だと思ったんだけど。今は彼女に会えないから。」
にこにこしてセフィロスに言い返すティファに、ドキドキしながらヴィンセントの様子を窺うリーブとクラウド。
「えっと・・・事件の事をききたいんだけど。」
ヴィンセントが仕切り直した。
「それがさ、すっごい小説みたいな密室殺人未遂事件なんだよ!」
クラウドはかなり溜めてから、言ってみたのだがリーブとセフィロスの反応は冷ややかだった。
ティファがきまり悪そうに、ちらりとクラウドを見る。
「で?」
一応セフィロスが話を促した。
ー皆驚くなよ・・・
反応の悪い三人を前に、クラウドが事件の説明を始めた。

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