警察の訪問から3日も経たずに、リーブ、ヴィンセント、セフィロスの三人は郊外に向かう鉄道に一緒に乗り込んでいた。
「何でお前ついてくるんだ?いつまでかかるかわからない調査なのに。」
セフィロスが、窓際の席から正面にいるリーブをうさん臭そうに見ていた。
「私のせいで事件がこんがらかったって言うから、来たんですよ。」
ニコニコしながらリーブが答える。
「っていうか、セフィがリーブにずけずけ言うから引っ込みがつかなくなったんじゃないか?」
興味無さそうにセフィロスの隣に座っていたヴィンセントが、回答する。
「調査部長がこんなとこ居ていいのか?」
「それを言うなら、あなたもですよ。」
リーブが言い返す。
「だって、ヴィンが主担当だろ。リーブは来なくてもいいだろ。っていうか、自分の部の事が心配だったらこんなとこ来るな。」
いかにも邪魔そうにセフィロスがリーブに言う。
「それを言うなら、セフィだって時々うっとうしがられてるぞ。ザックスと秘書さんが時々愚痴を言いに来るらしいから。」
ヴィンセントが口を挟む。
「どこにだよ。」
親指でリーブの方を差した。
そういうぐちは本人に直接言えよ・・・とセフィロスが窓の外の景色に逃げる。
外はすっかりミッドガルのビルは消えていて、緑と丘の美しい風景と住宅街が入れ代わり立ち代わり目に写っていた。
「愚痴を言っても聞かないってもっぱらの噂でした。」
リーブがさらにニコニコして言い返す。
「そんなこと言われると、俺がすごい我が侭言ってるみたいじゃないか。」
ちらりと視線を戻して、リーブを睨むセフィロス。
「若い割には頑張ってるって、秘書さんが言ってましたよ。」
慰めるように言うリーブの言葉は全然セフィロスに届いていないようで、彼は不機嫌そうに窓の外の景色を眺めていた。
「向こうでは、車出すのか?」
ヴィンセントが話題を変えて聞いてくる。
「はい。その方が便利なので。ヴィンセント、運転します?」
リーブが楽しそうに聞いてきた。
「お前そうやってヴィンの仕事増やすんじゃないぞ。」
横で聞いていたセフィロスが、口を挟んだ。
「何言ってるんですか。部下に仕事を与えるのが上司の仕事です。」
まあ、そうだな・・・とヴィンセントが言った時に、ごとん、と鉄道が止まった。
停車駅は雑草がところどころに生えているようなひなびた雰囲気のホームで、乗る人も降りる人もまばらだった。
「こんな辺鄙な場所にルクレツィアの母親は何で行こうと思ったのかな。」
ヴィンセントが呟く。
「それは、もちろんアルツハイマーの治療の手がかりがあると思ったからだろ。俺の推理が正しければな。」
セフィロスが即答する。
電車はすぐに発車して、窓の外の景色はまた緑の美しい丘と木々が見えてきていた。
「子供を連れて?」
ヴィンセントが言い返す。
「そうですね。普通は預けて行きますよね。」
「預けられる人間がいなかったんじゃないか?」
「自分の姉妹がいたじゃないか。」
ルクレツィアを引き取ろうとして、うまく噛み合わない夫婦を指摘する。
「でも、あのガキが懐いていない所をみると、多分そんなに仲が言い訳じゃないし、会っている時間もそんなにないぞ。」
幼児の弟はともかく・・・と軽くセフィロスが分析した。
「あの夫妻もよくわかりませんね。仲がよかったように見えないのに、ルクレツィアちゃんは熱心に引き取ろうとする。彼女には何かあるんでしょうか?」
普通の女の子だ、とヴィンセントが即答した。
「調べたんですか?」
「何を?」
あっさり言い返された。
「リーブうるさい。」
セフィロスが、きっぱり黙らせてコンパートメントはちょっとの間静かになった。
列車は静かにどんどん郊外を進んで行く。
ヴィンセントが窓の外を見ようとちょっと席を立つと、
「席変わるか?」
とセフィロスが聞いて来る。
「いや・・・別にいい。」
窓を開けて、列車の外から入ってくる風を楽しんだ。
「草の匂いがしますね。」
リーブが感想をもらす。
「そうだな。自然のにおいがする。」
もうちょっと窓を開けて、その隙間から少し頭を外に出した。
風が強く吹いていて、ヴィンセントの髪はすぐにぐちゃぐやに乱れて、それでも楽しそうに外の景色をみている。
「ヴィン、危ない。」
トンネルに差し掛かる直前で、セフィロスが彼の腕を引っぱった。
「ありがとう。」
ヴィンセントが頭を引っ込めた直後に、列車はトンネルに入って外は真っ暗になる。
掴んだ腕をそのまま自分の方へセフィロスは引き寄せた。
唇を近付けようとして、ヴィンセントに止められる。
「だからリーブを呼んだんだ。」
思わずその切り返しに動きが止まって、ヴィンセントはにこりと笑って余裕でセフィロスの隣の席に座った。
「セフィと二人だと、何となく身の危険を感じるからな。」
ははは・・・と笑うリーブを苦々し気に見るセフィロス様でした。